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WS開幕投手を務めるジャック・フラハティがヤンキースとの因縁に決着をつける?!

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
ワールドシリーズの開幕投手に指名されたジャック・フラハティ投手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【ドリームマッチに沸く米メディア】

 MLBの2024年シーズンのフィナーレを飾るワールドシリーズが、現地時間10月25日に開幕する。

 今回の対決は、史上最多41回目のシリーズ進出を果たしたヤンキースに対し、史上2番目22回目のシリーズ出場のドジャースが41年ぶりに激突するとあって、米メディアの中には「MLB版のレイカーズ対セルティックス(1960年代は毎年のようにNBAファイナルで大切していた名物カード)」との声が挙がっている。

 さらにナ・リーグのMVP受賞が確実視されている大谷翔平選手と、同じくア・リーグのMVP受賞が確定的なアーロン・ジャッジ選手の直接対決も注目を集めているほか、球界を代表するスター軍団同士の直接対決に、「野球ファン以外をも魅了するカード」と期待が集まっている。

【ドジャースのシリーズ開幕投手はフラハティ投手に決定】

 今シーズンのワールドシリーズは、開幕までヤンキースが中5日、ドジャースでも中4日が空くため、両チームともリーグ優勝決定シリーズで掴んだ勢いを失うことになる。

 その一方で、先発、リリーフとも投手陣に休養を与えられることになり、万全の態勢でシリーズ開幕に臨めるとともに、より理想的な先発ローテーションを組める猶予を与えられた。

 10月21日にオンライン会見に応じたヤンキースのアーロン・ブーン監督は、シリーズ第1戦の先発投手にチームのエースであるゲリット・コール投手を起用することを明らかにする一方で、同22日にオンライン会見に臨んだドジャースのデーブ・ロバーツ監督も、シリーズ開幕投手にジャック・フラハティ投手を指名。山本由伸投手は第2戦で先発を務めることになった。

 コール投手は右ヒジ負傷により6月19日まで登板できず、わずか17試合、95.0イニングの登板に終わった。それでもチーム内で絶対的エースとしての存在は揺るぐことはなく、順当にシリーズ開幕投手に指名された。

 一方のフラハティ投手は、トレード期限日直前にタイガースから緊急補強され、移籍後は10試合に登板し、6勝2敗、防御率3.58の成績を残し、負傷離脱が相次いだ先発投手陣を牽引する存在を担っていただけに、こちらも順調な指名を言えるだろう。

【米メディアが注目するフラハティ投手とヤンキースの因縁】

 ところでワールドシリーズ開幕前から、フラハティ投手とヤンキースの対戦に注目している米メディアが少なからず存在しているのをご存じだろうか。実はフラハティ投手とヤンキースの間には、ちょっとした因縁が存在しているからだ。

 今シーズンのトレード期限日を目前に控え、米メディアが様々なインサイド情報を報じ続けた。その中の1つとして、先発投手の補強を目指すヤンキースが、タイガースとの間でフラハテク投手のトレードを画策しているとの情報が報じられていた。

 そして両チームの間で交渉がまとまり、フラハティ投手のヤンキース移籍が決まりかかっていたのだが、ヤンキースのメディカルチームが同投手の負傷歴と現在抱えている腰痛を不安視し、トレードに待ったをかけ成立直前に撤退してしまったのだ。

 その後ドジャースがフラハティ投手の獲得に名乗りを挙げ、腰痛は問題なしと判断した上で前述通り彼を緊急補強することになったわけだ。

 結果的にドジャースの判断は正しく、フラハティ投手は負傷することなくローテーションを守り抜き、さらにワールドシリーズ開幕投手の座を勝ちとることに成功している。

【フラハティ投手「いつでも対戦するのが待ち遠しい」】

 ロバーツ監督同様、22日にオンライン会見に登場したフラハティ投手は、シリーズ開幕投手に指名されたことについて「誰もが子どもの頃から夢見続けた舞台だ。興奮しているし、金曜日が待ち遠しい」と嬉しさを表現した。

 残念ながらメディアからはヤンキースに対する思いを確認する質問は出なかったものの、彼の健康状態に対するヤンキースの判断でトレードが成立寸前でご破算になったという事実は、フラハティ投手にとって受け入れがたい出来事だったはずだ。

 そんなヤンキース相手に、ワールドシリーズという大舞台で好投を演じることができれば、まさに溜飲を下げる痛快さを味わえることだろう。

 「彼ら(ヤンキース)はベストの中のベストだし、いつでも対戦するのが待ち遠しい相手だ。自分にとって信じられないような対戦になるだろう」

 前述通り両チームともに休養日十分で迎えるシリーズだけに、シリーズの流れを掴む意味でも第1戦は非常に重要になってくる。果たしてフラハティ投手は、どんな投球を披露してくれるのだろうか。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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