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【富田林市】12月7日に初マルシェ!宮町のおしゃれ家具、カナタ製作所の4代目が語る百年企業直前の想い

奥河内から情報発信奥河内地域文筆家(河内長野市・富田林市)

寺内町を有する富田林には、歴史のある企業や商店が数多くありますね。1927年創業のカナタ製作所さんもそのひとつで、なんと創業98年。つまり2年後に百年企業を迎える、3代続く老舗家具製造業です。

そんなカナタ製作所さんで、12月7日に「南河内の家具と暮らし」という名前のマルシェを、初めて行うことになりました。当日は2~3割引きとなるカナタの家具の1DAYアウトプットセールをメインに、30分程度の家具工場見学と予約制でクッションカバー作りのワークショップが行われます。

それに加えて、南河内で人気のこだわりの7店舗が出店します。

  • 草庭ナーセリー(草庭植物)
  • WAKO COFFEE(焙煎珈琲)
  • 祐村米酒店(クラフトビール・ワイン)
  • 米粉菓子工房ナボット(米粉菓子)
  • パンとお菓子の畑の工房 pinponpan(パンとお菓子)
  • やきいもや満月(焼き芋)
  • 鈴木裕之(似顔絵)

そして、WAKO COFFEさんが先着50杯のコーヒーを無料提供するという、とてもありがたいサービスを行ってくださいます。また、キッズコーナーもあります。

今回のマルシェの仕掛け人は、営業部マネージャーで4代目社長になることが決まっている金田直也さんです。家具製造業の会社がマルシェをするというのも珍しいですし、そもそもカナタ製作所さんが手がける作品自体がとても気になっていたので、この機会にカナタ製作所さんにお邪魔し、金田さんにお話を伺うことにしました。

場所は宮前です。美具久留御魂神社の参道の南側、富田林寺内町に向かって続いている巡礼街道を少し南側に歩いたところにあります。画像の用水路が暗渠(あんきょ)となっているところ、「ジェントレス宮」と書かれた看板の道に入ります。

看板の方向に曲がった道です。ジェントレス宮さんは、画像の右側にあり、カナタ製作所さんは左側にあります。

地図で示すとこのようになります。大阪外環状線の近くにありますが、カナタ製作所さんに入るには細い路地があるので、車だと少し迷うかもしれません。マルシェ当日は可能であれば公共交通をすすめています。もし、車の場合は近隣のコインパーキングに停めて欲しいとのこと。

カナタ製作所さんの建物が見えてきました。

会社の敷地内に入ります。

金田さんです。今回はマルシェのことに加えて百年企業となるまであとわずかとなっているカナタ製作所さんの歴史についてもお話を伺うことにしました。金田さん自身はカナタ製作所に入って7年目で、その前は東京で内装塗装の会社の現場監督をしていたのとこと。

こちらは2階にあるショールームです。とてもおしゃれな家具が並んでいますね。お話はこちらで伺いました。

金田さんは最初にこちらの古びた台帳のようなものを出してくださいました。これは今から97年前、1927(昭和2)年に金田製作所を創業した初代秀太郎時代のものとのこと。初代秀太郎は、金田さんの曾祖父にあたる人です。

籐家具の製作所として創業した金田製作所ですが、「戦時中は戦闘機の座席をつくっていました」と金田さんがいいます。そのため兵役が免除されたとも。終戦後に再び籐家具の制作に戻ります。

戦後販売していた貴重な藤家具の写真です。金田さんによれば、初代は大阪の難波まで家具を持って行って販売したそうです。当時は坂道がある時には家具を積んだリヤカーを押す仕事をする人が存在していたとも。

代が変わり2代目(金田さんの祖父)の時代になると、新しい展開になります。カナタ製作所の沿革によると、1968(昭和43)年に株式会社カナタ製作所設立とあるので、その頃でしょうか?百貨店に卸す家具製品の製造販売を始めています。

