Amazon従業員、出社再開に反発 5月から義務化で
米アマゾン・ドット・コムの従業員が出社再開に反発しているようだ。米CNBCの報道によると、従業員らはアンディ・ジャシーCEO(最高経営責任者)に対し、オフィス勤務の義務化ルールを再考し、撤回するよう求めている。
5月から週3日以上の出社
ジャシー氏は先ごろ公式ブログで公開した従業員宛てのメッセージで、「少なくとも週に3日はオフィスで勤務する必要がある」と説明した。これは幹部会議で下した決定であり、2023年5月1日から実施する。詳細は今後最終決定し、従業員に伝えると述べた。
同氏は出社のメリットとして、「協力して一緒に発明することが容易になり、対面で働くことで企業文化が強化される」と説明した。
今回の決定は、アマゾンが新型コロナウイルス感染症対策としてとってきた「柔軟な働き方」の方針とは大きく異なるとCNBCは報じている。
これに先立つ2021年、ジャシー氏は従業員宛てのメッセージで、「今後もほとんどの仕事をリモートで行うチームもある。オフィス勤務と在宅勤務を組み合わせるハイブリッド型を選択するチームもある。
オフィス勤務であることが顧客にとって最善と考えるチームもある」とし、「週に何日あるいは何曜日に出社する必要があるかは、会社としてあえて決めない。勤務体制は管理職であるディレクターがその幹部やチームとともに決める」と述べていた。
それ以来、アマゾンのオフィス職従業員には、完全な在宅勤務を続けてきた人も少なくないという。
「地球上で最高の雇用主」と矛盾
CNBCによると、従業員らはビジネスチャットツールの「Slack(スラック)」上で在宅勤務を支持するチャンネルを立ち上げ、新たな出社方針に関する懸念を共有した。チャンネルは立ち上げ後4日で参加者が約1万4000人に増えたという。
従業員らはジャシーCEOと幹部チーム宛ての嘆願書を作成し、この中で決定を取り下げるよう求めた。加えて、創業者のジェフ・ベゾス氏が掲げていた目標である「地球上で最高の雇用主」や、「多様性」「手頃な住宅価格」「持続可能性」などに関するアマゾンの立場に反していると指摘した。
ジャシー氏は以前のメッセージで、「私たちのような規模の会社では、すべてのチームが最適に機能するための画一的なアプローチはない」と述べていたが、従業員らはこの点も指摘した。
多くの従業員がこの言葉を信用し、出社再開を求められないことを前提としたライフプランを立てたという。ある従業員によると、新型コロナ下に移住した人や、リモート勤務を条件に入社した人は、今後どのような影響が及ぶのか懸念しているという。
アマゾンの従業員数は過去3年間で急増した。同社はこの期間、労働力の分散化を図っており、シアトルやニューヨーク、北カリフォルニアなどの主要な技術拠点以外からも多くの人材を採用した。
アマゾンは現時点で、在宅勤務者に対し転勤を求めるかどうか明らかにしていない。ジャシー氏は新方針について「わずかな例外がある」と述べたが、その詳細は分かっていない。
ワークライフバランスに影響か
嘆願書には、従業員を対象に行ったアンケート調査も記されている。それによると、相当数が完全な在宅勤務を希望しており、その一環として月1回のオフィスでの対面会議があってもかまわないとしている。また、出社は週2回までと考える従業員も相当数いるという。
嘆願書には、「リモートワーク勤務が企業の生産性を高め、経費削減でき、優秀な人材を引き付けられる」とする調査結果も記されている。
このほか、大半の勤務に出社を義務づけることは、ワークライフバランスに影響を及ぼすとも指摘している。とりわけ、子育て中の従業員、親を介護している従業員、マイノリティー、障害のある人などの仕事と生活により大きな負担がかかるという。
また出社を一様に求める会社の方針にも疑問の声が上がっている。例えばグローバル部門に所属する一部の従業員は、海外の担当者とオンライン会議するためだけに出社することになるという。
所属するオフィスに同僚が1人もいないという従業員もおり、その場合、オンライン会議への参加場所が自宅からオフィスに移るという違いしかないという。
- (本コラム記事は「JBpress Digital Innovation Review」2023年2月23日号に掲載された記事を基にその後の最新情報を加えて再編集したものです)