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アマゾン、EV車両の購入縮小 コスト削減で

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
出所:米Amazon.com

米アマゾン・ドット・コムと新興の電気自動車(EV)メーカー、米リヴィアン・オートモーティブ(Rivian Automotive)が、商用バンの独占売買契約を解除する見通しだ。

米ウォール・ストリート・ジャーナルによると、アマゾンによる発注台数が以前に提案された範囲の下限になったことが理由だという。

23年の発注台数、見込み範囲の下限に

アマゾンとリヴィアンが2019年に締結した契約には、「リヴィアンは自社が生産する商用EVバンのすべてをアマゾンに納入しなければならない」という条項が盛り込まれていた。

アマゾンは最近、リヴィアンに対して2023年の購入台数が約1万台になると告げた。これはアマゾンが以前リヴィアンに伝えた発注見込み範囲の下限にあたる。

これを受けリヴィアンはアマゾンに対し独占条項の削除を求めた。交渉は今も継続中だとウォール・ストリート・ジャーナルは報じている。

リヴィアンは2009年の設立で、米ミシガン州プリマスに本社を置く。2018年11月にロサンゼルスで開催されたモーターショーで自社開発のEVを初披露した後、アマゾンのような大手が相次ぎ同社に出資した。

リヴィアンは現在、ピックアップトラックの「R1T」とSUV(多目的スポーツ車)の「R1S」も製造しており、これらを小売企業に販売している。

一方、アマゾンは、二酸化炭素(CO2)排出を実質的にゼロにする「カーボンニュートラル」を目指す物流事業プロジェクト「シップメント・ゼロ(Shipment Zero)」を進めている。その一環として、リヴィアンに配送用EVを発注した。

リヴィアンは2021年、イリノイ州ノーマルにある元三菱自動車の自動車工場でアマゾン車両の生産を始めた。米CNBCによると、2022年にその最初の納入が始まり、アマゾンはリヴィアン製カスタムEVを使った配送業務を2022年7月に開始した。

この配送バンは、最新のセンサー技術や運転支援機能、360度カメラなどを装備している。AI(人工知能)アシスタント「Alexa」も組み込まれており、経路・気象情報にハンドフリーでアクセスできる。

ロイター通信によれば、アマゾンはリヴィアンの大株主。ウォール・ストリート・ジャーナルは、リヴィアンの取締役会にはアマゾンの幹部が加わっていると報じている。

リヴィアンにとってアマゾンは最大の顧客である。イリノイ州ノーマルで製造するEVの3台に1台はアマゾンに納入している。アマゾンが独占契約の終了に同意した場合、リヴィアンは新たな企業顧客を見つけなければならないと同紙は指摘する。

コスト削減策が背景に

アマゾンの広報担当者は、「2030年までにリヴィアンから計30万台の商用バンを購入することを約束している。リヴィアンは重要なパートナーであり、将来に期待している」と述べた。一方、リヴィアンの広報担当者は「私たちは引き続き緊密に協力し、多くの企業と同様に、変化する経済情勢に対応していく」と述べた。

今回の購入台数の減少は、アマゾンのコスト削減策が背景にあるようだ。アマゾンでは、アンディ・ジャシーCEO(最高経営責任者)の下、コスト削減に向けた事業見直しを進めている。

2022年11月には過去最大規模のレイオフ(一時解雇)に着手し、2023年1月までに計1万8000人の従業員を削減した。2023年3月には9000人を追加削減すると発表したほか、米東部バージニア州アーリントンで建設中の第2本社(HQ2)で第2工期計画の着工を延期した。

  • (本コラム記事は「JBpress Digital Innovation Review」2023年3月15日号に掲載された記事を基にその後の最新情報を加えて再編集したものです)

ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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