こちらは2代目社長時代の家具のカタログです。当時は「KISEI」というブランド名で製造販売していたとのこと。

当時は中国など海外との取引もあったそうで、戦闘機の座椅子を作っていたノウハウを利用したのか電車やバスの座面などの制作も行っていたそうです。

そして金田さんのお父さんである、3代目の現社長の時代になりました。ここで新しいブランドSWITCHを立ち上げました。沿革によれば1999(平成11)年にSWITCH事業部立ち上げとあります。

新しいブランド立ち上げの背景には、どちらかと言えば守りの印象の強い百貨店依存の状況への危機感がありました。そこで新しいブランドを立ち上げて、攻めに転じたわけです。沿革によれば、新しいブランドを立ち上げた年にギフトショー出展とあります。

カタログも単なる商品紹介から、ストーリー性を持たせたものに変わります。そしてここでもうひとつの大きな決断をしました。それは国産へのこだわりと、自社製造へのこだわりでした。

家具に貼り付ける生地のサンプル
家具に貼り付ける生地のサンプル

「海外製品は安いが、質に問題がある」ということが理由です。SWITCHIはごく一部の部品を除いてほぼ日本製です。さらにアウトソーシングをするとコストが高くなるので、できるだけ自分たちで作ってコストを抑えようと考えました。「自分たちで考えたものを自分たちで売る」という姿勢になったのです。

カナタ製作所さんの選択は正解だったようです。海外の安いもの、既製品を量産している大手家具チェーンが同じ宮町にありますが、同じような商品であれば淘汰されていた可能性があります。しかし、SWITCHブランドはとにかく品質の良いものを自前の職人さんの手で丁寧に作り、既製品なら2・3年しかもたないものを10年以上使える丈夫な家具作りを行った結果、大手とは見事な差別化を図ることに成功しました。

そしてSWITCHブランドで使う生地は意外なものも多くあります。これは岡山産のコットン100%のデニム生地ですが、アパレルでも使うようなものです。

こちらがデニム生地を使った家具です。ジーンズと同じダメージ加工がしてあって、とてもおしゃれです!

またこちらはオリジナルの生地です。金田さんによればいろいろなところから生地を仕入れているそうですが、近くなら高野口の生地メーカーで仕入れているとのこと。高野口で生地メーカーがあるのかなと思いましたが、調べると、江戸時代からの伝統繊維産業として高野口パイル(外部リンク)があります。

ただその一方で、職人の高齢化などで製造を取りやめ、入手不可能になった生地もあるそうで、画像のソファの生地はもう手に入らなくなったと金田さんが残念がっていました。

金田さんによれば、生地以外のもので羽毛は福岡で仕入れますが、それ以外はできるだけ南河内近辺で仕入れるようにしています。例えばアイアンは河南町の作家である南口さんのものを仕入れるそうです。

さて、カナタ製作所さんで以前から気になっていた家具があります。こちらの動物をかたどった椅子です。これは大阪市西区の靭公園の近くにあるセメントプロデュースデザインさん(外部リンク)のデザインによるものです。

動物シリーズのコンセプトは「子どもが動物に乗る夢の実現」で、大阪製ブランド(外部リンク)にも認定されています。キッズ向けなのに色が地味に感じましたが、それは普段の生活で使うためだからのあえてのものです。

キッズ向け動物と言えば「可愛い」というのが定番ですが、SWITCHブランドでは「可愛い」ではありません。「かっこよい」の方が近く、あえて可愛くならないように考えているとのこと。

ショールームに置いてある商品やレイアウトをを見てみると、大人の男性がかっこよく休日を過ごすような雰囲気になっています。カナタ製作所の男性である職人さんの想いが強く入っているようにも感じました。

少し話がそれましたが、動物のデザインをどうするかについて教えてくださいました。金田さんによれば、横側からみて、その動物だとわかるギリギリまでデフォルメして、可愛らしさを抑えたかっこよい動物を設計するとのこと。

