米国版二刀流が継続を断念したことで改めて浮き彫りになった大谷翔平の卓越した才能
日本ハムの大谷翔平選手が2017年シーズンの全日程を終了した。開幕前から怪我との戦いを強いられ、本人も納得できない苦しいシーズンとなってしまった一方で、シーズン途中に来シーズンからのMLB挑戦が大々的に報じられ、常に衆人環視の中に置かれ続けた。
MLB各チームも、担当スカウトばかりかGMや球団社長までもが自ら足を運んで大谷選手を視察する力の入れようで、改めて彼の逸材ぶりが実証されることになった。今更だがこのオフは、日米で大谷投手の去就に注目が注がれることになるだろう。
そんな中、米国で大谷選手の卓越した才能を改めて浮き彫りにする出来事が起こっていた。本欄でも今年5月に紹介していた米国版二刀流選手としてレッズにドラフト1巡目指名されていた高卒ルーキーのハンター・グリーン選手が、自らの意志で投手に専念することを明らかにしたのだ。
グリーン選手はドラフト指名後レッズと正式契約を交わし、7月にチームに合流し、8月からルーキーリーグに出場していた。高校時代は“投手兼遊撃手”だったグリーン選手は自らも二刀流挑戦を表明し、レッズもそれを容認する姿勢を打ち出していた(これも本欄で『MLBにも本格的な“二刀流”選手誕生へ』で詳細を報じている)。
ルーキーリーグは8月いっぱいで終了してしまうため、わずか1ヶ月間の出場となったが、グリーン選手の成績は投手として3試合に登板し0勝1敗、防御率12.46、打者として7試合に出場し(守備機会無し).233、3打点に終わっていた。シーズン終了後グリーン選手は地元シンシナティで行われたレッズ戦に招待され、地元メディアに対し自ら投手専念を表明した。
「ずっと打つことも投げることも好きだったけど、チームは自分を投手としてドラフトしてくれた。自分がしっかり集中すべきなのは投げることだ。でも(レッズは)ナ・リーグだから打つ機会はある。これらかもバットを握っていられるのは嬉しいよ」
実はこれまでMLBではNPB同様に、若手有望選手に二刀流を挑戦させる育成方針はまったく存在しなかった。アマチュア時代に投打ともに素晴らしい活躍した選手でも、必ず一つに絞って育成してきた。そんな考え方を変えさせてしまったのが、海の向こうで規格外の活躍を続ける大谷選手だった。
つまりグリーン選手がMLBで二刀流の草分け的存在になるはずだった。しかし選手自らが二刀流を断念してしまっては仕方がないこと。現在グリーン選手は、アリゾナで行われている教育リーグに投手一本で参加している。今回の例が指し示すように、チームが有望選手たちに二刀流をやらせる環境を与えたとしても、プロレベルで投打を両立することは至難の業なのだ。それが理解できたからこそグリーン選手は自ら決断を下したのだ。
我々日本人はいきなり大谷選手という二刀流の成功例を目撃してしまった。その凄さは十分に理解しているとはいえ、その裏では多少なりとも「過去に挑戦する選手がいたならば…」という勘ぐりもあったはずだ。だが改めて断言したい。大谷翔平という選手は心底とんでもない選手なのだ。
もし来年大谷選手が海を渡ることになれば、彼はMLBに計り知れない衝撃を与えることになるだろう。そして“第2の大谷翔平”を輩出する動きはさらに活発化するだろうが、彼の領域に到達する選手は誕生しないのではないだろうか。すでに大谷選手は野球選手として、地球上で“唯一無二”の存在になっている気がしてならない。