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ウクライナのカホフカ・ダムが破壊されドニプロ川が氾濫

JSF軍事/生き物ライター
ウクライナのゼレンスキー大統領の投稿動画より破壊されたカホフカ・ダム

 6月6日、ウクライナのカホフカ水力発電所のダムが破壊されました。ドニプロ川を堰き止めていたカホフカ貯水池の水が流れ出して水位が急上昇し、下流は氾濫の危険性があります。ウクライナ軍南部作戦管区は「ダムはロシア軍によって爆破された」としています。ゼレンスキー大統領はダムの破壊をロシアのテロ行為だと非難しています。

Російськими окупаційними військами здійснено підрив Каховської ГЕС.

「カホフカ水力発電所はロシア占領軍によって爆破された。」

出典:Оперативне командування "Південь"

 一方ロシア側は当初ノヴァ・カホフカのレオンチェフ市長(ロシア側が任命)がダムの決壊を否定(国営RIAノーボスチ)。しかし暫くしてからロシア側はダムの決壊を認めました(国営タス通信)。レオンチェフ市長は現在はダムの破壊をテロ行為だと非難しています。

 現状では双方が「相手が破壊した」と非難し合っている状態です。一部ではダムの上の道路部分の爆破で蓄積していたダメージで自然崩壊した説も出ていますが(タス通信は「決壊時は静かだった」と報告)、一方では現地時間の「午前2時35分に爆発音が聞こえた」という真偽不明のSNSのテレグラムでの報告があり、破壊の経緯はまだ確定的な情報がありません。前日までの時点で既にダムの損傷が進行していた形跡(道路部分のコーナーが崩落)の衛星写真の報告もあります。

 なおダムの破壊は国際人道法のジュネーブ諸条約第1追加議定書(1977年)の第56条で基本的に禁止されています(ただし特定条件での例外規定はある)。今回の状況では意図的な破壊だった場合は攻撃者の条約違反行為になるでしょう。自然崩壊だった場合は現時点でのダムの管理者であるロシアの責任が大きくなります。

カホフカ・ダム、破壊前と破壊後の衛星写真(Planet Labs)

出典:ラジオ・フリー・ヨーロッパ宇語版「Радио Свобода (ラジオ・スヴォボダ)」より、Schemes(Схеми)プロジェクト。

軍事/生き物ライター

弾道ミサイル防衛、極超音速兵器、無人兵器(ドローン)、ロシア-ウクライナ戦争など、ニュースによく出る最新の軍事的なテーマに付いて兵器を中心に解説を行っています。

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