きょうから新潟「トキめきおじさん」というニュース
わたくしごとで恐縮ではございますが、今日から新潟県の「えちごトキめき鉄道」という会社の代表取締役社長に就任いたしました。
えちごトキめき鉄道は北陸新幹線の延伸開業により、それまでの信越本線(妙高高原-直江津)と北陸本線(直江津-市振)を地元が引き受けた並行在来線と呼ばれる第3セクター鉄道。新潟県の妙高市、上越市、糸魚川市にまたがる全長97kmに及ぶ路線で、世界的リゾート地である妙高高原から上杉謙信公の歴史豊かな高田を通り、新潟県の鉄道発祥の地である直江津でJR線と北越急行線に連絡をし、ヒスイを産する古代のロマンあふれる糸魚川を結ぶ観光コンテンツがたくさん存在する地域を走ります。
沿線人口は25万人以上いますので、朝夕をはじめ地域の足としてもしっかり機能している路線です。
えちごトキめき鉄道は2つの路線から成り立っています。
旧信越線区間は妙高山の残雪の形から「妙高はねうまライン」(5月ごろに見られる残雪が馬が跳ねているように見える)、旧北陸本線区間は「日本海ひすいライン」と名付けられていますが、「えちごトキめき鉄道」という会社名も、2つの路線名も地域の皆様方からの公募により名づけられたもので、その経緯を考えただけでも地域の皆様方に愛されている鉄道であることがわかります。
その魅力的な鉄道を引き受けるという大役を仰せつかりました筆者としては、地域に愛される鉄道はもとより、地元の皆様方とともに、この鉄道を観光路線として全国に、あるいは世界に情報発信していくことが使命であると考えていますが、ありがたいことにこのトキめき鉄道には、すでに心ときめくような素敵な観光列車「雪月花」が走っています。
▲えちごトキめき鉄道の観光列車「雪月花」 (会社のパンフレットより)
この「雪月花」をさらに磨きをかけて、魅力的な観光商品にしていくのが社長である筆者に課せられた課題になりますが、そのためには地元の人々の協力が必要になります。なぜなら観光客というのは地域との触れ合いを求めていらっしゃるわけですから、鉄道車両がどんなに立派であっても、地域との触れ合いが感じられなければ単なる箱ものに過ぎません。今の時代は「もの」ではなくて「こと」を買う「こと商品」を作ることが地域に求められているわけで、それが非日常体験を味わう観光という商品の醍醐味だからです。
並行在来線という問題点
えちごトキめき鉄道の路線図をご覧ください。
(下記杉山淳一さんのニュースより参照)
緑の路線が「妙高はねうまライン」、青の路線が「日本海ひすいライン」ですが、新幹線は長野県を抜けると新潟県の西の端をかすめて富山県へ向かっています。
北陸新幹線が金沢まで延伸された際に、新潟県区間は「えちごトキめき鉄道」になりましたが、長野県区間は「しなの鉄道」に、富山県区間は「あいの風とやま鉄道」、石川県区間は「IRいしかわ鉄道」とそれぞれ新しい鉄道会社として誕生しました。
「新幹線ができたのだから、それまでの在来線は地元がやりなさい。」というのが国とのお約束ですが、長野県も富山県も石川県も新幹線、在来線ともに県庁所在地を通過しています。今後新幹線の延伸が予定されている福井県区間も県庁所在地を通ります。ところが、新潟県区間だけは県庁所在地を通っていないというのが北陸新幹線です。県庁所在地を通っていれば多くの地域需要が期待できますが、えちごトキめき鉄道だけはそれが期待できないという路線なのです。
では、どうするか?
今の時代、無い物ねだりをしても始まりません。今あるものをどうやって上手に活用するかが地方創生のテーマであり、それが筆者のポリシーです。県庁所在地を通っていないということは、それだけ沿線は自然の宝庫ということで、観光需要が眠っている。
筆者がえちごトキめき鉄道の社長を「やってみよう!」と考えたのはこの部分です。
還暦を目前にしたおじさんが残りの人生を賭けてチャレンジする相手としては、実におもしろそうだと思いませんか。
なにしろ、眠っているものを掘り起こすのですから。
▲本日の記者会見の会場を始まる前にこちら側からパチリ。(笑)
▲初代の嶋津忠裕社長(右)からバトンタッチです。(会社提供)
並行在来線という会社が持つ様々な問題点や置かれている環境は大変厳しいものがありますが、そういう内情に関しましては今後、少しずつ白日の下にさらしていくことで改革を促そうと考えておりますが、とりあえず今日のところは、「トキめきおじさん」になりましたという筆者自身の身上変更のニュースでございます。
名前負けしないように、ワクワクドキドキ、心ときめくような鉄道にしてまいりたいと考えておりますので、皆様どうぞよろしくお願い申し上げます。
いすみ鉄道からえちごトキめき鉄道へ、鳥塚亮新社長に意気込みを聞いた。
▲筆者がインタビューを受けたライター杉山淳一さんのニュースです。
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