実際に座ってみましたが、驚くほどフワフワで驚きました。金田さんによると弾力の違う2種類のウレタンが入っているとのこと。上の部分に柔らかいウレタンを、その下に固めのウレタンを入れて、人が座った時の力をうまく吸収するのだそうです。

金田さんによれば個人が自宅で使用するほか、意外なところで住宅展示場からのニーズも多いとのこと。男性職人が作るかっこよい男の家具の印象があるため、顧客は男性が多いのかと思えば、意外にも男女半々です。金田さんによれば「生地を変えることで可愛くすることもできる」からとのこと。

SWITCHさんは東京・三鷹に直営店「SWITCH MITAKA」があり、9年近く前に知人の紹介で開いたとのこと。それとは別に全国に取扱店があり、通販(オンラインショップ)も行っています。

そして、富田林でもSWITCHの家具をうまく利用しているお店があるそうです。場所は近鉄川西駅近く、川西南交差点(国道309号線と旧道の170号線)のところにあるBICYCLE STEPさんで、椅子や什器一式を納品しているそうです。

ここに最新のカタログがあります。金田さんは営業の担当ではありますが、彼も職人のひとりとして現場で作業しています。

カタログの中
カタログの中

「皆で家具を作るため、積極的な営業活動はカタログに任せています」と金田さんは言います。

さて、ここで私は核心となる質問をしました。「なぜ、会社の敷地でマルシェをするのか?」です。

これは百年企業になる頃には4代目を次ぐ予定となっている金田さんの想いがありました。きっかけはやはりコロナ禍です。しかし、他のコロナ禍とは少し違います。何故ならば、カナタ製作所さんはコロナ禍の時の売上が良かったからです。

そしてコロナがひと段落して、元の生活に戻ると今度は売上が下がったそうです。背景にはコロナ禍の時は自宅に籠る生活が中心だったので、家具にお金をかけようとした人が増えていたこともありました。

また、コロナ前は大きな展示場にも家具を展示していましたが、コロナ禍でいったんリセットします。この時金田さんは、まだまだ地元で知らない人が多いのではと感じるようになり、コロナが落ち着いてからは近場のマルシェで出店することにしたのです。画像の小物入れは気軽に買ってもらおうと1,000円で販売しました。

1,000円の小物入れは売れても、家具は売れるのかといえばそそうは行きません。それ以前に、「そもそも大きな家具をマルシェ会場まで持っていくことはどうなんだ」と金田さんは悩みます。こうして思いついたのが自社でのマルシェだったのです。

4代目として百年企業を引き継ぐにあたり、その前に一度やってみようと金田さんは今回のマルシェを企画しました。そして1階をマルシェスペースにして7つの事業者を呼ぶことになったのです。

画像提供:カナタ製作所
画像提供:カナタ製作所

今回のマルシェでは1階のマルシェ会場からそのまま2階のショールームに足を運んでもらおうという狙いがあります。そして画像のようなアウトレット製品を販売できたらと言います。

また事前予約制でクッションカバー作りのワークショップが行なわれます。画像のように自分の気に入ったファブリック(布地)の端切れを自由にパッチワークして「世界にひとつだけ」のクッションカバーをつくろうというもの。参加費は税込4,400円で、ワークショップ後は、カナタ製作所の縫製職人が仕上げて後日発送してくれます。

金田さんは「工場見学しませんか?」といってくれましたので、カナタ製作所の工場を見学することになりました。工場は1階にあるので下に降ります。ちなみに12月7日のマルシェ当日にも「カナタ製作所の家具工場見学」が行われます。30分程度の所要時間で製造工程を案内してくれるとのこと。

こちらにあるのは生地です。いろんな生地が置いてあり、ここからお客さんのニーズに合わせた生地を選ぶわけです。

こちらは最近導入した機械で、設計に従って生地を切ってくれます。

「あの機械が入るまでは、型紙でやっていましたから」と金田さん。

機械導入でこの手間が本当に早くなったそうで、型紙でやった時には2時間半かかった作業が、機械を入れたら30分でできるようになったとのこと。職人の技術を重視するカナタさ製作所さんですが、必要に応じて機械を導入して作業効率を上げているんですね。

