約16億円の損害賠償の集団交渉 旧統一教会「信徒会による個別対応」の回答 不誠実さを弁護士らが指摘
ここにきて、旧統一教会の「信徒会」の存在がクローズアップされてきました。この組織は何なのでしょうか?
弁護士らは不誠実さを指摘
立憲民主党を中心とする「国対ヒアリング」が行われて、阿部克臣弁護士から話がありました。
「全国統一教会(世界平和統一家庭連合)被害対策弁護団は334名の弁護士によって結成されています。すでに数百名の被害者から依頼を受けていますので、地域の担当弁護士が被害者の取りまとめを行ってから、第二次、第三次と集団交渉を行う予定です。第一次集団交渉申し入れに対して、統一教会から通知書による回答がありました」
回答には「現時点において、各通知人の請求を根拠づける具体的な事実関係が不明であり」「主張の事実関係を一方的に受け入れることを前提とする集団交渉にも応じられません」最後に「慰謝料を含む損害賠償全額の支払請求及びそれを前提とする交渉や面談には応じられません」としています。
「回答では『個々の通知人の内容について、各担当信徒会において鋭意調査の上、個別に対応する』としています。つまり、本部は対応せず、信徒会という(旧統一教会の)ダミー組織が個別に対応するという、不誠実な対応といえます」(阿部弁護士)
同弁護団長である村越進弁護士も「統一教会本部ではなく信徒会関係者が対応する。当弁護団とは交渉せず、個別の弁護士とのみ交渉するというもの」として「統一教会の態度は甚だ不誠実だといわざるをえません」と指摘し「多数の裁判例が統一教会の違法な勧誘・教化活動を認定してきたにもかかわらず、これを改めることをしなかったために、長期間にわたって甚大な被害を生じさせたことに対して、真摯に向き合うものとはいえない」と、自らの責任に真摯に向き合うべきとの談話を発表しています。
信徒会とは何か?
旧統一教会における、信徒会なる存在を初めて聞く方もいるかと思います。
これまで旧統一教会は「霊感商法は信者らが勝手にやったこと」との主張を続けています。つまり、信者らで構成されている全国にある信徒会なる組織が、勝手に霊感商法や教団名を隠して伝道をして社会問題を引き起こしてきたのであって、教団とは関係ないとの主張をしてきました。
しかし札幌地裁(平成24年3月29日)において、「宗教団体である被告の組織とは別個独立に連絡協議会又は信徒会という信徒団体が組織されていたとは到底認めることができず、被告が連絡協議会又は信徒会として主張する組織は被告の一部を構成するものであって」という判決が出ています。
母親が約1億円もの献金をした後に、返金を求める裁判を起こしますが、母親が統一教会からの指示で念書に署名させられることで、一審、二審とも敗訴して、最高裁へ上告中の娘さんの中野容子さん(60代・仮名)は「過去の裁判(上記・札幌地裁判決)で実態が否定されている、いわばダミー団体です。そのような団体が交渉対応などできるはずがありません」と話します。
同ヒアリングに同席した鈴木エイトさんも「本部が個別の対応を促しているということですから、組織的な不法行為をしていると捉えていることにもなる。そもそも信徒会の実態はない」と話します。
裁判での判決及び、皆さんの指摘はとても重要です。
「知っていたか?俺たちは信徒会に所属しているそうだ」と言われた過去
私の信者時代のエピソードを話します。
献身信者(出家信者)として、活動していた1990年代頃だったと思います。所属していた地区の支部長から次のようなことをいわれました。
「お前、知っていたか?俺たちは信徒会に所属しているそうだ」
それに対して私は首をひねり「知りませんでした」と答えると「そうだろう。今、俺も初めて聞いた!」
自分より信仰歴の長い責任者は、薄ら笑いを浮かべながら話します。
「どうやら、裁判対策のようなんだ。いいか、誰かに何か聞かれたら、これからは信徒会に所属していると答えるんだぞ」
「わかりました!」
アベル(神様に近い上司)の言葉は神様の言葉であり絶対ですので、それ以来、自分は信徒会に所属していると思いこんで活動をすることになりました。
当時、このことを聞かされて「自分が信徒会所属?」と思った信者も多いと思います。突然に信徒会に自分たちは所属すると、上から言われたのです。
旧統一教会の指示との認識で私たち信者は、必死に文鮮明夫妻のために伝道と経済(お金集めの活動)をしてきましたが、旧統一教会側は「霊感商法は(信徒会の)信者らが勝手に行ったこと」と言っています。
睡眠時間を削り、すべての財産を献金して、身も心も捧げて活動してきた信者たち、そして今も活動しているだろう信者の一人一人の姿をしっかり見ようともしない、現実とはまったく乖離している言動を続ける状況に、本当に許せない思いになります。
祝福献金、祝福式感謝献金を100万円以上払った被害者も
1億4000万円の被害を受けて、集団交渉をしている松田さん(80代・仮名)は40回のヒアリングでも話された被害実態を改めて話して下さいました。
旧統一教会コンプライアンス宣言後の正体隠しからの被害続々 5月開催予定合同結婚式への参加強要の懸念も(多田文明) - 個人 - Yahoo!ニュース
今回の教団の対応について「80歳であり、へとへとです。皆さんの力をお借りして解決したいと思っている。それなのに(集団交渉を)拒否するなどとは、許せない」と話します。
また、立憲民主党の山井和則議員と電話で話す形で、ヒアリングに臨んだAさんは、2008年から13年にかけて、1000万円を超える被害を受けて、集団交渉に参加しています。
山井議員から、入信の経緯を聞かれて「自宅に二人で見えた方に『いいお顔をされていますね』と言われて、無料で開運鑑定をしてもらったのがきっかけです。通った場所は八王子カルチャーセンターです」と答えます。
Aさんの被害事例を見るなかで、注目するべきは2009年6月から払い始めた「祝福献金140万円」と2009年8月からの「祝福式感謝献金100万円」です。
Aさんは「祝福献金」の言葉が出てきて初めて、自分のいるところが「統一教会」だとわかったそうです。それまでにAさんは3回ほど、そのことを確認したそうですが、教団から「統一教会ではない」と答えられており、騙される形で入信、献金させられています。
「祝福献金140万円」は2009年6月から10年にかけて分割で払ったとされており、「祝福式感謝献金100万円」は、2009年8月から11年までに払っています。
2009年にコンプライアンス宣言を出したとすれば、正体隠しの伝道にて払わせた祝福献金の分割払い自体も止めるべきではないかと思います。
この他にも、199万円を超える金額のペンダントを購入させられており、山井議員は、教団がコンプライアンス宣言を出した2009年以降に起こっている、こうした数々の被害を問題視しています。
同党の柚木道義議員も、こうした集団交渉における被害実態は「文化庁の解散命令請求の補強となるのではないか」と指摘します。
小川さゆりさん(活動名)からは、集団交渉で過去の体験を思い出すなどして「辛い思いをしている人もいると思います。集団の力は大きい。教団の対応に負けないで対応してほしい。そして解散命令請求を一日も早くして、沢山の人が救われてほしい」と話します。
正体を隠されて入信させられた後に、多額の献金、物品購入をさせられるケースは今後も続々明らかになってくると思われます。今も被害が起き続けていることは充分にありえますので、一刻も早い、文化庁による解散命令請求の要請が望まれます。