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女子バスケは金メダルへ王手!日本で話題にならないアジア大会の韓国・北朝鮮”合同コリア”の現状

金明昱スポーツライター
アジア大会開幕式で合同入場した韓国と北朝鮮の選手団(写真:松尾/アフロスポーツ)

 インドネシアで開催されている第18回アジア競技大会。連日、日本でもテレビ放送され、熱戦の様子が伝えられているが、韓国と北朝鮮の合同チーム“コリア”が今大会も出場しているのをどれほどの人が知っているのだろうか。

 今大会、合同チームで出場している競技は、女子バスケットボールとカヌーのみ。今年2月の平昌冬季五輪の時に大きくクローズアップされた女子アイスホッケーのような盛り上がりはなく、やはりアジア規模の大会だと、どうしても関心は薄れていると言わざるを得ない。

 とはいえ、合同コリアはここまでカヌーで金メダル1、銅メダル2つを獲得しているのだから驚きだ。

 カヌー・スプリントの女子トラディショナルボート500メートルで金メダル、同200メートルは3位で銅メダルを獲得した。さらにカヌー・スプリントの男子トラディショナルボート1000メートルで銅メダルを獲得。

女子バスケで金の可能性

 カヌーのトラディショナルボートは、1艇12人で構成され、漕ぎ手10人、太鼓手1人、舵取り1人で行う競技。それぞれ役割があり、漕ぎ手はパドルを使って船を前に進めるので一番わかりやすいだろう。

 太鼓手は文字通り、太鼓を使いレース乗員の漕ぐタイミングや早さをコントロールする。そして、舵取りは船尾で針路をコントロールする。

 これだけの人数が息を合わせて結果を残すには、最低でも1年はかかると言われており、“にわか”の合同チームでメダルを獲得するのは難しいと予想されていた。それでも今大会に向け、韓国と北朝鮮の選手は約1カ月、合同練習に励みメダルを獲得した。

 今大会、メダルは韓国、北朝鮮ではなく、「コリア」として集計されている。ここまで3つ獲得したわけだが、最後に金メダルの可能性を残している。

それが女子バスケットボールの南北合同チーム。明日9月1日に中国と決勝戦を戦う。ちなみに、準決勝で日本が中国に勝っていれば、日本との決勝戦だったのだが……。

女子バスケエースは北朝鮮選手?

 女子バスケの合同チーム「コリア」は全12人で、韓国選手が9人、北朝鮮選手が3人。7月には平壌で開催された“南北統一バスケットボール”で練習と試合をこなしており、事前に顔合わせできていた部分は大きい。

 平昌五輪の女子アイスホッケーの合同チームのように“急造”でなかったのは幸いだろう。

 実際、「コリア」のバスケットボール選手の割合は韓国のほうが多いが、チームのエースは北朝鮮のロ・スギョンだった。

 身長182センチの長身で、1次リーグから大活躍。インドネシア戦で22得点(108-40)、台湾戦で32得点(85-87)を挙げるなど、攻守でチームになくてはならない存在になった。

 4年前の仁川アジア大会では韓国が優勝しているが、ここに北朝鮮のエースが入ったことで、戦力が上がったのは間違いない。

さらにインドネシアに104-54、カザフスタンに85-57で勝利し、準々決勝ではタイに106-63、準決勝では1次リーグで敗れている台湾に89-66で勝利して、雪辱を果たした。

WNBA韓国選手の活躍

 ただ、一度敗れた台湾に勝利できた要因について、スポーツ紙「スポーツ朝鮮」は「WNBA(米女子プロバスケットボールリーグ)でシーズンを終えてチームに途中合流したパク・ジスの活躍が大きい」と伝えている。

 身長198センチのパク・ジスは、韓国人選手としては2人目のWNBA選手で、現在はラスベガス・エイシズでプレー。高さがなかった「コリア」の弱点を埋めるかのように、パク・ジスは台湾戦ではリバウンドを制して勝利に貢献した。

 「スポーツ朝鮮」も「パク・ジスがゴール下にいることで、これまで守備にも気を使わなければならなかった北朝鮮のロ・スギョンのプレーの幅が広がった」と報じていた。

 試合後、ロ・スギョンは「ジス選手とはすごくプレーが合う。守備の時に背の大きな相手がいるととても脅威だったけれど、ジス選手が入ってからはすべて防いでくれるので楽にプレーができた」とコメントしている。

合同チームでも結果が必要

 南北の合同チームを結成するうえで、ありがちなのは「合同チームを結成することに意義がある」、「スポーツを通して友好ムードを作る」という論調だ。

 確かに韓国メディアにも、そうした報道が目立つが、合同チームを結成するならば、しっかりと結果を残すことも大切だと思う。

 今回のカヌーでのメダル獲得は一つの成果で、女子バスケットボール合同チームのように、決勝まで進むほど戦力が上がるのも、団体競技としては理想の形かもしれない。

 今年の世界卓球では合同チーム「コリア」が、大会途中で日本代表と対戦したが、その形に賛否両論があったのは記憶に新しい。なのに、今回のアジア大会で卓球は韓国と北朝鮮は別々で出場している。

 もちろんエントリー期間が過ぎていたことや準備不足の面もあるだろうが、そうしたところ「なぜ大会ごとに、ついたり離れたりするのか」と、突っ込みたくなる人がいてもおかしくない。

 “合同チーム”で結果を残せる競技は、現状ではそこまで多くないかもしれない。それこそ議題に上がっている選手選考の問題や南北選手の合同での練習環境の確保など、問題は山積している。

 それでも、2年後の東京五輪までには、世界の人たちが納得いく形で、それらを少しでも解決してくれると信じたい。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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