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Bリーグを騒がせた一件からいい方向へ進むことに成功した千葉ジェッツ

青木崇Basketball Writer
オールジャパン初制覇(写真:アフロスポーツ)

いいことでも、悪いことでも、起こるには何らかのきっかけがある。

Bリーグが開幕して1か月あまり経過した昨年10月30日、千葉ジェッツ対アルバルク東京戦で乱闘寸前の小競り合いが起こり、両チーム合計11人の退場者を出した。こういった事態のないことが理想といえ、ボールのないところでも激しいコンタクトがあるのも、バスケットボールというスポーツの特性。「それがバスケットボールというものだ。フィジカルさの度合いが上がれば、選手たちもより熱くなってくるから、そういったことは起こりうる」というタイラー・ストーンの言葉は、多くの選手たちが感じていることを代弁するものだ。

千葉は組織としてこの一件を反省しただけでなく、ポジティブな方向へ進むことにも成功させた。それはオールジャパン初制覇という結果が証明しており、あるチームのコーチング・スタッフも「あれ以降まちがいなく変わった」と筆者に語っている。キャプテンの小野龍猛へ当時の状況について質問すると、次のような答えが返ってきた。

「きっかけになったかもしれないですね。でも、“あれを機に”というよりは、最初からもっとチームメイトを信頼しないといいチームにならないと思っています。あれで6(人)対7(人)くらいの試合をしたことで、もっとチームメイトがいなければダメなスポーツだと思いましたし、もっと信頼しなければいけない。あそこでフロアに出ている自分たちが、ヒルトン(アームストロング:小競り合いが起こる発端となった)を止めなければいけないというのもわかった部分なので、チームとして仲間を助け合おう、信頼しようというのが、まだまだ足らないですけど、少しばかり出てきたと感じています」

アメリカをはじめとした海外だと、このような乱闘寸前の小競り合いは決して珍しいことでない。しかし、控え選手がベンチから飛び出すことは明確なルール違反。退場者が多くなったのも仕方ない。とはいえ、コートでプレイしている選手たちが、このような事態に直面したチームメイトを助けようとする動きはあって然るべき。「チームメイトを守るために退場となった選手が出たというのは、彼がチームのために戦っているとも言える。あの一件がチームの一体感を高めることになった」とストーンが話したことに、筆者は驚きをまったく感じなかった。

マイケル・パーカーも「お互いを見ることで、みんなの存在がどういった意味を持つのかをわかったと思う。そういった小競り合いが起こることは決していいことじゃないけど、チーム内でプラスに働いたのは確か」と語るなど、千葉はチームの一体感を増すことで、ネガティブな一件をポジティブな方向に進むことへ変えたのである。島田慎二社長はアルバルク戦の一件が飛躍した一因と認めながらも、「一番のきっかけはヒルトンを欠く中、アウェー仙台(89ers)戦で連勝することができました。そこから、まとまりというか、どんなときでもいるメンバーで責任を持って、ベストを尽くすという雰囲気が高まったと思います」と、仙台戦での成果に大きな意味を感じていた。

オールジャパン後に再開されたB1レギュラーシーズン、千葉はここまで5試合を戦って3勝2敗。「毎試合、最大限の力を出そうとしてくる相手と戦わなければならない」とストーンが言うように、真の強豪として勝利を手にすることの厳しさを再認識している段階だ。しかし、チーム内で風通しのいい状態を構築できていることは、小野が「みんながフラストレーションをためながらやっていたと思う」と語った昨季のチームと大きく違うところ。「やはり筋が通っていないと、小さいことから大きいこと、また勝敗という結果までおかしくなるというのは学びました。昨年はすべてがバラバラで、ちぐはぐでした。今はクラブの考え、コーチの考え、現場の考えが同じ方向に向いていますのでストレスもなく、悪くても修正できていると思います」という島田社長の言葉は、一体感を増したチームとして、B1初代王者を狙える強豪へと成長している今の千葉を象徴するものと言えるだろう。

Basketball Writer

群馬県前橋市出身。月刊バスケットボール、HOOPの編集者を務めた後、98年10月からライターとしてアメリカ・ミシガン州を拠点に12年間、NBA、WNBA、NCAA、FIBAワールドカップといった国際大会など様々なバスケットボール・イベントを取材。2011年から地元に戻り、高校生やトップリーグといった国内、NIKE ALL ASIA CAMPといったアジアでの取材機会を増やすなど、幅広く活動している。

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