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2019年のハリウッド:ブラピ、キアヌ、J-Loらの1年は?

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
今年、ブラッド・ピットは、念願の共同親権を獲得した(写真:REX/アフロ)

 2019年は、おなじみのセレブにとってどんな年だったのだろう?2020年が目の前に迫った今、簡単に振り返ってみよう。

ブラッド・ピット:離婚成立はまだながら親権問題は解決

 3年前、アンジェリーナ・ジョリーから突然の離婚宣言をされて以来、断酒や親権争いで大変な思いをしてきたピットにとって、今年は好転の年になった。長引いた親権争いはついに進展を見せ、ピットは子供たちと再び時間を過ごせるようになっている。この秋韓国の大学に進学した長男マードックス君との関係はまだややこしいようだが、今月、ピットは、自分の誕生日も、クリスマスイブも、下の子たちと過ごすことができたようだ。しかし、財産分与についての揉めごとが解決していないため、離婚はまだ成立していない。

 仕事面は好調。タランティーノの「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」で見せた、リラックスした控えめの演技には絶賛が寄せられており、各種アワードに候補入りしたり、受賞したりしている。興行成績はダメだった「アド・アストラ」も、彼の演技に対する評価は高かった。

彼の2020年は?:プロデューサーとしては「それでも夜は明ける」でオスカーを受賞しているが、俳優としては過去に3度ノミネートされつつ、一度も受賞していないピット。「ワンス〜」でそれが変わるかもしれない。

スカーレット・ヨハンソン:オスカーで健闘確実な作品に2本も出演

 今年の最高ヒット作であるだけでなく、史上最高の世界興収記録を築くこともした「アベンジャーズ/エンドゲーム」に出演。そして後半には、次のオスカーで大健闘が期待されるホロコースト物「ジョジョ・ラビット」(1月17日、日本公開)と、男女の人間ドラマ「マリッジ・ストーリー」(Netflixで配信中)に出演した。10代の頃からトップスターでありながら、オスカーには縁がなかった彼女だが、次のオスカーでは「ジョジョ〜」で助演女優部門、「マリッジ〜」で主演女優部門のダブルノミネーションを果たす可能性が濃厚。キャリア的には最高の年だったと言えるだろう。

「マリッジ・ストーリー」で、ヨハンソンは、夫と離婚し、生まれ育ったL.A.でシングルマザーとして生きることを決める女性を演じる(Netflix)
「マリッジ・ストーリー」で、ヨハンソンは、夫と離婚し、生まれ育ったL.A.でシングルマザーとして生きることを決める女性を演じる(Netflix)

 私生活では、「Saturday Night Live」にレギュラー出演するコリン・ジョストと婚約した。本人が語っているところによれば、そのプロポーズは最高にロマンチックだったようである。

彼女の2020年は?:彼女もジョストもウエディング時期については明かしていないが、おそらく彼女の3度目の結婚は2020年のうちだろうと思われる。また、5月には彼女がエグゼクティブ・プロデューサーも兼任するブラック・ウィドウの単独映画が公開される。

キアヌ・リーヴス:才能の幅広さを再証明

 シリーズ3作目の「ジョン・ウィック:パラベラム」は、1作目の4倍、2作目の2倍弱の大ヒットになった。声の出演をした「トイ・ストーリー4」は全世界で10億ドル以上を売り上げたし、Netflixの「いつかは、マイ・ベイビー」へのカメオ出演も大好評。そんな2019年は、彼の才能の幅広さを再証明した年になったと言っていい。

 また、今年は、「マトリックス」4作目の製作も発表された。3作目が公開されたのは2003年で、なんと16年を経ての決定である。公開は2021年5月21日で、先に発表されていた「ジョン・ウィック」4作目と同じ日。実際には、どちらかのスタジオが日にちをずらしそうな予感がするものの、今の時点で、ファンは、この週末をキアヌ祭りとしてカレンダーに印を入れておくべきだ。

彼の2020年は?:「ジョン・ウィック」4作目と「マトリックス」4作目の撮影で超多忙になること間違いなし。8月にはインディーズのコメディ「Bill & Ted Face the Music」が北米公開予定。また「スポンジ・ボブ」最新映画にも声の出演をする。

ジェニファー・ロペス:女優、歌手、女性として充実の年

 50歳を迎えた今年、J-Loは大ハッピーだった。秋に北米公開された映画「ハスラーズ」(2月7日、日本公開)で見せたハマりっぷり演技は大好評で、キャリア初のオスカーノミネーションも十分ありえそうな気配。この映画は興行面でも北米だけで1億ドルを超えるヒットになっている。さらに、NFL(プロアメリカンフットボールリーグ)からは、来年のスーパーボウルへの出演をオファーされた。女優としても、歌手としても、すばらしい年になったということだ。

実話にもとづく「ハスラーズ」で、ロペスはニューヨークのストリッパーを演じる(STX Films)
実話にもとづく「ハスラーズ」で、ロペスはニューヨークのストリッパーを演じる(STX Films)

 女性としても、素敵な出来事が。3月には、元ヤンキースのスター選手アレックス・ロドリゲスからプロポーズされたのである。彼女にとっては4度目の正直になるかどうかは、これからのお楽しみだ。

彼女の2020年は?:ロドリゲスとのウエディングは、おそらくスーパーボウルとオスカーが終わる2月以降になりそう。プロデューサーも兼任する主演映画「Marry Me」も、2020年中に公開される予定。ロックスターと婚約している女性ポップスターが、彼との結婚に疑問をもち、マジソン・スクエア・ガーデンでのコンサート中、突然、観客のひとりと結婚を決めるというロマンチックコメディだ。

ハーベイ・ワインスタイン:今も刑事、民事裁判に追われる身

「#MeToo」運動のきっかけを作ったこのセクハラ&レイプ常習プロデューサーは、今年、あいかわらず容疑者として惨めな生活を送った。

 集団の民事裁判は、この春、4,400万ドル(約48億円)を支払うことで決着。しかしこの全部が被害者の女性に行くわけではなく、今月、不満を感じた元モデルは、この集団訴訟から抜け、個別に彼を訴訟した。刑事裁判は来年1月6日に始まる予定。ほかに今月は、L.A.の検察が、彼のレイプ事件をあらためて捜査するとも決めている。本人はいまだに「すべての関係は合意の上だった」と主張。

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 現在日本公開中で、1月にアメリカで大ヒットした「THE UPSIDE/最強のふたり」をはじめ、もともとはザ・ワインスタイン・カンパニーが公開するはずだった作品に、彼の名前はもはやクレジットされてない。またこの秋には、「New Yorker」の暴露記事を書いたローナン・ファローによるこの件についてのノンフィクション本「Catch and Kill」が出版され、ベストセラーになった。オスカーを牛耳った男がかかわらないオスカーも今年で2回目となったが、誰も彼のことを恋しがってはいない。ハリウッドにおいて、彼はもう完全な悪者であり、過去の人である。

彼の2020年は?:古いレイプ事件は立証が難しいと言われてきただけに、刑事裁判の行方はとくに注目される。「Catch and Kill」では、本当は知っていた人たちの名前も明らかにされており、「#MeToo」運動が衰えを見せない中、彼らがこれからどうなるのかも見逃されてはいけない部分だ。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「シュプール」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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