3位決定戦の相手は、アメリカ。育成年代の集大成となるラストマッチでヤングなでしこは輝くか(1)
U-20女子ワールドカップは、今日、決勝と3位決定戦が行われる。U-20日本女子代表は、3位決定戦でU-20アメリカ女子代表と対戦する。キックオフは現地時間16:00(日本時間15:00)。
チームの立ち上げ当初から、今大会での世界一を目標にしてきたU-20日本女子代表の選手たちにとって、29日の準決勝でフランスに敗れたことがどれほどのショックだったかは想像に難くない。その点では、グループリーグ第2戦のスペイン戦の敗戦よりも、心の切り替えは難しいかもしれない。
だが、この難しい局面を乗り越えることが、選手たちにとって大きな経験となる。
日本に限らず、今大会に出場している選手たちには、世界一という目標の先に、さらなる大きな目標がある。それは、年齢制限のないA代表に選ばれ、国を背負って活躍するという未来だ。育成年代の最後の大会である今大会を終えると、さらに激しい競争が待っている。
【世界ランク1位。アメリカの強さの理由とは?】
女子サッカーにおけるアメリカの存在は、日本にとって特別だ。
年齢制限のないA代表は、2011年のドイツワールドカップ以降、2012年のロンドンオリンピックと2015年のカナダワールドカップでも決勝でぶつかり、世界の頂点を競いあった。
3位決定戦に向けた公式会見では、高倉麻子監督とキャプテンの乗松瑠華が壇上に上がった。
高倉監督は「アメリカは日本がずっと目指して来た特別なチーム」と、相手へのリスペクトとともに、この一戦への高いモチベーションを見せた。
乗松も、「小さい頃から、いつかワールドカップの舞台で対戦したいと思っていた」と話し、メダルへの力強い意気込みを語った。
アメリカは世界一の女子サッカー競技人口を誇る国であり、世界ランキングは1位。トップであり続けるため、育成にも並々ならぬ力を入れている。
アメリカの(サッカー協会に登録している)プレイヤー数は160万人を超えると言われており(日本は約5万人)、とにかく裾野が広い。そして、多くの若い選手たちが才能を磨く場として、大学リーグが充実している。日本は育成年代からクラブチーム出身の選手が代表に選ばれて活躍するが、アメリカは大学チーム出身の選手が多い。
大学のリーグが充実している理由は、「スポーツ大国」アメリカの制度面からみてとれる。大学スポーツは特に、奨学金制度が充実しており、将来有望なアスリートは授業料から家賃に至るまで保証される仕組みがある(返還義務はない)。また、大学ごとにチームを持っており、女子サッカーも2年制大学から4年制大学まで複数のリーグがある。その中でも、最もレベルが高いNCAA(4年制大学)ではDivision1からDivision3までリーグがあり、国内の大学のチーム数は1000を超える。
また、各大学は豊富な資金力で、GPS(※1)やハート・レート・モニター(※2)などの最新テクノロジーを導入し、各選手の走力や戦術的な面を客観的に分析し、指導にも活かしている。
アメリカ女子代表には、体格の良さに加え、スピードやパワーなどの運動能力が高い選手が多いのが特徴だ。その特徴を活かした、縦に速いサッカーが伝統的なスタイルである。だが、そのような最新テクノロジーも活用し、近年はテクニックのある選手の育成にも力を入れ、より戦術に幅をもたせている。2011年のワールドカップ決勝で日本に敗れた後、日本のサッカーを分析し、良い面は取り入れ、敗戦の教訓を大事にしている。
だが、育成なら日本も負けていない。10月に行われたU-17女子ワールドカップでは2大会連続の決勝進出の快挙を果たし、今大会では2度目のベスト4入り(アウェイの大会では初)をした。
今日の3位決定戦に勝ち、メダルを獲得することで、日本女子サッカーの育成はさらに上のステージを目指すことができる。その意味でも、重要な一戦となる。
(※1)走行距離、走行ルート、速度などを分析し、戦術面に応用できるシステム
(※2)最大心拍数をもとに、様々なデータを分析するシステム
【特徴が違う2チームの戦いに】
この試合も、フランス戦同様に、サイドの攻防は見応えのあるものになりそうだ。
アメリカの前線に張るMallory Pugh(背番号9)は、現在18歳で、A代表にも選ばれている逸材だ。6月のなでしこジャパンのアメリカ遠征の際にもアメリカ代表の一員として出場していた。
また、アメリカが準決勝で北朝鮮と対戦した試合で印象的だったのが、ボランチのKatie Cousins(背番号20)だ。今大会のアメリカは平均身長が169.3cmと高さもあるが、その中では155cmと小柄な選手である。だが、足元のテクニックと展開力を活かし、攻守にわたって存在感を発揮していた。
左サイドのEmily FOX(背番号16)はスピードがあり、トップのAshley SANCHEZ(背番号18)とのコンビネーションから、左サイドで何度か有効な突破を見せていた。
日本は組織的な守備と、攻守の切り替えの速さを活かしたパスワークで、アメリカのカウンターに注意しつつ、ゲームを優位に進めたい。
【集大成となるラストマッチ】
日本は、ここまで5試合を戦ってきたが、1試合ごとに目に見える形で成長を見せてきた。
グループリーグ第2戦ではスペインの圧力に対し、日本らしいサッカーを見せられずに敗れたが、その教訓を生かし、第3戦のカナダ戦では流れるようなパスワークで圧倒した。準々決勝のブラジル戦では、時間をかけて対策を練ってきた強い個への対応を発揮し、3点を奪って勝利した。
しかし、フランスとの準決勝では、終始ボールを支配しながらも、最後の壁を突破することができず敗れた。チャレンジと修正を繰り返し、ここまで来たチームが、アメリカとのラストマッチでどのようなサッカーを見せてくれるのか、楽しみである。
U-18日本女子代表として、チームが立ち上がってから2年以上が経った。このアメリカ戦が、このチームで戦う最後の試合となる。日本が積み上げてきたサッカーを土台にして、勝利への執念を遺憾なく発揮して欲しい。
※U-20ワールドカップ3位決定戦(U-20アメリカ代表戦)は本日(12月3日)、日本時間15:00にキックオフ(日本時間14:50~18:00に、フジテレビNEXTで生中継)。
に続く