味噌カツ、きしめん、手羽先の未来は?なごやめしサミットが開催。速報レポート!
なごやめしの未来と可能性を考える「なごやめしサミット」が1月31日、名古屋国際会議場にて開催されました。
主催はなごやめし普及促進協議会。同会は名古屋市、愛知県、愛知県観光協会、名古屋商工会議所、名古屋観光コンベンションビューローといった行政および関連団体によって、2015年に設立された連携組織です。なごやめしを地域ブランドとして確立し、特色ある観光資源と位置づけて、PRを図ることを目的としています。
これまでの活動実績としては、なごやめし飲食店ガイドマップ(日本語・英語・中国語(繁体字、簡体字)・韓国語版)やPRポスター・グッズの作成、各種イベントや観光展でのPRブースの出展などが挙げられます。また、公式ロゴマークを作成してPR協力事業者を募り、なごやめしを提供する飲食店にステッカーを配布したり、なごやめし関連商品にロゴ使用を許諾するなどし、スクラムを組んでPRすることにも努めています。
今回初めて開かれるサミットは、なごやめしを提供する飲食店やメーカー、旅行・観光業者、PRする地元メディアなど関係者を対象としたものです。
「テーマはコラボです。例えば、飲食店とメーカーがコラボレーションすることで、新しい発想のユニークななごやめし関連の商品が生まれる可能性が広がる。同業者間や他分野とのコラボで、集客力のあるキャンペーンを開催するチャンスが広がる。我々はそれを広報面でバックアップすることで、市長や知事への表敬訪問などメディア露出の機会を増やすことができる。こうした相互連携の取り組みを増やして、なごやめしの情報発信力と民間事業者の活力を高め、名古屋の観光魅力向上につなげていきたいと考えています」となごやめし普及促進協議会事務局長の徳永智明さん。
サミットでは、筆者が第1部の基調講演「あなたの知らない“真実のなごやめし”」と第2部のシンポジウムの座談会進行を担当。座談会では様々なコラボなごやめしを商品化している寿がきや食品、森永製菓、あいちみんなのサラダプロジェクト実行委員のソーシャルプランナー・波房克典氏とともに登壇しました。
また、カルビーと伊藤園(お茶)によるコラボ事例発表、ジェトロによる日本および名古屋・愛知の食の国際展開に関する発表などがあり、幅広い視点からなごやめしの無限の可能性について熱い議論が展開されました。
基調講演で私がテーマとしたのは、なごやめしに対する誤解をとき、何より地元の人たちがその魅力を正しく理解することです。風変わりなB級グルメが多いと思われがちですが、共通する特徴はうまみの濃さ。その根幹にあるのはこの地域だけで作られ、食べられている豆味噌です(一般的には赤味噌、八丁味噌と呼ばれています)。豆味噌は米味噌や麦味噌と比べてうまみ成分が実に2倍! さらに名古屋で好まれているたまり醤油ももともとは豆味噌の上澄みから作られたものなのでうまみが濃いのが特徴です。和食の味つけの基本である味噌と醤油がとびきりうまみが濃いのですから、名古屋の人は必然的にうまみ嗜好になり、その嗜好に合わせて生まれ、浸透した食べ物がなごやめしなのです。つまり、なごやめしは伝統や風土に根差した堂々たる郷土の食文化であり、胸を張ってアピールすべきものだといえるのです。
座談会には味噌煮込みうどんや台湾ラーメンなどの主要な“なごや麺”や人気店とのコラボ麺を商品化している寿がきや食品、「おっとっと 矢場とんみそかつ味」「コメダ珈琲店監修 シロノワール小枝」といった名古屋の有名外食ブランドとのコラボ商品を手がける森永製菓が商品開発秘話を披露。寿がきや食品商品開発部・岡田友志さんは「名古屋・愛知のめん類を手がけるのは我々の使命だと思ってやっています」、森永製菓中部統括支店・益子亮二さんは「新入社員の時に名古屋で上司に初めて食べに連れて行ってもらったのが矢場とんでした。久しぶりの名古屋赴任で、これを商品で再現したい!と思ったんです」と商品開発の根底には地域に対する思い入れがあることを明かしてくれました。
またソーシャルプランナーの波房克典さんは、あいちサラダめしをはじめ、日本コロッケ協会、全国丼連盟など、ご当地グルメを核にして地域を盛り上げる活動を手がけています。「地域の潜在的な思い入れをすくい上げて可視化し、それに賛同した人たちみんなで盛り立てていくことがムーブメントになるんです」と、やはり原動力になるのは1人1人の思い入れや郷土愛だと訴えました。
登壇者の方々の話を通して強く感じたのは、グルメのコラボを成功させる鍵は、その味や料理の強みに対する正しい理解。例えばなごやめしであれば、“うまみ”という味わいの根幹が分かっていれば、商品開発の段階でのよりどころとなりブレが生じにくくなるのです。加えてご当地グルメを手がけるには、地域への愛情が欠かせないということでした。そしてこれは決してなごやめしに限った話ではなく、全国の食にかかわる人たちにとって、ヒントになるものだと感じました。
参加者はおよそ150名。引き続き開かれた懇親会にも100名以上が参加しました。飲食店や食品メーカー、メディア関係者らが活発に交流する様子は、ここでのつながりから新たななごやめしのコラボレーションが生まれる可能性を大いに期待させてくれるものでした。人気飲食店と菓子メーカーがコラボするなごやめしテイストのスナック、意外と知られていないご当地限定の味をフィーチャーした隠れなごやめし系食品、さらにはジャンルの垣根を越えたなごやめしの食べ歩きイベントなどなど。これまでなかった新しいなごやめしと出会えるチャンスが、このサミットをきっかけに広がるかもしれません。
なごやめしサミットが成功だったか否か答えが出るのは、実はまだ先の話。このサミットで交流した飲食店やメーカー、企業などが手を取り合って新しい企画が生まれたその時に、サミット開催の意義が初めて形になるはずです。
(サミット風景写真提供/あいちみんなのサラダプロジェクト 撮影/鈴木啓太)