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日本名のハワイ在住女性が米旅行で行方不明。捜索していた父が自死の怪

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
ロサンゼルス国際空港(LAX)のイメージ写真。(写真:イメージマート)

アメリカでは、ハワイの30代の女性がロサンゼルスを経由してニューヨークに向かう途中に行方不明になる騒ぎとなっている。その女性を探してロサンゼルスに渡った父親が24日、遺体で発見されるという急展開の出来事が続き、謎が謎を呼んでいる。

情報が錯綜しわかりにくい出来事として伝えられている。ここではロサンゼルス・タイムズなど米メディアで報道されている現段階の情報を、時系列にまとめてお伝えする。

コバヤシさんの失踪の経緯

ハンナ・コバヤシ(Hannah Kobayashi)*さんは、今月上旬にマウイ島からニューヨークへ向かう途中、ロサンゼルスで行方が分からなくなった。

  • 年齢は30歳、31歳と両方の報道がある

11月8日

コバヤシさんは、死ぬまでにやってみたいことをリスト化した「バケットリスト」の実現のため、ニューヨーク州北部の叔母を訪ねる予定だった。マウイ島を出発した彼女は今月8日、LAX(ロサンゼルス国際空港)に着陸したことは監視カメラの映像でわかっている。しかし約40分後に予定されていたニューヨーク行きの乗り継ぎ便に搭乗しなかった(乗り遅れたのか自発的に乗らなかったのかは不明)。

11月9日

コバヤシさんは家族にロサンゼルス観光をしているとテキストメッセージを送っていた。モールを歩いていたという従業員の目撃情報もある。

11月10日

この日もコバヤシさんは再び同じモールに行ったと見られている。モール内のナイキのイベント会場を歩き回っている様子を自身のSNSに投稿していた。

11月11日

コバヤシさんはこの日、再びLAXに戻ったと見られる。地下鉄駅付近にいたり、空港で航空会社のチェックイン担当者と話をしたりなどの目撃情報があるが、ニューヨーク行きの飛行機には結局搭乗していない。

彼女は「空港へ...無事に到着」や「(省略)...私は無事...みんなのために。また連絡します」などといったメッセージを家族宛に送信していたとUSAトゥデイは報じている。

コバヤシさんがロサンゼルスのダウンタウンで身元不明者と一緒にいた様子が監視カメラ映像にあったという情報もある。

またこの日遅く、コバヤシさんから家族宛に、奇妙なテキストメッセージが送信されていた(後述)。

コバヤシさんの携帯電話はこの日を境にオフになり、携帯電話自体も見つかっていない。

さらに不可解な点

1-

11日、コバヤシさんは家族に宛て、無事に空港に到着したことやまた連絡するといった内容と共に、家族に「奇妙な」テキストメッセージを送信していた(例えば、コバヤシさんは家族をベイビーと呼んだりしないが、送信されたテキストにはそのようなワードや彼女らしからぬ絵文字が含まれていたなど)。

また奇妙なテキストメッセージの中には、自身のIDが盗まれたことや高度なスキルを持つディープハッカーに騙され資金をすべて持っていかれてしまい精神的に不安定な状態にあること、飛行機に乗れないなどという趣旨が含まれていた。

ほかにも、自分が愛していると思っていた人に騙されたなどという内容のメッセージもあった。

2-

11月24日 

コバヤシさんの失踪後、ハワイから家族や友人がロサンゼルスに渡り、捜索活動をしていた。そんな中、コバヤシさんの父親、ライアン・コバヤシさん(58)が24日、遺体で発見されたのだった。

父のライアンさんは街中でチラシを配布したり、テレビニュースのインタビューに応えたりして、精力的に捜索活動をしているのが伝えられていた。

テレビカメラの前で娘に向け、とにかく連絡してほしいなどと力強くしっかりとした口調で、捜索を呼びかけていたのが印象的だった。このように父親を含む彼女の家族はボランティアと共に13日間懸命に捜索活動をしていたが、まさかその父親が亡くなるとは誰が想像しただろうか。

24日早朝、ライアンさんはLAX近くの駐車場で遺体となって発見された。自死と見られる。そしてハンナ・コバヤシさんは未だ見つかっていない。

この出来事はライアンさんの死でさらに謎が深まっている。

点と点が繋がるのか?

この出来事で特筆すべきキーパーソンとして、急死した父親のほかにも、コバヤシさんの元彼氏の存在も伝えられている。もともとハンナ・コバヤシさんのバケットリストのこの旅は、元彼氏を伴い同じ旅程だったとCNNは伝えている。ただし(別れたため?)チケットの払い戻しをしようとしたがそれができなかったため、2人はニューヨークに到着後、別行動の予定だったという。

もう一点筆者が気になったのは、父ライアンさんの婚約者の存在だ。

アメリカではこのような困難な状況にある家族や遺族らを支援するためにクラウドファンディングが立ち上がることは珍しくはない。ABCニュースはこの一連の出来事において、ライアンさんの死後に婚約者のために立ち上がったクラウドファンディングについて触れている。支援活動金の目標は1万ドル(約150万円)で、現時点で5000ドルを超える援助金が寄せられている。これがどのように婚約者やハンナ・コバヤシさんの捜索の支援に使われるのだろうか。

未だ失踪したままのコバヤシさん、娘を捜索中に急死した父親、その父親の婚約者、コバヤシさんの家族や友人、元彼氏、ダウンタウンで一緒にいたとされる身元不明者、コバヤシさんが愛していると思っていたけど騙したとされる人物などの存在がこの一連の出来事をますますミステリアスにしている。今後、どのように展開していくだろうか。

(Text by Kasumi Abe)無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、著名ミュージシャンのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をニューヨークに移す。出版社のシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材し、日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。

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