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部活動を悪者にするだけでは教員の長時間労働問題は解消できない

前屋毅フリージャーナリスト

教員の長時間労働の最大の理由が「部活」だけにされそうな勢いだ。今月13日、教員の長時間勤務の改善策を検討している文部科学省とスポーツ庁は、部活動に週1日以上の休養日を設けることなど柱とした報告書をまとめ、近く都道府県教委などに通知する予定だという。

部活動に休養日を設けさえすれば教員の長時間労働は解消する、と言わんばかりの内容といえる。しかし1997年にも同様の通知を当時の文部省がだしたが、現場に浸透しなかった。

浸透しなかったのは、現実的ではなかったからである。部活動に熱心になればなるほど、休養日なしのスケジュールになりがちだ。休み無しの部活動は問題ではあるが、「休め」と言ったからといって問題が解決するものでもない。それよりも人を増やして、教員が交代で休みをとれる体制をつくることのほうが効果的ではないだろうか。

しかし、人を増やすとなると予算の問題がある。それはやりたくないから、「休め」と言うだけで問題解決に努力したように思わせているとしかおもえない。「休め」と言うだけならカネはかからない。実行しないのは学校現場が悪い、と責任転嫁も簡単だ。

そもそも教員の長時間労働を改善するのに、まず部活の問題をもってくることに大きな疑問がある。今年2月に連合総合生活開発研究所(連合総研)がまとめた「教職員の働き方・労働時間の実態に関する調査(速報)」によると、負担感を感じる業務として中学校教員では「クラブ活動・部活動指導」というのが第4位にランクキングされている。

念を押すが、第4位である。第3位には「児童・生徒の問題行動への対応」、第2位には「国や教育委員会からの調査対応」、そして第1位には「保護者・地域からの要望等への対応」がランキングされている。つまり、教員の長時間労働問題を解決するには、部活動への対応も必要だが、それ以上に第1位から第3位の問題に取り組まなくてはならいないはずなのだ。部活動の問題だけで解決できることではないのだ。

特に第2位の「国や教育委員会からの調査対応」については、文科省や教育委員会が自ら工夫すれば解決できる問題である。それは問題視しないで部活だけを悪者にするのは、自分たちでできること、自分たちの負担になるようなことには手をつけないで、学校現場だけに責任を押しつけるやり方にほかならない。

本気で問題解決を考えるなら、文科省や教育委員会は、まず自分たちができることから手をつけるべきではないだろうか。そこは隠しておいて、学校現場に混乱を招くような部活に休養日を強制するやり方では、なにも解決しない。

フリージャーナリスト

1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。2021年5月24日発売『教師をやめる』(学事出版)。ほかに『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『全証言 東芝クレーマー事件』『日本の小さな大企業』などがある。  ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン)

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