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本拠地打率は.187!ホームで打てないマリナーズ打線はMLB最低記録を更新してしまうのか?

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
ホーム球場で打率1割台に沈むマリナーズ打線(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【今も続く極端な投高打低傾向】

 MLBの2021年シーズンが、早くも2ヶ月が経過した。

 すでに本欄でも報告しているように、今シーズンは低反発球が導入されたこともあり、開幕から投高打低傾向が顕著だが、2ヶ月経った今も、その傾向に変化は見られないようだ。

 5月30日終了時点でのMLB全体のシーズン打率は.236と、4月よりやや上昇しているものの、現在もMLB史上最低を記録した1968年の.237を下回っている状態だ。

 また本塁打率1.13は、2015年(1.05)以来の低さであり、長打率.393も、2014年(.386)以来3割台で推移している。

【MLB最下位のチーム打率に沈むマリナーズ】

 そんな投高打低傾向を象徴している存在と言えるのが、マリナーズだろう。実はここまでのチーム打率が、MLB史上最低で推移しているのだ。

 5月31日終了時点でのチーム打率は.205に止まり、1910年にホワイトソックスが記録した.212のア・リーグ記録のみならず、1888年にナショナルズ(現在のナショナルズとは別チーム)が記録した.207のMLB記録さえ下回っている。現時点でMLB29位のブルワーズ(.211)からも、6厘も離されている状態だ。

 現在4人の野手が故障者リスト入りしており、それも大きく影響していると思われるが、ここまでのチーム最高打率は、ミッチ・ハニガー選手の.261。また規定打席に達している打者で、打率2割を超えているのは、ハニガー選手を含め4人しかいない。

 それでも5月終了時点で28勝27敗と勝ち越しているのだから、チームとしてはむしろ大健闘と言えるだろう。

【ホーム球場で打てないマリナーズ打線】

 マリナーズ打線の低迷ぶりを物語っているのが、5月5日のオリオールズ戦、同18日のタイガース戦と、約3週間で2度のノーヒットノーランを達成させられてしまったことだ。しかもいずれもホーム試合だった。

 その影響を受け、マリナーズの5月の月間打率は.198(4月は.211)に沈んでいる。また今シーズンのホーム打率も.187と、敵地打率(.222)と大きな差が生じている。本来ならアドバンテージを受けるべきホーム球場で苦しんでいるのだ。

 ちなみにマリナーズ投手陣の被打率を見ると、敵地は.267に対し、ホームは.214まで抑えているので、マリナーズのホーム球場自体が、打者泣かせの球場であるのは間違いない。

【MLB6度目の不名誉記録】

 MLB公式サイトに記録関連の記事を執筆しているサラ・ラング氏によれば、1シーズンにホーム試合で2度のノーヒットノーランを達成されたのは、マリナーズで6チーム目の不名誉記録になるようだ。

 マリナーズ以外の5チームは、1923年のアスレチックス、1971年のレッズ、1973年のタイガース、2001年のパドレス、2005年のメッツ──だ。

 そこで過去の5チームのシーズン打率と、各シーズンのMLB平均を比較してみたところ、それほど大きな差がないことが分かった。まずは下記の別表を見てほしい。

(筆者作成)
(筆者作成)

 如何だろう。同じ不名誉記録を達成している5チームと比較しても、今シーズンのマリーズは極端に打てていないのだ。

 今後もホーム球場で苦労するような状態が続くようなことになれば、MLB最低記録更新も現実味を帯びてくるかもしれない。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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