PC市場、24年は「AIパソコン」に期待 世界的回復を実現する3つの要因
2023年の世界パソコン出荷台数は2億5180万台にとどまったようだ。米調査会社のIDCがこのほど、市場分析結果をまとめた。
回復要因3つ、24年は3.4%増へ
推計によると、23年の出荷台数は前年と比較し13.8%減少した。22年の出荷台数が前年比16.6%減だったので、2年連続の2桁減少である。
この落ち込みは前例のない傾向と言えるが、今後の市場回復に寄与するともみられている。「短期的な課題はあるものの、様々な要因が好転し、24年以降回復する」(IDC)という。
その主な回復要因は3つある。
(1)買い替えサイクル:現在、24年の終わりまでに使用年数が4年を超える比較的古い法人向けパソコンが大量に稼働している。これとWindows 11への移行需要の高まりが重なり、買い替えが進むと予想される。
(2)AI(人工知能)の統合:パソコンへのAI機能の統合(AIパソコン、AI PC)が、買い替え需要のけん引役になるとみられている。AIパソコンは当初、特定の業務分野に向けて、24年に市場に投入される。だが、その後のユースケースの多様化とコスト削減によって、より広範な市場に広がると考えられる。
(3)消費者需要:上述した要因の総合的な影響により、消費者向けパソコンの回復と継続的な利用台数の増加が見込まれる。
これらにより、24年の世界出荷台数は前年比で3.4%増加するとIDCは分析する。
8四半期連続減も影響は比較的軽度
パソコン出荷台数は、22年1〜3月期から23年7〜9月期までの7四半期、いずれも前年割れで推移した。23年10〜12月期も落ち込んだとみられており、8四半期連続の減少が確実になった。
だが過去にはより悪い状況があった。12年4〜6月期から16年10〜12月期まで、19四半期連続で出荷台数が減少した経緯がある。これに比べれば、今回の一連の落ち込みは比較的軽度だ。
現に、ノートパソコンは新型コロナウイルス禍前の19年を上回る水準に達しており、コロナ禍特需が落ちついた今でも大幅増が続いている。
世界パソコン出荷台数は、23年から27年までの年平均成長率(CAGR)が3.1%に、27年の年間出荷台数が2億8500万台に達すると予想される。
出社と在宅を組み合わせたハイブリッド勤務や、法人向け製品の買い替え、高価格帯機種への需要増などがその要因になるとIDCは分析する。
生成AI、市場規模は24年に2倍超
一方、23年に突如ブームとなり、今後も成長が期待される生成AIについては、関連ソフトウエアやインフラ・ハードウエア、IT/ビジネスサービスを含む生成AIソリューションの市場が24年に2倍以上に拡大する見通しだ。
IDCによれば、23年におけるこれらソリューションへの支出額は194億ドル(約2兆8800億円)を超えたもようだ。
この市場は、23年から27年に86.1%の年平均成長率で推移し、27年には1511億ドル(約22兆4200億円)規模に拡大するとみられている。
23年におけるAIソリューション全体に占める、生成AIへの支出額は10.8%だった。この比率は27年に29%にまで拡大するとIDCは分析する。
筆者からの補足コメント:
最近は、新興勢力が次々と独自半導体を開発するようになり、インテル対その他多数の構図ができつつあるようです。例えば、米クアルコム(Qualcomm)や米エヌビディア(NVIDIA)、米アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)、米アムロジック(Amlogic)、台湾・聯発科技(メディアテック)など。そうしたなかでインテルも先ごろ新型プロセッサーを発表。これらに対抗する構えです。インテルは23年12月14日に開いたイベントで、AI PC用最新プロセッサー「Core Ultra」(開発コード名はMeteor Lake)を正式発表しました。AI処理に特化したNPU(ニューラル・プロセッシング・ユニット)を搭載する同社初のプロセッサーです。CPU(中央演算処理装置)やGPU(画像処理半導体)の処理能力を補完し、前世代製品と比較し、2.5倍の電力効率を実現するといいます。
※1ドル=148.41円で換算
- (本コラム記事は「JBpress」2024年1月11日号に掲載された記事を基にその後の最新情報を加えて再編集したものです)