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U-20ナイジェリア代表に快勝!世界一に向け、最高のスタートを切ったヤングなでしこ(1)

松原渓スポーツジャーナリスト
地元の人の盛大な応援で、まるでホームのような雰囲気に(C)松原渓

【多彩な形から決めた6ゴール】

パプアニューギニアで11月13日に開幕したFIFA U-20女子ワールドカップの初戦で、ヤングなでしこは、前回大会準優勝のU-20ナイジェリア代表を相手に、6-0の完封勝ちで上々のスタートを切った。

日本のスターティングメンバーは、GK平尾知佳、DFラインは左から北川ひかる、市瀬菜々、乗松瑠華、守屋都弥。MFは左から長谷川唯、杉田妃和、隅田凜、三浦成美。FWは籾木結花と上野真実が縦の関係で柔軟なポジションをとった。

縦へのスピーディーな攻撃を狙うナイジェリアに対し、日本は立ち上がりから厳しくプレッシャーをかけ、攻撃を組み立てる余裕を与えない。

洗練された日本の組織的な守備をかいくぐることができず、ファルコネッツ(”小さなはやぶさ”=U-20ナイジェリア女子代表の愛称)は持ち味のスピードを活かすことができない。ヤングなでしこは徐々にペースを握り始める中で、ボールを奪うと一気にナイジェリアゴールに向かってたたみかけた。

開始28秒、ペナルティエリア内で上野のシュートが枠をとらえた。相手GKが鋭い反応で弾き、ボールはバーに弾かれたが、このシュートは相手にインパクトを与え、ナイジェリアの選手たちは引かざるを得なくなった。

その後、ナイジェリアの選手たちは、日本のシュートに対して身を投げ出してゴールを守り、結果、日本のシュートは度々、相手ゴールをかすめることになった。日本にとってもどかしい30分間はあっという間に過ぎていった。

拮抗した試合が動いたのは、前半34分。

長谷川の左サイドからのクロスに、ファーサイドで籾木がダイビングヘッドで合わせ、待望の先制点をあげた。

動揺したナイジェリアの隙を突くかのように、その3分後には、乗松のパスをFW上野が決めて突き放した。

2点目を失うと、ナイジェリアは集中力に難を来たし始める。一方、日本の攻撃は後半、さらに勢いを増していった。中盤から前の6人がポジションに囚われない自由な動きで前線に飛び出し、両サイドバックも果敢なオーバーラップを見せた。相手が引くとパスで巧みに誘い出し、じわじわと、だが確実に、ナイジェリアの体力を奪っていった。

51分には、籾木がFKを直接決めて3-0。56分にも右サイドから籾木がゴール前に入れたクロスが決まり、4-0と差を広げた。62分には中央で杉田のスルーパスから上野が決め、82分には上野のミドルシュートで6-0。内容も結果も完勝で、最高のスタートを切った。

高倉監督は90分間をこう振り返る。

「ボールも人も良く動いて、いいゲームができたと思います。ただし、攻撃ではシュートもラストパスも、取られ方が悪いと逆襲を悪い形で食らってしまうので、フィニッシュの持っていき方はもう一度整理したいですね。ディフェンスは特に集中してやってくれていました。いいスタートが切れたと思います。」

【試合の趨勢を決めたディフェンス】

多彩な形で決めたゴールは、確かにインパクト十分だったが、指揮官の言葉通り、試合の趨勢を決めたのは守備だ。連動したゾーンディフェンスで高い位置から網を張りめぐらし、ナイジェリアの未知数のスピードとパワーを封じ込めた。

高い最終ラインの裏は常に相手に狙われるリスクと隣り合わせだったが、GK平尾、CBの市瀬と乗松の3人がしっかりと対応。平尾はDF4人の後ろに広がる広大なスペースをしっかりとコントロールし、CBの市瀬は的確な予測で、背後のスペースをカバー。乗松は相手の最終ラインから飛んでくるロングボールに対し、対峙するFWを身体ごと弾き飛ばす場面もあった。

「ナイジェリアはフィジカルが強いチームですが、自分たちもキャンプの中でしっかり強化してきたので、負ける気がしませんでした。」(乗松)

フィジカルの強い相手に対しては、人数をかけて対応したり、予測のスピードを高めることで体格差をカバーするのが日本の戦い方だが、相手に体を当てるタイミングや角度を工夫するなどのテクニックで勝つことができる。乗松の1対1の強さには、工夫が詰まっている。

(2)【勝利を決定付けた2人のストライカー】に続く

スポーツジャーナリスト

女子サッカーの最前線で取材し、国内のWEリーグはもちろん、なでしこジャパンが出場するワールドカップやオリンピック、海外遠征などにも精力的に足を運ぶ。自身も小学校からサッカー選手としてプレーした経験を活かして執筆活動を行い、様々な媒体に寄稿している。お仕事のご依頼やお問い合わせはkeichannnel0825@gmail.comまでお願いします。

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