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ロッテ鳥越コーチが古巣で参加。ピンクリボン運動で語った「願い」

田尻耕太郎スポーツライター
試合前にホークスの選手、鳥越コーチらがピンクリボン運動を呼び掛けた(筆者撮影)

4万観衆の77%が女性ファン

 大人気イベントとして定着したタカガールデー。2017年には当時定員いっぱいの38,585人のうち30,357人が女性ファン(タカガール)で占められたこともあり、昨シーズンからは2試合開催、さらに今シーズンは4月22日の東京ドーム開催も含めて3試合へと増加した。

 昨季は2試合ともタカガールの来場は2万人台と分散した形になったが、今シーズンの福岡開催初戦は今季満員の40,178人のうちタカガールが30,950人を占めたと球団が発表した。12日のロッテ戦もタカガールデーとして開催され、この日も満員観衆のうち30,312人が女性ファンだった。今季のタカガールデーは3試合で計85,397人のタカガールが来場。もちろん最多記録を更新した。

 6年目を迎えた「タカガールデー」。

 2006年、福岡ダイエーから福岡ソフトバンクへと移り変わった2シーズン目から、毎年「母の日」に近い一日を選び、「女子高生デー」としてスタート。2013年まではその名称で実施していた。

 2014年から「タカガールデー」に改称し、ターゲットがより広くなった。

 それと同時に、女性来場者には当日限定のピンクユニフォームが無料配布され、さらに女性ファン向けのグッズや飲食、イベントも満載の一日となった。そのため「タカガールデー」のチケットは毎年プラチナ。スタンドを見渡せば、ほぼピンクだ。

2014年 28,450人<観衆38,561人・満員>

2015年 28,074人<観衆38,500人・満員>

2016年 29,507人<観衆38,500人・満員>

2017年 30,357人<観衆38,585人・満員>

2018年 27,231人<観衆38,530人・満員>

     28,677人<観衆38,530人・満員>

2019年 24,135人<観衆43,063人・東京ドーム初開催>

     30,950人<観衆40,178人・満員>

     30,312人<観衆40,178人・満員>

 また、グラウンドに目を移せば、一塁から三塁までの各ベースをはじめ、ネクストバッターズサークルやマウンドのチームマーク、スコアボードもタカガールデー仕様でピンク色に変更される。

 これは単にファンサービスの一環ではなく、大切なメッセージを含んでいる。

 ベースやネクストバッターズサークルに描かれている模様は「ピンクリボン運動」のシンボルマークだ。乳がんの撲滅・検診の早期受診を啓発する運動だ。

 この取り組みは女子高生デー時代から行われており、今季で11回目となった。今年は初めて選手たちも「ピンクリボンユニフォーム」を着用して試合に臨み、ヤフオクドーム外には乳がん検診車も来て無料でマンモグラフィによる乳がん検診を受診できるような仕組みも作り上げた。

 そして、選手やコーチがピンクリボン運動を広く知ってもらうためにパンフレットなどを女性ファンに手渡しする時間も設けている。

中村晃の寄付活動に鳥越コーチも賛同して

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 今年も両日、ホークスのコーチや選手が試合前練習後にファンのもとを訪れたのだが、そこには対戦相手のロッテからも1人のコーチが連日参加した。

 鳥越裕介ヘッドコーチだ。

 鳥越コーチはホークスで指導者をしていた2008年に夫人を乳がんで亡くしている。「自分と同じ思い、苦しさを味わってほしくない」との願いから、同運動を球団に紹介したことがホークスとピンクリボン運動が繋がったきっかけだった。

 鳥越コーチがマリーンズに移った後も、中村晃外野手が先頭に立つ役割を引き継いで活動が行われている。中村晃はファーム調整中だが、11日に「ホークス1勝につき2万円(ポストシーズンを含む)を寄付する」という成績連動型の貢献活動を発表した。

 これを聞いた鳥越コーチは、ホークス対マリーンズについて、マリーンズが勝った場合は自身が1勝につき2万円を寄付すると約束をした。

 そして、鳥越コーチはマイクを握り、たくさんのファンを前にメッセージを発信した。

「今日12日は母の日です。世のお母さんは大体、自分のことよりも家族のことや周りのことを考えていると思います。でも、自分の身体のことも大事にしてください。まさか自分がではなく、まず検診に行ってください。今日この場に来られた方は、周りの方にもぜひ広めて頂き、たくさんの人に知って頂きたいと思います」

NPBが主導となり球界として取り組めないか

 ピンクリボン運動は徐々に広がりを見せており、同日は広島カープも実施している。

 ただ、日本球界の場合は、球団単体で活動を行っているのが現状だ。

野球とピンクリボン運動の縁は、メジャーリーグでも同様だ。これまでのケースを確認すると、母の日の「HAPPY MOTHER'S DAY」では縫い目の糸がピンク色のボールが使用された。そこにはピンクリボン運動のシンボルマークも刻印されていた。

 選手たちもリストバンドやバット、スパイクの一部にピンクを使用するなどして、母への感謝を示すと同時にピンクリボン運動の啓発を積極的に行っている。

 メジャーは、このような取り組みをリーグとして行っているのだ。

 プロスポーツ界による社会貢献活動。なかでもプロ野球は、一度に多くの人々にメッセージを送ることのできる貴重な機会である。各球団任せではなく、NPBという組織としてもっとリーダーシップをとるべきではなかろうか。

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。「Number web」でのコラム連載のほかデイリースポーツ新聞社特約記者も務める。2024年、46歳でホークス取材歴23年に。 また、毎年1月には数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。

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