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藤井聡太竜王(20)史上最年少で将棋日本シリーズ優勝! 決勝で斎藤慎太郎八段(29歳)に快勝

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 11月20日。千葉県千葉市・幕張メッセ国際展示場において、第43回将棋日本シリーズ・JTプロ公式戦決勝▲斎藤慎太郎八段(29歳)-△藤井聡太竜王(20歳)戦がおこなわれました。棋譜は公式ページをご覧ください。

 16時43分に始まった対局は18時0分に終局。結果は114手で藤井竜王の勝ちとなりました。

 藤井竜王は本棋戦4回目の参加にして初優勝を達成しました。

 優勝の藤井竜王には賞金500万円、準優勝の斎藤八段には賞金150万円が贈られました。

 藤井竜王は1991年に21歳で優勝した羽生善治棋王(当時)の記録を更新して、史上最年少での優勝となりました。

 藤井竜王の今年度成績は25勝6敗(勝率0.806)となりました。

両者ともに子ども大会優勝者

 対局前。両対局者は壇上でファンを前にして、次のようにあいさつをしました。

藤井「斎藤八段は攻めの鋭さと、また粘り強さ、さらには非常に高い終盤力というのを兼ね備えられている印象です」「決勝戦ということでこの会場の皆さま、また中継を通してまた多くの皆さまにご覧いただけると思うので、見ていただける方に楽しんでいただけるような熱戦にできればと思っています」

斎藤「藤井さんは本当に波がなく、どの棋戦でも上位におられますから。どこで勝ち上がってもやはり対戦することにはなるのだなあ、という。戦いたい相手でもあるというところです」「このJTプロ公式戦は、わたくしも子どもの頃、目の前でプロが対局しているのを見た棋戦でして。そこで棋士を目指したいという思いもありましたから、本当に思い入れのある棋戦ですし。こうして多くの皆さまに見ていただける対局ですので、盛り上がるような熱戦にできるように、がんばりたいと思っております。よろしくお願いいたします」

 古い新聞記事には次のような記述があります。

子どもとプロ棋士が参加する「JT将棋日本シリーズ」の東海大会(日本将棋連盟、中日新聞社主催)が29日、名古屋市港区金城ふ頭のポートメッセなごやであった。(中略)子どもの大会には、低学年の部に564人、高学年の部に786人が参加。それぞれ瀬戸市效範小3年藤井聡太君(9つ)と、三重県伊勢市明野小6年伊藤蓮矢君(12)が優勝した。

出典:「中日新聞」2011年10月30日朝刊

トップ棋士がファンの前で公開対局する「JT将棋日本シリーズ2002」の開幕戦、岡山大会(日本将棋連盟、山陽放送、山陽新聞社主催、JT協賛)が23日、岡山市表町の岡山シンフォニーホールで開かれた。(中略)こども将棋大会決勝戦もあり、低学年部門は小学3年斎藤慎太郎君=大阪市、高学年部門は小学4年来海孝之君=松江市=がそれぞれ優勝した。

出典:「山陽新聞」2002年6月24日朝刊

 子ども大会の優勝者同士がプロ公式戦の決勝で対戦するのは、史上初めてとなります。

藤井竜王、攻めを受け止めて勝利

 抽選で選ばれたファンの方が振り駒をした結果「と」が3枚出て、先手は斎藤八段に決まりました。

 戦型は両者の間で多く戦われてきた角換わり腰掛銀。後手番の藤井竜王が早めに動いたのに対して斎藤八段も応じて、駒がぶつかり合う進行となりました。

 51手目。次の一手予想クイズのため、斎藤八段が封じた手は、右端1筋からの端攻めでした。斎藤八段は香を捨て、勢いよく攻めていきます。

 対して藤井竜王は冷静に対応。斎藤八段の攻めが切れ模様となって、形勢は藤井よしとなりました。

斎藤「ちょっと封じ手のところで仕掛けるかは難しい判断になってしまって。思い切って▲1五同香から攻めがつながらないかな、と思っていたんですが。△2五香から飛車を狙われる筋を見落としてしまいまして。それは本当に、勝敗を分けてしまうような見落としといいますか。見えない手を指されましたので。そこの一手、読みを上回られるのは本当に厳しいところでしたね。▲1五歩を仕掛けずに▲7九玉とか、▲3三同桂成(桂交換)から▲7九玉というのはいま(終局直後)感想戦をしていたんですが。ちょっと勝負どころを見誤ってしまって。悔やまれる一局だったかなと思います」

藤井「こちらの玉が4二玉の薄い形のまま戦いになって。判断が難しい一局だったんですけど。△2五香から飛車を取りにいってなんとか攻めを受け止める展開にできたのかな、というふうに思っています」

 満を持して反撃に転じた藤井竜王は着実に斎藤玉を追い詰めていきます。最後は藤井竜王が斎藤玉を詰まして、強敵を相手に快勝で決勝戦を制しました。

 2011年、9歳のときに子ども大会で優勝した藤井竜王。11年後、20歳となった現在、プロのトップクラスを次々と連破して、将棋日本シリーズ初優勝を達成しました。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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