仔馬も誕生!「黄金の馬」と呼ばれるアハルテケとは?日本に発足した生産チームの現状を追う
アハルテケとは?
東京競馬場の最寄り駅である京王線・府中競馬正門前駅の正面右手に金色の馬の像があるのはご存知だろうか?これはサラブレッドではなく、アハルテケという品種の馬を模った像だ。
この"アハルテケ"を冠名に迎えたアハルテケステークスが6月22日、東京競馬場で行われる。条件は3歳以上オープンでダートのマイル戦だ。
アハルテケステークスは、JRAでは2009年より始まり今年で11回目を迎える。最初の2年間は準オープン(1600万下、現・3勝クラス)で行われており、3年目よりオープン競走となっている。過去の勝ち馬には、マイルチャンピオンシップ南部杯(JpnI)を制したベストウォーリアーがいる。
アハルテケは見た目はとても美しいが、内面は砂漠など少々過酷な状況の中でも粗食で耐え抜くだけのたくましさを兼ね備えている。
この、ダート王を狙うステップレースの名の由来に用いられたアハルテケについて少し語らせていただきたい。
「生涯をかけてアハルテケの純血種を増やしていく覚悟」
アハルテケとは、サラブレッドとは異なる馬の品種の名である。トルクメニスタンが原産とされ、「現在、世界では約3500頭しかいない希少種」(日本アハルテケ協会)という。
そして、実はそのアハルテケの純血種を増やすことを目的とした試みが日本でも始まっていた。5月末にはその生産チームではじめて仔馬が生まれている。
生産チームのリーダーである長谷川氏は「生涯をかけてアハルテケの純血種を増やしていく覚悟」でこの取り組みを一から立ち上げた。そして、その決意はようやくこの春、実を結んだ。
この仔馬は牝馬で「ファミリア」と名付けられた。毛色はまだ全体的に白っぽいが、おそらく将来は三白(四本の脚のうち、三本の脚先が白いこと)になるであろう脚の毛色の違いが見受けられた。瞳は両目とも虹彩の色素が少なく黒目の部分が青色に見える「魚目(さめ)」である。最近の競走馬ではシロニイが右目の片方だけが魚目である。
いろんな"黄金"が個性的に輝く
アハルテケはサラブレッドと比べると短毛で、耳のかたちが細長いのが印象的だ。額は隆起がみられ、皮膚は薄く、競走馬でいう"垢ぬけている"印象を与える。その肌の質感は、犬のグレイハウンドとよく似た印象を受けた。
長谷川氏によると、「アハルテケのたてがみや尾の長さはとても個体差がある」そうだ。
「アハルテケは、性格も温和で人間にも従順です。毛が細いので光の当たり具合によってキラキラと輝くことから"黄金の馬"と呼ばれています。ただし、黄金といっても、黄色っぽいイエローゴールドからシャンパンゴールド、ピングゴールドといった様々な色合いがありますね。」(長谷川氏)
さらにいえば、その馬体の輝きは太陽光の当たり具合によっても変化する。早朝5時ごろ、のぼったばかりの太陽の陽を浴びたアハルテケはベージュ味をおびた柔らかい光りかたをしていが、日が昇るにつれ、その光は鮮やかなものに変わっていった。
この美しさに魅せられ、かつてはトルクメニスタンの国主がアハルテケを国馬とし、国章の絵柄にも用いられていることは世界的に知られている。
日本に期待されるアハルテケの純血種の繁栄
アハルテケはかつてはサラブレッドとの交配も行われたこともあるというが、長谷川氏は異種交配には賛同していない。ロシアにあるアハルテケの血統を管理する団体を主導に、アハルテケの純血種を守りながら頭数を増やしていく方針で取り組んでいる。そして、長谷川氏が率いるアハルテケの生産チームからは、この秋にもう1頭、アハルテケの仔馬が生まれる予定だという。
「日本は衛生面でも優秀なので、世界のアハルテケの血統を管理する団体からは日本での純血種のアハルテケの生産に強く期待を寄せていただいています。今後もアハルテケたちの健康を第一に考えながら、異種交配のないアハルテケの生産に真摯に取り組んでいきます。」
血を紡ぐ作業はとてつもなく長い時間の中で育まれていく。日本で始まったばかりのアハルテケの純血種の生産を末永く見守りたい。