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(続)ステップ論じゃなくて、いきなり世界に飛び出そう!

岩佐大輝起業家/サーファー

■失敗するために最初の一歩を踏み出してみる

「脱ステップ論」はfacebookで3,000シェアの大反響。やっぱりみんな世界に飛び出したい気持ちはあるが最初の一歩を踏み出せないことが分かった。こうなったら「失敗するために最初の一歩を踏み出してみる」作戦でいこう。

知人の女性からメッセージをいただいた。許可を受けてここに共有する。

岩佐様

「ステップ論じゃなくて、いきなり世界に飛び出そう!」

を拝見し、とても強く共感しました。

でも、情けない話でお恥ずかしいのですが、

実際に何かを始めようとすると、

周りの人に受け入れてもらえるのか、

同僚に迷惑をかけてしまうのではないか、失敗したらどうしよう、など、

いろんなことを考えてしまい、結局動けません。

岩佐さんご自身や、GRAのスタッフの方々は

いつもどのようにして第一歩を踏み出しているのですか?

また動き出したことで失敗してしまったことなどありますか?

28歳(女性) 会社員

凄くわかる。個人としても組織人としてもわかっちゃいるけど前に進めない。失敗が怖い。どうしても怖い。もちろん私も怖い。だけど、怖いからって挑戦しないと、永遠にやりたいことにはたどり着けない。自己弁護のための能力開発(例のTOIECで800点を超えてからやりはじめよう)などのステップ論に逃げ込んでしまうのが落ちだ。じゃあどうする?ここで必殺技を紹介する。

「失敗するためにまず最初の一歩を踏み出してみる。」

つまり、どうやったら失敗できるかを最初に考えるのだ。こんなことを書くと、アホかと思われそうだけど大マジだ。成功することは一切考えない。どうやったら失敗できるかだけを必死に考える。それでも挑戦しないよりは全然いい。

■なぜ失敗することが大事なのか

ビジネスでも勉強でも絶対にうまくいく成功法則は一つもないが、唯一近いものがあるとしたらPDCA(計画→実行→効果測定→改善)の高速回転をひたすらに繰り返すことだ。つまり失敗を許容しながら高速フィードバックを繰り返すやり方だ。皮肉なことに唯一の成功法則フレームワークのPDCAを使うためには失敗を許容する力が必要なのだ。成功のために失敗するわけだから、まずは失敗することを当たり前だと思う覚悟が大事だ。

■失敗を繰り返すことが大事

PDCAは本当に基本的だけど、素晴らしいフレームワークだ。だけど、万能ではない。それはスピード。つまり計画して実行してその結果を分析し、次の打ち手を考えて、それを活かして次の計画を立て、実行するころにはその計画は古臭くなっていることが最近よくある。

情報のトラフィック量とスピードがあまりにも早くて、アイデアはあっという間に2番煎じになって陳腐化するからだ。最近ではそのスピードはもはや許容できる範囲を超えてしまう場合が多い。だったらどうするの?唯一の必勝パターンであるPDCAも使えないとしたら・・・。

■「PDPDPDCA」で行こう!

ひと時にはひとつの事に集中したほうが成果は最大化するというのはいかにもそれっぽいけど、必ずしもそうじゃない。今年はこれ、来年はアレってやっていたら、あっという間に寿命が来る。特にリードタイムが長いビジネス(例えば農業)などは人生80年で30歳からスタートしたとしてもたったの50回しかチャレンジできない。

道を究めた時には片足が棺桶の中だったりするかもしれない。だから私たちはPDPDPDCA作戦でいこう!つまり、一度に3発くらい玉を発射してみる。失敗リスクは3倍、成功確率も3倍、だけど唯一有限な皆さんの1年を3倍楽しめるのがPDPDPDCA作戦だ。とにかく人生1回、時間だけは取り戻せない。施策はクイックに3発同時発射。同じ時間で成功も失敗も3倍できる。これは楽しい。失敗するためにまず最初の一歩を踏み出してみる。くらいの感覚でいい。

唯一有限なのは時間。大切なのは単位時間あたりにどれだけ多くの玉を打ちこめるかだ。
唯一有限なのは時間。大切なのは単位時間あたりにどれだけ多くの玉を打ちこめるかだ。

