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滋賀レイクスの主力として故障なく奮闘し続けるケルヴィン・マーティン「B1残留には大きな意味がある」

青木崇Basketball Writer
過密日程のB1で全試合出場を継続中のマーティン (C)B.LEAGUE

 開幕から1か月でジェイコブ・ワイリー退団、イヴァン・ブバの長期離脱、2度のヘッドコーチ交代など、今季の滋賀レイクスは厳しい状況に直面した。主力として計算していた選手たちが故障に見舞われ、ベストメンバーでなかなか戦えなかったことも影響し、12月11日のシーホース三河戦から2月4日の三遠ネオフェニックス戦まで18連敗を喫してしまう。

 ダビー・ゴメスが今季3人目の指揮官となり、ブバが故障から復帰して以降の滋賀レイクスは、4月8日と9日に敵地でファイティングイーグルス名古屋(FE名古屋)に連勝するなど、勝ち星を増やしている。「自分たちを信じること」「ハングリーであり続けること」を強調するゴメスコーチの下、滋賀はB1残留に向けていい方向に進んでいるのは、直近の8試合で6勝という結果を見れば明らかだ。

 苦難が続いたチームの中でも、ケルヴィン・マーティンは開幕時から全試合出場を続けるなど、今の滋賀にとって非常に重要な戦力となっている。疲労が蓄積しながらも、故障することなく質の高いプレーをし続けられる理由を問われると、マーティンは献身的に仕事をしてくれるアスレティックトレーナー陣に対し、感謝の言葉を口にした。

「カズホ(近藤一穂アシスタントアスレティックトレーナー)とタロー(阿部慶太郎ヘッドアスレティックトレーナー)が24時間365日体制で気を遣ってくれているし、(練習や試合後には)必ずマッサージを受けに行く。何かあればテキストメッセージを出すし、朝には私の状態を聞きに来てくれる。治療を受けながら、自分なりにしっかり体のケアをすることが重要なんだ」

 NCAAディビジョン1、ビッグサウス所属のチャールストン・サザン大時代のマーティンは、2011年と2012年にカンファレンスのディフェンシブ・プレーヤー・オブ・ジ・イヤーを受賞。196cmの身長ながら、4年間の平均が12.9点、8.4リバウンドという数字を残すなど、フォワードの両ポジションをこなせる身体能力の高さとフィジカルの強さを兼ね備えている選手だ。

 オランダ、イタリア、ドイツでプロのキャリアを積み重ねたマーティンは、ヴィルトゥス・ボローニャに所属した2018-19シーズンにヨーロッパで開催されるクラブチャンピオンシップの一つであるバスケットボール・チャンピオンズリーグを制覇。2014年のワールドカップと2016年のリオ五輪でセルビアを銀メダルに導いたサーシャ・ジェルジェビッチコーチの下でプレーするなど、経験豊富なベテランをゴメスコーチは高く評価する。

「すごく厳しいコーチの下でプレーしてきた経験がある彼は、すごくタフなメンタリティを持った選手。ディフェンス力はリーグ内でもトップレベルにあり、身長が高く、体重が重い選手とマッチアップしても、彼は戦い続けることができるんだ」

オールランドなプレーでチームに貢献し続けるマーティン (C)B.LEAGUE
オールランドなプレーでチームに貢献し続けるマーティン (C)B.LEAGUE

 連敗を18で止めた2月5日の三遠戦で19点、11リバウンドのダブルダブルを達成するなど、マーティンは滋賀の勝ち試合で平均15.8点、7.9リバウンド、2.3アシスト、2.2スティールの数字を記録。4月8日のFE名古屋戦では、前半が無得点ながらも後半だけで14点を奪って勝利に貢献するなど、肝心なところでビッグプレーを決められるのも強みの一つ。マーティンはこの試合を次のように振り返った。

「チームが正しいプレーをしていることを確かめながらプレーしていたこともあって、前半は少しアグレッシブさを欠いてしまった。ハーフタイム中にもっとアグレッシブにならなければいけないと認識し、後半になってそれを発揮できる術を見出すことができた」

 長い連敗地獄、2度の指揮官交代というのは、プロ選手としてのキャリアが10年を超えるベテランのマーティンでも経験したことがない。「間違いなく今までで最も厳しいシーズンだ」と口にする一方で、「B1残留がゴールであり、達成できれば1選手としても、滋賀のバスケットボールにとっても大きな意味がある。ブースターはホームでもアウェイでもすごい愛情を注いでくれる。それが日本のいいところであり、ヨーロッパとの違いだ」と話す。滋賀レイクスを応援するすべての人のために、マーティンは目標を達成するまでタフに戦い続ける。

Basketball Writer

群馬県前橋市出身。月刊バスケットボール、HOOPの編集者を務めた後、98年10月からライターとしてアメリカ・ミシガン州を拠点に12年間、NBA、WNBA、NCAA、FIBAワールドカップといった国際大会など様々なバスケットボール・イベントを取材。2011年から地元に戻り、高校生やトップリーグといった国内、NIKE ALL ASIA CAMPといったアジアでの取材機会を増やすなど、幅広く活動している。

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