全国各地で温泉が湧き出す日本列島の中でも、北陸地方は名湯が集中するエリアである。特に石川県には加賀温泉郷をはじめ、全国的にもよく知られた名湯が揃う。震災で大きな被害を受けて現在復興の途上にある和倉温泉もそのひとつだ。

そこで今回は、一生に一度は訪ねたい「石川県の温泉地」を５カ所紹介したい。

片山津温泉（加賀市）

加賀温泉郷のひとつ。霊峰白山を望む柴山潟の湖畔にあり、湖面は日に７度色を変えるという。温泉は湖畔に面した旅館のほか、モダンな建物で存在感を示す「総湯」で入浴できる。湯船と柴山潟がつながっているように見える「潟の湯」の湯船は、いわゆる絶景温泉。塩味と苦味の強い塩化物泉が特徴で、体の芯まで温まる。なお、初めて人工雪をつくることに成功した中谷宇吉郎氏の「雪の科学館」は、冬にこそ訪れたいスポット。

山代温泉（加賀市）

「古総湯」と呼ばれる共同浴場を中心に旅館が立ち並ぶ温泉地。北陸地方ではその街並みを「湯の曲輪」といい、独特の風情を醸し出している。明治時代の建築を再現した木造二階建ての「古総湯」の浴室は、当時の浴室と同様にカランやシャワーを設置せず、ひたすら湯船に源泉がかけ流しされる。明治時代には多くの文化人に愛され、芸術家の北大路魯山人のゆかりの名旅館などが人気を集めている。

粟津温泉（小松市）

開湯から1300年、北陸最古とされる温泉地。その象徴である旅館「法師」は、歴史を重ねてきた老舗宿で、趣きある庭園が自慢。宿でゆっくり食事を味わうのもよいが、温泉街には飲食店もあるので外で気軽に北陸の味に舌鼓を打つのもおすすめ。

金沢市内温泉（金沢市）

金沢の市街地には温泉を利用した「温泉銭湯」が点在する。そのひとつ「兼六温泉」は日本三名園のひとつである兼六園の近くの住宅街に湧くレトロな温泉銭湯だ。紅茶のような色をした源泉はこのエリアでよく見られるモール泉の一種で、内湯や露天風呂にかけ流しにされている。市内の観光名所をめぐる合間に銭湯で汗を流すのも一興だ。

山中温泉（加賀市）

加賀温泉郷の代表格で、松尾芭蕉が「おくの細道」の旅の途中、その湯を気に入って滞在した歴史ある温泉地。シンボルである「菊の湯」は、日本最大スケールの共同浴場で、男女別に建物が分かれている。山々に囲まれた温泉地は風光明媚なスポットが多く、とりわけ渓谷美が楽しめる「鶴仙渓」は絶景スポット。渓谷沿いは遊歩道も整備されているので、湯巡りの合間に散策したい。