どうだろう、少しは心が軽くなっただろうか。そうそう、気楽にやっちゃっていいの。ロジックをつめつめにするのも大切だけど、感じまくることはもっともっと大切。

具体的な例を上げてみる。私たちの農業ビジネスで言えば、ある品種を今年は植えてみる。ダメだったから来年違うのを植えるなんて繰り返していたらどうなる?登録されているイチゴの品種だけで250品種。2世紀半だ。2世紀半もあれば品種は今の10倍以上になるだろう。永遠に答えは見つからない。無謀にも昨年GRAは10品種近くは作付した。ほとんどがダメ品種。だけど光り輝く3品種が1年で3品種見つかった。

■組織の中にいながら新規事業に挑戦するにはどうすればいいか

プライベートの挑戦ならともかく、組織の中でどうやって失敗を許してもらうのか。あるいは新しい挑戦を許してもらえるのか?

ここで私が東京で経営する会社で働く25歳のKさん(男性)と24歳のMさん(女性)を紹介する。二人は実にうまく新規事業に取り組んでいる。

会社の伝統的本流事業から外れた新規事業に対する風当たりは厳しい。会社が行き詰っていて活路を見つけ出さなければならないようなタイミングでも新規事業を起こすのは大変だ。しかもすぐにキャッシュを生まない活動は、全社の賛同はなかなか得られない。だからと言って、想いだけで突っ走っては全然だめだ。それを上司にぶつけて玉砕しては元も子もない。では具体的にどうするか。

■潜水艦方式でいこう

先に紹介した二人は自分たちが取り組みたい新規事業に対してコアタイムを使うのではなく、早朝の1時間半をそれにあてている。おまけに私の時間も週に1回早朝1時間半確保して毎週3人で朝会をやっている。既存事業をまったくおろそかにすることなく虎視眈々と新規事業を考える。つまり潜水艦方式(サブマリーン作戦)を実行している。それもオフィスではなくカフェやファミレスでワイガヤと楽しくやっている。始業時間までには完全に終わるこのイベントを私たちは「クレイジー朝会」と呼んで大切にしている。

私も二人に突き上げられるから、眠いけど朝早く起きていく。彼らとはもう半年以上、朝会を続けてきたが、どれだけ新しいアイデアや事業が出てきただろうか。数えきれないくらいだ。

私じゃなくても、普通の上司なら熱意をもって新規事業にトライする若者を放ってはおかないだろう。

二人には思いきって挑戦してもらうようにしている。ステップ論を押し付けて簡単な仕事ばかりやらせていたら、彼ら彼女らの成長スピードを奪ってしまう。だから失敗してもいいから思い切って難しく面白そうな仕事をわたす。

不思議と「絶対にうまくやれよ。」と言って仕事をわたすより、「失敗してもいいから思い切ってやれ」と任せた方がうまくやってくれることが多い。心のリミッターを解除してあげられるから、潜在能力を100%使ってくれる。結果的に思い切った施策と成果をもたらしてくれている。

彼らが何か特別なことをしたかといったら全くそうではない。彼らは社内の制約を守り、しかも毎月の数字(営業予算)を達成しながら、かつ新規事業に取り組むための工夫として「クレイジー朝会」を続けている。誰からの押しつけでもなく自分自身で勝ち取った結果だ。企業の中で起業家のように生きる方法もいくつもある。

さあ、今すぐみんなで挑戦をスタートさせよう!

起業家/サーファー

1977年、宮城県山元町生まれ。2002年、大学在学中にIT起業。2011年の東日本大震災後は、壊滅的な被害を受けた故郷山元町の復興を目的にGRAを設立。アグリテックを軸とした「地方の再創造」をライフワークとするようになる。農業ビジネスに構造変革を起こし、ひと粒1000円の「ミガキイチゴ」を生み出す。 著書に『99%の絶望の中に「1%のチャンス」は実る』(ダイヤモンド社)、『絶対にギブアップしたくない人のための成功する農業』(朝日新聞出版)などがある。人生のテーマは「旅するように暮らそう」。趣味はサーフィンとキックボクシング。

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