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【光る君へ】清少納言が絶賛!「いとをかし」な温泉地3選

高橋一喜温泉ライター/編集者

5月19日(日)の大河ドラマ『光る君へ』(NHK)は、高畑充希さん演じる中宮定子が兄弟の不祥事によって内裏から出るよう命じられて絶望する様子が描かれた。5月26日(日)の放送では、中宮定子の女房として仕えていた清少納言が定子のために『枕草子』を執筆するエピソードが描かれる予定だ。

ドラマの中で清少納言を演じているのがファーストサマーウイカさん。「清少納言ってこんな人だったかも!」と信じてしまうくらいのハマリ役だと個人的には思う。

『枕草子』の三名泉とは?

さて、清少納言が書いた『枕草子』といえば日本最古の随筆集とされるが、最も有名なのが「春はあけぼの~」で始まる一連の文章だろう。「春は夜明けの頃がよい。 しだいに白んでいく山と空の境目が少し明るくなり、紫がかった雲が細くたなびいていくのがすばらしい」と書いている。

「春はあけぼの」に代表されるように、『枕草子』には清少納言が「いとをかし」と感じたことを独自の感性で綴っている。「をかし」とは「趣深い」「美しい」などと訳されるが、平たく言えば「すてきだ」「すばらしい」くらいの意味だろう。

実は『枕草子』には、温泉についての記述もある。

「湯は、ななくり(七栗)の湯、有馬の湯、玉造の湯」

これら3つの湯が「いとをかし」というわけだ。現在は「三名泉」として伝わる。実際に清少納言が温泉につかったかどうかはわからないが、少なくとも平安時代の都に3つの温泉地の評判が届き、貴族の間でも話題になっていたと考えられる。

有馬温泉は、かの有名な神戸の名湯。玉造温泉は島根県にある歴史ある温泉地だ。では、ななくり(七栗)の湯はどこかといえば、三重県の榊原温泉が有力だとされている(長野県の別所温泉という説もある)。

有馬温泉(兵庫県)

関西が誇る名湯・有馬温泉は歴史が深いうえに、アクセスがよいので訪れる客も多い。日本三古湯のひとつに数えられ、『日本書紀』や『風土記』にも記述がみられる。豊臣秀吉が愛した湯としても語られる。細いつづれ折りの坂道が続く湯本坂は、昔ながらの風情を残す石畳の通りで、浴衣姿での散策が絵になる。行基が建立した温泉寺や秀吉がつくった露天風呂などの遺構など、歴史を感じさせるスポットも多い。赤茶色の湯はパンチが効いた濃厚湯。各旅館のほか共同浴場「金の湯」で堪能できる。『枕草子』の3つの温泉の中では比較的京都から近いので、清少納言がつかったかもしれない、と想像を巡らせるのも楽しい。

玉造温泉(島根県)

奈良時代の開湯といわれる古湯で、『出雲国風土記』にも記載がある。三種の神器のひとつ、八尺瓊勾玉もこの地でつくられたと伝わる。現在は玉湯川沿いに旅館などが立ち並び、落ち着いた雰囲気の温泉街である。出雲大社にも近く、観光の拠点としても人気だ。硫酸イオンやメタケイ酸を含んだ湯は、美肌の湯としても評価を得ている。

榊原温泉(三重県)

津市の山中にある歴史ある温泉地。現在では10軒弱の宿が軒を連ねる。京都から伊勢神宮へと向かう道の通過点に位置するため、参拝前に身を清める「湯ごり」の場として重宝されたという。老舗宿の「湯元榊原舘」は甘い硫黄の香りがする透明湯で、源泉かけ流し。なかでも源泉風呂には32度のぬる湯が100%かけ流しにされており、湯の個性が際立つ。加温湯と交互に浸かると至福の気持ちよさだ。

※ ※ ※

いずれも長い歴史を感じられる温泉地である。『枕草子』の世界に思いを馳せながら、これらの温泉地を訪ねるのも「いとをかし」かもしれない。

温泉ライター/編集者

温泉好きが高じて、会社を辞めて日本一周3016湯をめぐる旅を敢行。これまで入浴した温泉は3800超。ぬる湯とモール泉をこよなく愛する。気軽なひとり温泉旅(ソロ温泉)と温泉地でのワーケーションを好む。著書に『日本一周3016湯』『絶景温泉100』(幻冬舎)、『ソロ温泉』(インプレス)などがある。『マツコの知らない世界』(紅葉温泉の世界)のほか、『有吉ゼミ』『ヒルナンデス!』『マツコ&有吉かりそめ天国』『ミヤネ屋』などメディア出演多数。2021年に東京から札幌に移住。

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