Yahoo!ニュース

【肯定と受容の違い】全肯定するのがカウンセラーの仕事ではないし、それはカウンセリングではありません。

竹内成彦心理カウンセラー(公認心理師)

こんにちは。
精神医学と性格心理学に詳しい
心理カウンセラー(公認心理師)の竹内成彦です。

私は、10数年以上前から、若いカウンセラーの教育分析もスーパーバイズも経営コンサルティングも積極的にしているのですが、ある時、「カウンセリングの勉強をし始めた」とおっしゃる人から、「カウンセラーは、クライアントの話を全肯定するのですよねぇ」と訊かれました。

誰に習ったのでしょう?
どこで学んだのでしょう?

私は静かに言いました。
「いいえ。カウンセラーは、基本、原則としてですが、クライアントの話に対し、肯定も否定もしないんですよ」
「えっ、そうなんですか!?」
「だって、『自殺したい』とか『人を殺めたい』と言うクライアントに対し、肯定なんかできないでしょう。また、『自分の部屋に盗聴器が仕掛けられている』と言う統合失調症の方に肯定なんかしていたら、どんどん症状が悪化してしまいますよ」

カウンセラーは、クライアントを受容するのです。
「自殺したい」と言うクライアントを受容する、「人を殺めたい」というクライアントを受容する、「部屋に盗聴器が仕掛けられている」というクライアントを受容するのです。

肯定と受容は違います。

肯定とは、相手に対し、良い意味づけをすることです。
肯定とは、相手の主張や意見に賛成の意を表することです。

受容とは、相手の存在そのものを受け止めることです。
受容とは、正しいとか間違っているとか、評価しない態度です。

もう少し具体的に言うと、
「自殺したい」と言うクライアントの気持ちや感情をよくよく理解したうえで、自殺するという行為に対しては、肯定はしないということです。
「人を殺めたい」と言うクライアントの気持ちや感情をよくよく理解したうえで、人を殺めようという行為に対しては、肯定はしないということです。
「盗聴器が仕掛けられている」というクライアントの気持ちや感情をよくよく理解したうえで、その思考を支持しないということです。

上記のことがわかってくると、
カウンセラーとしてもう一段、腕が上がると思います。

さらにもうひとこと。
私は若いカウンセラーに対しては、ティーチャーのイメージが強いかもしれませんが、私のカウンセリングは、クライアントの話に、ひたすら耳を傾ける共感的傾聴です。私も、助言で救われるのなら、積極的にクライアントに対し助言しますが、助言で救われることは少なく、やっぱりクライアントを救うのは、深い共感、共感的理解だなだと思う次第です。
※「救う」なんて、偉そうに言ってごめんなさいね。正しくは援助です。

今日も最後までお読みくださって、どうもありがとうございます。
心から感謝申し上げます。

      この記事を書いた人は、心理カウンセラー(公認心理師)の竹内成彦です。

心理カウンセラー(公認心理師)

1960年、愛知県名古屋市で生まれ育つ。1997年06月、地元愛知でプロのカウンセラーとして独立開業を果たす。カウンセリングルーム「心の相談室with」名古屋 の室長。臨床歴25年、臨床数15,000件を超える。講演・研修回数は800回、聴講者は10万人を超える。【上手に「自分の気持ち」を出す方法】など、電子書籍を含め、20数冊の本を出版している。カウンセリング講座などを開催し、カウンセラーを育てることにも精力を尽くしている。

竹内成彦の最近の記事