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「情報共有の遅れをお詫びしたい」小学校の校庭の釘で児童が大けが、杉並区長が謝罪

亀松太郎記者/編集者
記者会見にのぞむ岸本聡子・杉並区長(撮影・城戸譲)

東京都の杉並区立荻窪小学校で4月中旬、校庭を走っていた児童が転倒。地面に打ち込まれていた釘で、ひざに十数針縫う大けがをした。その事故について、杉並区の岸本聡子区長が、5月24日の記者会見で謝罪した。

岸本区長は「事故を知ったのは(発生から約1カ月後の)5月10日夜間のことだった」と明らかにした。

そのうえで、「このような重大な事故について、教育委員会との情報の共有が遅れたことに対し、深くお詫びを申し上げます」と述べ、頭を下げた。

事故の把握が遅れた理由について、岸本区長は、杉並区教育委員会から区の危機管理部門に「情報を上げていなかったため」と説明した。

今回の反省をもとに「危機管理上の情報連携のルールについて点検し、改善を図ってまいります」と語った。

区内の小中学校の校庭で「1350本」の釘やフックを発見

荻窪小の校庭で事故が発生したのは4月13日。ラインマーカーとして打ち込んだとみられる釘の頭が数ミリ、地面から出ていて、転んだ児童のひざに裂傷を負わせた。

その後、同小は緊急調査を実施。運動会などのために校庭に打ち込んだ釘やフックが544本、見つかった。また、区内全域の小中学校などでも調査した結果、43校から1350本の釘やフックが発見された。

杉並区内の小中学校などの緊急調査結果(PDF)

さらに、5月17日から区内の小中学校など63施設を対象に、金属探知機による調査と除去作業を進めている。21日までに調査した8施設から、釘などの金属物が1990点、見つかった。

新聞報道で、事故が一般にも明らかになった

今回の事故を受けて、荻窪小は4月22日、臨時保護者会を開催。事故の状況と今後の対策について説明した。

杉並区教育委員会は一般に公表しなかったが、東京新聞の5月11日の報道によって事故が明らかになった。朝日新聞TOKYO MXなど、他のメディアも追随して報じた。

東京新聞の報道後、杉並区はウェブサイトで事故の状況と緊急調査の結果を発表。「けがをされた児童とその保護者には、心からのお詫びとお見舞いを申し上げます」という教育長のコメントを公表した。

なぜ区長が事故を把握するのが遅れたのか?

5月24日の記者会見では、岸本区長が事故を知ったのが発生から「約1カ月後」だったことについて、質問が出た。

東京新聞の記者が「区長としての組織運営やコミュニケーションが問われる事態だと思うが、情報共有がされなかった原因についてどう考えているか」と尋ねると、岸本区長は次のように答えた。

「学校現場では、小さな事故から大きな事故まで起こることがあるが、どの件について(教育委員会が)区長部局に報告すべきかという認識の甘さが今回の遅れに繋がったと認識している」

さらに「(区長部局の)危機管理部門にいち早く、重要な事項を共有することを徹底しなければいけないと思っている」と語った。

それを受け、東京新聞の記者が続けて質問した。

「区長は去年『情報公開度ナンバーワンを目指す』と宣言したが、不都合な事故を公表しないというのであれば、いままでとあまり変わらないのではないか」

岸本区長は「情報共有を一番にするという目標を掲げながら、ご指摘のような心配や不安を(区民や報道関係者に)与えたことは、私も痛感している」と心情を口にした。

ただ、今回の事故後、教育委員会は区内すべての小中学校について、迅速に対応したとして、「この事故を隠そうとしたという事実はなかったと認識している」と釈明した。

そのうえで「これまで以上に、情報公開を進めるというのがどういう意味なのか、改めてしっかり認識して、一歩一歩信頼を築いていきたい」と述べた。

記者/編集者

大卒後、朝日新聞記者になるが、3年で退社。法律事務所リサーチャーやJ-CASTニュース記者を経て、ニコニコ動画のドワンゴへ。ニコニコニュース編集長として報道・言論コンテンツを制作した。その後、弁護士ドットコムニュースの編集長として、時事的な話題を法律的な切り口で紹介するニュースを配信。さらに、朝日新聞運営「DANRO」の創刊編集長を務めた後、同社からメディアを買い取って再び編集長となる。2019年4月〜23年3月、関西大学の特任教授(ネットジャーナリズム論)を担当。現在はフリーランスの記者/編集者として活動しつつ、「あしたメディア研究会」を運営。在住する東京都杉並区のニュースを取材している。

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