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門戸開いてー外国にルーツを持つ子どもの高校進学支える多言語ガイダンス、各地で開催

田中宝紀NPO法人青少年自立援助センター定住外国人支援事業部責任者
出身国や居住自治体によって、高校進学率は50%~90%の格差が(写真:アフロ)

<外国にルーツを持つ子どもの高校進学、狭き門>

日本に暮らす外国人保護者にとって、我が子の教育は大きな関心事の一つです。特に、高校については多くの保護者と子ども達が進学を希望しており、年々その数は増加傾向にあります。

一方で、出身国とは異なる日本の高校入試制度がよくわからなかったり、住んでいる地域や本人の国籍、滞日年数等によっては入試の際の特別な配慮が受けられないなど、日本語を母語としない子ども達にとって日本での高校進学は未だ狭き門、となっています。

日本国籍を持つ日本語を母語としない子どもは含まれない数値であることに注意
日本国籍を持つ日本語を母語としない子どもは含まれない数値であることに注意

(出典「学校における外国人児童生徒等に対する教育支援に関する有識者会議 第4回 山野上麻衣氏提出資料」

外国にルーツを持つ子どもたちは、外国籍の子どももいれば日本国籍の子どももおり、彼らの日本における高校進学率が実際は何%なのかを知ることはできません。しかし、その厳しい状況を知るための手がかりとなるデータはいくつかあり、例えば国勢調査をベースにした論文では16歳、17歳と言った、高校生学齢の子ども達の「通学率」を国籍別で見ることができます。

日本人の子どもの進学率が100%に近い状況であることと比較すれば、外国籍の子どもが高校に通う事のハードルが高く、国籍(漢字圏である中国籍の子どもの進学率は高く、非漢字圏の子どもの進学率が低い等)による格差があることが分かります。

<地域差の大きい入試上の配慮>

外国人の子どもの高校進学については、独自の制度を設けて入学しやすい工夫を行う自治体が少なくありませんが、特別な配慮を受けられる要件(外国籍であること、滞日○年以内、など)の差に加え、その「配慮」の内容にも地域により大きな格差(試験問題のルビ振りのみから、試験時間延長・辞書の持ち込み可まで)が存在しています。

その結果、外国人の子どもの高校進学率が90%程度にまで伸びている自治体がある一方で、50%前後に留まると見られる自治体もあるなど、外国にルーツを持つ子どもの日本における未来の明暗を分けてしまう状況にすらなっています。

外国籍生徒等への2016年度高校入試特別措置一覧。地域格差が課題
外国籍生徒等への2016年度高校入試特別措置一覧。地域格差が課題

(出典:「中国帰国者支援・交流センター作成『中国・サハリン帰国者教育の相互支援者ネットワーク 同声・同気 支援情報』」)

<多言語進学ガイダンスの取り組み、各地で>

こうした制度上の格差を少しでも小さくしようと、各地で学習支援をはじめとする草の根レベルの取り組みが続けられています。こうした取り組みの一つが、外国にルーツを持つ親子を対象とした多言語による高校進学ガイダンスの開催です。

日本語を母語としない子ども達を支援しているNPO等の団体が複数集まりガイダンス実行委員会を組織し実施している地域と、教育委員会が直接主催する地域があり、北は宮城県から南は熊本県まで、1都18県で開催されています。毎年6月から12月にかけて各都県において1回から複数回開催されています。

各ガイダンスにより内容は異なりますが、主に地域ごとの入試制度の説明や外国にルーツを持つ「先輩」高校生の体験談の発表に加え、母語通訳を配置し個別相談に応じるブースを設置するなど、正確な情報を得づらい日本語を母語としない親子にとって、必要不可欠な機会となっています。

写真は7月10日に東京都武蔵野市で開催されたガイダンスの様子。112名が参加した
写真は7月10日に東京都武蔵野市で開催されたガイダンスの様子。112名が参加した

一方で、ガイダンスの継続的な実行には課題もあります。特にNPO等が開催するケースでは、通訳配置や資料の翻訳、会場費をはじめとする資金調達をどうするか、が大きな課題です。

東京の多言語進学ガイダンス実行員会に参画するNPO職員の方は、「今、子どもが話す母語が多様化し、マイナー言語の通訳を探すことが大変になりつつある。ガイダンス当日に個別相談ブースを開いてくれる都立高校の先生方の熱意に支えられている部分も大きい。行政が開催している地域は資金的にも安定していることもあり、東京都教委からの多方面のサポートが充実すれば・・・」と、行政の一層の参画を求めました。

高校進学を希望する外国ルーツの子どもが増加し、規模が大きくなればなるほど実質の負担が増えていく状況下、こうした子ども達の教育機会を拡げようと、草の根レベルの模索が続いています。

各地域ガイダンス一覧はこちらにまとめられています。

(出典:「中国帰国者支援・交流センター作成『中国・サハリン帰国者教育の相互支援者ネットワーク 同声・同気 支援情報』」)

NPO法人青少年自立援助センター定住外国人支援事業部責任者

1979年東京都生まれ。16才で単身フィリピンのハイスクールに留学。 フィリピンの子ども支援NGOを経て、2010年より現職。「多様性が豊かさとなる未来」を目指して、海外にルーツを持つ子どもたちの専門的日本語教育を支援する『YSCグローバル・スクール』を運営する他、日本語を母語としない若者の自立就労支援に取り組む。 日本語や文化の壁、いじめ、貧困など海外ルーツの子どもや若者が直面する課題を社会化するために、積極的な情報発信を行っている。2021年:文科省中教審初等中等分科会臨時委員/外国人学校の保健衛生環境に係る有識者会議委員。

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