「ピクミン ブルーム」の花 「ポケモンGO」の「地域格差」を逆手に
任天堂の人気作「ピクミン」を題材にした新作スマートフォン用ゲーム「Pikmin Bloom(ピクミン ブルーム)」の配信が日本でもスタートして、およそ半月となります。「ポケモンGO」で指摘された「地域格差」の課題をカバーしつつ、ウオーキング時に発生するログ(履歴)について、個人情報に配慮しながらも巧みに活用しています。
◇ゲームファン ピクミン集めに熱中
「ピクミン」シリーズは、不思議な生物「ピクミン」を指揮して、さまざまな謎や仕掛けを解くゲームです。スマホ版の新作「ブルーム」は実際の地図情報を使った位置情報ゲームで、ウオーキングを促す仕組み。歩いてピクミンを増やし、「花」を道に咲かせていきます。
ピクミンにはさまざまな種類がいます。ピクミンを育てると、バッジや花をつけたり、ドングリや電車などのコスプレをします(ゲーム中では『デコ』といいます)。手慣れているゲームファンは、さまざまなピクミンを全部そろえたくなるわけです。
そして、そこまで熱中しないライトユーザーにも、別の楽しみがあります。
◇「人の流れ」「規模」が分かる
それは、人々の行動の可視化です。
「ピクミン ブルーム」では、ウオーキング時に花を咲かせることで、自分の通った道、他のプレーヤーが通った道が視覚的に分かります。「花を咲かせること」イコール、自分の行動履歴の公開です。同時にユーザーの活動規模も分かります。
SNSでは、新宿や渋谷などのあたり一帯が花畑になったゲーム画面がアップされています。主要駅やショッピングモールなど人の集まる場所は規模は違えど、花一面になります。道も幹線道路に花は集中し、コンビニエンスストアやマンションのにぎわいも反映されており、「人の流れ」「規模」が目に見えるのです。道一つとっても、細い路地に花が集中して、意外な発見があります。自分の知る町の新たなる一面が明らかになります。
一日を振り返る機能もあり、自分の行動履歴と歩数が表示されます。歩数計の機能はもちろんですが、自分のルートや発見物、そして簡単なコメント(日記)をつけて写真とともに記録できます。先週の自分、昨日の自分と比較しながら、コツコツ遊ぶのも楽しいでしょう。
◇冒険家気分で未踏の地に挑戦
すると逆の面白さも出てきます。
地方などに行くと、全く花の咲いてない道があちこちにあります。すると「この道は誰も通ってないから、あえて足を運んで花を咲かせよう」という考えも出てきます。冒険家が未踏の地に引かれて挑むのと同じような気分でしょうか。つまり地域に応じた楽しみがあります。
社会現象にもなった大人気の位置情報ゲーム「ポケモンGO」では、アイテムを得られる「ポケストップ」の「地域格差」問題がありました。「ポケストップ」は、都市部に集中する傾向にあり、地方のプレーヤーは「ポケストップ」不足からアイテムの確保に苦労しました。
ところが「ピクミン ブルーム」では、地方でもアイテムの確保に苦労しないため、無理なく楽しめます。もちろん都市部に有利なこともあり、すべてが平等とはいかないでしょうが、都市部と地方では風景も異なり、互いの地域を訪れたくなる要素もあります。花一面に慣れた都会のプレーヤーが地方に遠征すると、花のない「緑の平原」は新鮮でしょう。真っ白なキャンバスに絵を描くような気分です。
◇個人情報に配慮も
なお他プレーヤーに自分の歩いた場所が分かるのは「花を咲かせた場所」です。花を咲かせなければ、他プレーヤーに足跡は分かりません。個人情報への配慮もあるのです。
例えば、人口の集中する都市部では、自宅や近所で花を咲かせても特定はされづらいでしょう。一方で地方の一戸建て、特に「ポツンと一軒家」は要注意です。家の建つ場所、近所との間隔にもよりますが、自宅で花を咲かていると「この家で遊んでいる人がいる」とあからさまに分かってしまう可能性があります。リアルの情報と組み合わせると、さらなる特定も可能かもしれません。
もちろん、知人や友人がゲームをプレーし、花を咲かせたまま自宅に遊びに来るケースもあるし、逆に近所一面に花を咲かせてしまうこともできますが、気になる人はいるでしょう。その場合は、「歩行・花植え」の履歴を削除したり、自宅や近所で花を咲かせるのを避けるやり方もあります。
位置情報ゲームは仕組み上、居住地によっての有利不利があったり、行動が第三者に推定されやすくなる面は確かにあります。しかし何事にも有利不利はつきものですし、情報の扱いはゲームに限らず気を付けた方が良い話です。うまく使えば、日常生活をより楽しくしてくれるでしょうし、ログを活用することでゲームにもまだ可能性があることを教えてくれます。
新型コロナウイルスの対策をしながら、ウオーキングを楽しんではいかがでしょうか。私も、ピクミンを連れて山登りを楽しみ、何もない場所に花を咲かせたいと思います。
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