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「暫定」で再出発のサントリー。昨季の課題は何だったのか。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
昨季の公式戦でのスタンド。(写真:松尾/アフロスポーツ)

 国内トップリーグで一昨季まで2連覇を果たしたサントリーは、2季ぶりの優勝に向け3月に再始動した。暫定的な体制を発表も、現状ではヘッドコーチが置かれていない。

 元日本代表コーチングコーディネーターの沢木敬介前監督は昨季限りで退任。6月からのカップ戦では田原耕太郎コーチングコーディネーターがヘッドコーチに近い役割を担い、2020年1月からのレギュラーシーズンに向けては外国人コーチを招くと見られる。

 

 5月18日は東京・サントリー府中スポーツセンターで、日野との練習試合を33―19で制した。現役引退後はゼネラルマネージャーなどを任されてきたコーチングコーディネーターが、昨季と現状について語った。

 以下、単独取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

――今季最初のゲームをどう見ますか。

「やってきていることが80分間のうちどれくらいできるかなと見ていました。昨季とは違うチャレンジもいっぱいしているからテスト的な部分もあったけど、いまのグループは若く経験がないので、勝つことが自信になると思う。そういう意味ではよかった」

――3月25日に始動。ここまでは何を。

「去年の神戸のゲームから始まっている(12月のトップリーグプレーオフ決勝で神戸製鋼に大敗)。ここで何が課題だったかと言えば、フィジカル。だから、フィジカルを徹底的に鍛えよう、と。ただ、急に大きくなるのではなく、TKさん(※)を呼んでレスリングの要素を入れながらです。週に1回で、計4~5回は来てくれたかな…。自分たちでスイッチを入れて、インテンシティ(強度)を上げないといけない。やられてやり返すようなチームではないので」

※TKさん=総合格闘家の高坂剛氏(高はハシゴ高)。ラグビー日本代表での指導歴もあり、特に2015年まで4年続いたエディー・ジョーンズ前ヘッドコーチ体制下では、タックルする直前に低い姿勢を取る「ダウンスピード」を選手に涵養。ワールドカップイングランド大会での歴史的3勝に繋げた。

――現在の体制は「暫定」とされています。2020年1月からのトップリーグレギュラーシーズンに向け、別な指揮官や軍師役などを招くのでしょうか。

「カップ戦までを一区切りにしています。去年、足りなかったものをカップ戦までにフィックスする。(足りなかったものは)フィジカル、あとは、選手が戦術を本当に納得して疑問を抱かないで1個ずつやっていくという作業です。(昨季は)実際に選手と話してみると、『わかっているだろう』とされたものをわかっていないこともあったので」

――サントリーには体制刷新後に苦しんだ過去もあります。歴史を踏まえて考えることは。

「あまりにババっと変えて、さらに新しいヘッドコーチが来て全然違うことをやり出したら、選手もパニックします。ひとつ考えるのは、新しいスタッフになった時は前任者を否定しがちですが、全然、そんなこと(その必要)はない。いいものがないと、3年間で2回もチャンピオンにはなれないですから。僕らのいいものをより進化させ、足りないものをフィックスするという作業をしています」

 沢木時代に際立った勤勉さと攻撃的な姿勢を堅持させながら、選手同士の対話をより重視させるイメージだろうか。日野戦後は、ファンをグラウンドに招き入れて交流。スタッフによれば、これは選手主導での取り組みらしい。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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