インターネット発、次世代バンドの決定打 空白ごっこが解き放つ視界を切り開くエモーショナルなサウンド
●せつなくもエモーショナルなヴォーカリスト“セツコ”の歌声に魅了
仕事柄、よく「いいバンドいない?」と聞かれるのだが、そんな時に真っ先に名前を挙げたいのが空白ごっこだ。
コロナ禍によって不安の霧に包まれたかのような2020年。空白ごっことは、視界を切り開くエモーショナルなサウンドを解き放つ次世代バンドであり、楽曲のクオリティーの高さはもちろん、せつなくもエモーショナルなヴォーカリスト“セツコ”の歌声に魅了された。メンバーは、ボーカロイドシーンでも活躍する針原翼(HarryP)、そしてkoyori(電ポルP)が楽曲を制作しているユニット形態であり、編曲を担当したEDDYも制作に参加しているクリエイティヴチームだ。
ネット発アーティストが活躍する昨今の音楽シーン、どこかしら謎めいた存在感を解き放っていた空白ごっこが10月21日に1st EP『A little bit』をはじめて全国流通盤としてCDリリースした。没入感高い、考え練られたイントロダクションからはじまるジェットコースターのようなサウンド展開。セツコの歌声は、ナイフのように“空”を切り裂き、思いの強さを張り裂けんばかりに突き刺してくる。
「空白ごっこをスタートする1年前ぐらいにセツコさんが、僕のボカロ曲をカバーした動画をアップしてくれて。たまたま発見して“すごい声だ!”って驚きました。結成の最初のきっかけはそこですね。歌声が音楽だったんですよ。」(針原)
「最初にセツコさんの歌声を聴いたとき、笑っちゃいました。人間って感情が暴走したときに笑うらしいんですよ。まさにそれで。創作意欲を掻き立てられる声なんですよね。」(EDDY)
●J-POPの進化を感じるサウンドから解き放たれるネクストな質感
何もないけれど何かあるという“空(くう)”の世界観を“心”にたとえて、その精神世界で遊ぶ(ごっこする)ことをコンセプトにした空白ごっこの表現活動。
「ユニット名を決めるときの候補に“空白”という言葉が浮かびました。それをはりーさん(針原)がすごく気に入って。その後に“ごっこ”という言葉を合わせて。空白で何にもないところに、いろんな感情やコンセプトを交えて、その中を行き来して、でも、どれも仮の姿というか“ごっこ”な感じでいろんなことをやっていきたいねと名付けました。」(セツコ)
これまで、YouTubeにて5曲の映像作品を配信、ストリーミングサービスにて1st EP『A little bit』を7月29日に先行配信してきた空白ごっこ。J-POPの進化を感じるサウンドから解き放たれるネクストな質感。それは、いまの時代の閉塞感がトリガーとなり、息苦しさが切迫したビートセンスに反映され、無意識下にリリックにおける表現テーマとして呼応しているのかもしれない。
「歌詞に関しては、セツコさんが書いている言葉が空白ごっこの柱になっています。」(koyori)
「空白ごっこにアイデンティティーがあるとしたらそれはセツコさん自身であり、彼女が生み出すリリックだと思いますね。」(針原)
「まだ10代なんですけど、10代なりに日々自分が感じたことの記録というか。歌詞では思ったことや日記にメモしたこと、記憶に強く残っていたことを取り出して歌で表現していますね。」(セツコ)
●“全曲神曲ばかり”とネットで騒がれた珠玉の作品たち
“全曲神曲ばかり”とネットで騒がれた珠玉の作品たち。なかでも、空白ごっこのはじまりとなった鈴原作曲、セツコ作詞によるキラーチューン「なつ」(M.1)から伝わる感情限界な哀しみと切なさ。そして、koyori詞曲によるオルタナセンスある次世代ポップを奏でる未来派ファンク「リルビィ」(M.2)は、いかにして生まれたのか?
「『なつ』は、ユニットのはじまり感を出したいなって作りました。これと『リルビィ』はほぼ同時進行でした。まだ、空白ごっこという名前がまだ無かった頃ですね。」(針原)
「あまりオルタナ感を意識したことはないんですよ。でも、GO!GO!7188や椎名林檎とかは好きでしたね。『リルビィ』は、イントロのギターリフが最初にあって。あと、リズムから組み込んでいきました。歌詞で韻を踏むことを意識しながら、メロディーと歌詞はほぼ同タイミングで思い浮かびましたね。」(koyori)
「『なつ』で、はじめて歌詞を書いて欲しいとはりーさんに言われて。戸惑ったのですが、自分のこだわりを出し切りました。切なさがあって、あまり明る過ぎない夏の雰囲気というか。寂しさを表現していますね。」(セツコ)
●宝物となるCD作品『A little bit』を、あなたのプレイリストへ
「雨」(M.3)で聴ける疾走感ある泣きのギターロック、インパクトある歌の強さに圧倒される「だぶんにんげん」(M.4)、セツコによる詞曲となったサビのヴォーカリゼーションが圧巻な「選り好みセンス」(M.5)、イントロから2020年のカオティックな雰囲気を体現するダークポップな「ピカロ」(M.6)、すべてを浄化するようにピュアポップなギターロック「19」(M.7)によって解放されていくエモーショナルな初期衝動。ラストに収録されたナンバーは、セツコが未来の自分に向けた手紙なのかもしれない。
「『だぶんにんげん』は歌うのがハードでしたね(苦笑)。キーも広いし出し切った曲です。『選り好みセンス』は、EPの中でクッションになる曲が欲しくて書いてみました。『ピカロ』の歌詞は、koyoriさんから急に頼まれて(苦笑)。koyoriさんは音遊びが独特で、その世界観を崩さないような言葉遊びで文字化けを使ってみたりしました。」(セツコ)
「『ピカロ』のメロディーはサビがなかなか決まらなかったんです。車の中でふと浮かんで。車を止めてiPhoneで録音したのに、家に帰ったら録れてなくって(泣)。でも次の日朝起きたら、そのメロディーが頭の中に戻ってきたんですよ。」(koyori)
「『雨』は、ピアノの哀愁とギターの衝動の疾走感の対比ですね。走り抜けていくオケで。『選り好みセンス』はセツコさんの曲なんですけど、コード感が独特なんですよね。そこを活かしています。」(EDDY)
「いろんな曲をやっている“ごっこ”感があらわれていますよね。曲では自分とkoyoriが目立つかもしれないですけど、実は3本目の矢があって。それがセツコさんの曲なんです。僕ら2人では書けない曲を彼女は書けるので。『19』は、僕が作曲してはいるのですが、アルバムのラストに合うようにセツコさんに相談しながら作ったナンバーですね。」(針原)
本作は、空白ごっこの名詞となる記念すべき1st EPだ。ここから次世代の羅針盤に光が射し、空白を埋める新しい音色が緊迫した世の中へ向かって解き放たれていく。宝物となるCD作品『A little bit』を、あなたのプレイリストへ織り込んで欲しい。
空白ごっこ オフィシャルサイト