「母の日」は花よりだんご? 中国人が家族と食事することにこだわる理由
今日(5月9日)は「母の日」。コロナ禍の日本では、母親に会えないので、電話やメールをしたり、カーネーションなどのお花を送ったりした、という人もいるでしょう。コロナがほぼ収束している中国では、ここ数年、日本以上に「母の日」を祝う人が増えています。
「母の日」はSNSで多数の投稿
中国のSNSを見ていたら、「母親節快楽!」(母の日おめでとう!)というメッセージとともに、家族そろってレストランで昼食を取っている写真がたくさん投稿されていることに気づきました。
また、花束をアップで撮った写真や、母親と自分とのツーショット写真、母親の若いときから現在までの写真を数枚並べる人も多く、中国ならではの「母親愛」がひしひしと伝わってきます。
中国で特徴的だと思うのは、中高年の男性が、自分の母親と2人で撮った写真をたくさん投稿していること。日本でもそういう人がいないわけではないと思いますが、中国人の男性は恥ずかしがらず、ダイレクトに、母親への愛情を思いっきり示す人が多いと感じます。
そんな中国人が男女問わず「母の日」に行っていることといえば、母親を含め、家族とともに食事をすること。
お花やプレゼントを贈るだけでなく、一緒に食卓を囲むことに、とてもこだわります。
そのため、「母の日」の数日前、あるいは人気店だったら、数週間前にレストランの席を予約する人も少なくなく、レストランのほうも、「母の日スペシャルメニュー」を多数用意しています。
日本でも「母の日」に母親と一緒に外食する人はもちろん大勢いますし、自宅でごちそうを作ることもあるでしょうが、中国や香港、台湾など、中華圏のほうが、モノよりも「食事」にこだわる人が多いのではないか、と感じます。
香港で体験した「母の日」の混雑ぶり
数年前、「母の日」の前日に、たまたま香港に到着したことがありました。駅からホテルまでタクシーに乗ったところ、やけに渋滞しているので、運転手さんに聞いてみたところ「そりゃ、明日が『母の日』なので、どこも混んでいるんですよ」と教えてくれて、びっくりしました。
「母の日」のために買い物に出かけている人や、食事に出かける人が多いため、道路まで渋滞しており、毎年の恒例だというのです。
その日の晩、友人たちと食事したのですが、私たちが行ったレストランも人気店だったため、案の定、満席でした。
友人がかなり早めに予約してくれたため、私たちは何とか座席を「確保」することができたのですが、もしそうでなかったら、「母の日の前日なんて、予約困難だ」と聞きました。
ギリギリに予約しようとした人は「母の日」当日に評判のレストランの予約ができないため、仕方なく1週間先の週末まで食事会を延期するしかない、というのです。あるいは、人気のないレストランに母親を案内するハメになってしまい、母親や家族に対して面目がなくなるとも聞きました。
香港は狭く、商圏が限られているので、余計にこのような現象が起きるのでしょうが、日本ではそこまでして「母の日」のためにレストランを予約するという話は聞いたことがなかったことから、中国人の食事に対するこだわりぶりや、「母の日」の重要度を改めて実感しました。
共に食事することで家族の絆を深める
中国語には「民以食為天」(食べることは最も大事)ということわざがあります。このことわざの通り、中国人はとにかく食事にこだわります。
家族と一緒の食事が最も大事ですから、「母の日」や大みそか、誕生日などに集まって食事をしますが、それだけでなく、友人や自分ひとりだけのときも、食事は優先事項です。
上海の会社員の友人は、「残業するときには、いったんオフィスがあるビル内の飲食店に行って食べてからデスクに戻ったり、デリバリーで食事をとり、お腹を満たしてから、再度仕事をします」と話していました。
彼らには、日本人のように、空腹でもとにかく先に仕事をしてしまおう、という考え方はあまりありません。仕事よりも、会議よりも、食事をすることを優先するのです。そのほうが、あとで落ち着いて仕事ができると話していました。
もちろん、個人差がありますので一概にはいえませんが、SNSに投稿されたたくさんの「母の日」の食事の様子を目にすると、彼らにとっての優先事項は何か、パワーの源はどこにあるのか、を感じることができるような気がします。