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レベルダウン著しいJリーグとレベルアップ著しい日本代表。アンバランスに支配される日本の行く末

杉山茂樹スポーツライター
U-22日本代表対U-22アルゼンチン代表(写真:岸本勉/PICSPORT)

 J1リーグ。2位の横浜F・マリノスがアルビレックス新潟に引き分け、首位を行くヴィッセル神戸が名古屋グランパスに勝利したため、優勝の栄冠は最終節を待たずに神戸の頭上に輝いた。

 勝ち点差2で迎えた試合だった。両者が競いあうスリリングな展開になっていたことは確かである。しかし世の中の反応はいまひとつ鈍かった。その反応の強弱を何で判断するか。テレビ、新聞からネットに移行したいま、正確に捉えることは難しくなっているが、少なくとも阪神とオリックスが日本シリーズを争ったプロ野球には大きく劣っていた気がする。

 横浜FMが、優勝した昨季を上回るサッカーをしながら神戸に優勝を浚われたわけではない。神戸に敗れたと言うより、昨季の自分たちに敗れた恰好だ。メンバー的にもサッカー的にも後退したことで、よく言えば手堅い、悪く言えば古典的なサッカーを展開する神戸に遅れを取った。

 右肩上がりが終焉を迎え、右肩下がりが始まったシーズン。Jリーグの2023年シーズンを一言でいえばそうなる。Jリーグがレベルダウンした原因を探すことは簡単だ。現在100人に迫る日本人選手が欧州でプレーしているからだ。その数が増えることは、Jリーグ側にとっては人材の流出に当たる。

 選手個々のレベルが上がったことでJリーグのレベルは下がったーーとは皮肉な結果である。これはJリーグの市場価値が下がったことを意味する。折からの円安がそれを後押しする。Jリーグのチームには外国人選手の値段が滅茶苦茶高く感じられるのだ。外国人枠を満たしているクラブはけっして多くない。外国人選手の質も高いとは言えない。ベンチを温める選手は少なくない。

 この欄でも以前に紹介したことがあるエピソードだが、ロベルト・カルロスに1996-97シーズン、インテルからレアル・マドリードに移籍してきたタイミングでJリーグという選択肢はなかったのかと訪ねれば「ブラジル人選手の間では4、5番目のリーグだ」と述べていた。

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スポーツライター

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、プレスパス所有者として2022年カタール大会で11回連続となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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