こちらは縫製の部屋です。

ちょうど職人さんが不在でした。生地に応じていろんな種類の糸がありますね。

縫製の機械を見るだけで、職人さんの技術による量産型にはないオーダーメイドで仕上げる良質のモノが出来上るような気がしますね。

これは本革ですと金田さん。幅広い素材がオリジナルの家具になっていくのだと思いました。

こちらでは実際に職人さんが作業をしていました。木枠にウレタンをはめ合わせて、布地を張り込んでいく作業です。

見ると手袋などせず素手で作業を行っています。素手で行うため、指がささくれますが、職人さん曰く「素手でやらないとうまくいかない」とのこと。また、伸びる生地と伸びない生地があるのですが、意外にも伸びない生地の方がやりにくいそうです。

家具に使う木枠です。これに関してはアウトソーシングしていて、堺市美原区の業者さんから運ばれて来るとのこと。金田さんによればいろいろ融通が利く業者さんなのだそうです。

こちらは木材を加工する機械です。

家具に取り付けるために必要に応じて行うもので、表面を綺麗に整えたり、

ふたつの板を見た目ひとつのように繋げたりします。

これは、下側で普通は目にすることのない部分ですが、しっかりとゴムが付けられています。金田さんによると、ゴムがあると力が分散して座り心地も良いといいます。

カナタ製作所では現在、ふたりの縫製職人を入れて、合計で7名の職人さんが働いています。ただ世代交代が進んだようで、もっとも古い方で20年と若い職人さんが多い印象でした。金田さんは「うちの弱点は、納品までのスピードの遅さです」といいます。

原則、受注オーダーで作られるカナタ製作所さん。職人さんが手間暇かけてオーダーメイドの家具を作るので、どうしても時間がかかるとのこと。金田さんによると大体1カ月程度の納期を見てほしいそうです。その代わり、大手の量産品よりは遥かに質が良く、お客さんのニーズに即した家具を納品できるといいます。

1階で行われるマルシェは入り口の前にある広場になっているところで行われます。そのあと建物内にある2階のショールームに移動して素敵な家具の中でゆっくり楽しみましょう。

当日雨模様の時は、敷地の奥にある屋根のついたところで行われるので、雨天でもOKです。

最後に金田さんは、創業百年を前にこのように述べました。「今を守りながら変えるところは変えていきたい」と。

そしてSNSで企業の情報発信も始めました。金田さんはまもなく百年になる伝統の家具職人の匠のの技を紹介しつつ、南河内というローカルな地での仕事を多くの人に見せたいと熱く語りました。12月7日、お時間があればぜひ地元富田林で、プレ百年企業となる職人が手掛ける家具を見に行ってはいかがでしょう。

カナタ製作所(外部リンク)

住所:大阪府富田林市宮町1丁目2-41

TEL:0721-24-3535

イベント日時:12月7日 10:00~16:00 入場無料
アクセス:近鉄喜志駅から徒歩15分
instagram

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奥河内地域文筆家(河内長野市・富田林市)

河内長野市の別名「奥河内」は、周囲を山に囲まれ3種類の日本遺産に登録されるほど、歴史文化的スポットがたくさんある地域です。それに加えて、都心である大阪市中心部に乗り換えなしで行ける複数の大手私鉄(南海・近鉄)と直結していることから、新興住宅団地が多数造成されており、地元にはおしゃれな名店や評判の良い店なども数多くあります。そして隣接する富田林市もまた、歴史文化が色濃く残る地域。また南河内地区の中核都市として、行政系施設が集まっています。これを機会に、奥河内(一部南河内含む)地域に住んでいる人たちのお役に立つ情報を提供していければと考えています。どうぞよろしくお願いします。

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