Yahoo!ニュース

ナショナルズの大統領レースに新メンバーが登場。知名度はやや低いものの、ワールドシリーズ観戦は歴代最多

宇根夏樹ベースボール・ライター

ワシントン・ナショナルズに新メンバーが登場する。ナショナルズは7月1日、第30代大統領のカルビン・クーリッジが「プレジデント・レース」に加わることを発表した。

「プレジデント・レース」はナショナル・パークで行われている、着ぐるみのレースだ。公式なレースとして2006年7月に始まった時のメンバーは、マウント・ラシュモアに彫ってある4人、初代大統領のジョージ・ワシントン、第3代大統領のトーマス・ジェファーソン、第16代大統領のエイブラハム・リンカーン、第26代大統領のセオドア・ルーズベルト――それぞれのニックネームはジョージ、トム、エイブ、テディ――だった。そこに、2013年より、第27代大統領のウィリアム・ハワード・タフト(ビル)が加わった。

着ぐるみのレースと言えば、ミルウォーキー・ブルワーズの本拠地、ミラー・パークで開催されている「ソーセージ・レース」が有名だ。1990年代に始まったこのレースには、パット・ミアーズジェフ・ジェンキンス野茂英雄らの選手が着ぐるみに入って出場しただけではない。マーク・グレースはブルワーズではプレーしなかったが、アリゾナ・ダイヤモンドバックスのブロードキャスターとしてミラー・パークを訪れた際に「ブラット(ブラットワースト)」としてレースに出た。ロン・レネキー前監督の妻カレンも「ホットドッグ」に扮したことがある。ちなみに、野茂は「ポリッシュ・ソーセージ」として1着になった。レースには、他に「イタリアン・ソーセージ」と「チョリソ」が出走している。

だが、ナショナル・パークの「プレジデント・レース」もなかなかの人気を博している。大統領でありながら、あるいは大統領だからこそ、レースは飛び蹴りや妨害など何でもありの展開。また、テディは2012年のレギュラーシーズン最終戦に初めて1着となるまで、525連敗を記録して話題を呼んだ。その間には、ジェイソン・ワース(ナショナルズ)がテディを勝たせようとしてエイブをブロックしたが、ブルペンのメンバーが他の大統領を押しとどめている最中にテディも転んでしまい、ワースがやむなく(?)先頭を切ってゴールインするハプニングも起きた。テディは初勝利の際、乱入した偽のフィリー・ファナティック(フィラデルフィア・フィリーズのマスコット)からアシストを受けものの、その直前にはアメリカ陸軍とともにトレーニングに励んでいた。

ナショナルズの公式ホームページによれば、ここまでは、エイブが通算266勝と圧倒的な強さを誇っている。ジョージは189勝、トムは180勝、テディは50勝、ビルは26勝だ。テディは2014年のレギュラーシーズンで最多の26勝を挙げた他、ポストシーズンでは6試合(2012、2014年)すべてに勝利を収めている。

6人目のメンバーとなるクーリッジ――「プレジデント・レース」におけるニックネームはカルになるだろう――は旋風を巻き起こせるだろうか。大統領としての知名度は5人に劣るものの、ホワイトハウス・ヒストリカル協会は「クーリッジ&ベースボール」と題して、在任中のワールドシリーズ観戦4試合が歴代大統領の最多であることなどを紹介している。ベースボールとの関わりからすれば、カルは「大型ルーキー」と呼べるかもしれない。デビュー戦は7月3日。初レースを勝利で飾れば、翌日に143歳の誕生日を迎えるカルにとっては、前祝いとなる。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

宇根夏樹の最近の記事