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番狂わせ!! WBC暫定スーパーウエルター級タイトルマッチ

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
Esther Lin/SHOWTIME

 第7ラウンド24秒、挑戦者、ブライアン・メンドーサの左フックが、ドンピシャのタイミングでWBC暫定スーパーウエルター級王者、セバスチャン・フンドラの顎を捉える。

 スローモーションのように、ゆっくりと膝を折るフンドラに、メンドーサが右ストレートを叩き込むと、197cmの暫定チャンプはリング上で大の字になり、そのままカウントアウトされた。 

Esther Lin/SHOWTIME
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 両者の身長差は19cm。打たれ脆さを見せるものの、高身長と203cmのリーチ、更にサウスポーであるフンドラは、身体的なアドバンテージを生かして20勝(13KO)無敗1分けとこれまでに負けを知らなかった。

 一方、21勝(15KO)2敗でニューメキシコ州アルバカーキ出身の29歳は、ようやく掴んだチャンスに目を輝かせていた。

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 序盤からボディを狙いながらフンドラの懐に飛び込みたいメンドーサだが、距離を縮めようとする度にアッパーカットを浴びる。フンドラの無数のパンチを喰い、メンドーサは5ラウンドに鼻血を出した。挑戦者は無敗のファイターの猛攻により、消耗させられたように見えた。手数では、暫定王者が挑戦者を圧倒していた。

Esther Lin/SHOWTIME
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 イスマエル・サラスの指導を受けているメンドーサは、フンドラが中盤以降にペースダウンすると読んでいた。

 勝者は言った。

 「フンドラのガードが空いていたので、倒しに行った。『ここだ!』と思ったし、自分の時間だった。どんな展開になってどう終わるのか、全てを予想していたよ。

 自分は決して諦めずにボクシングを続けてきた。私を仕留めたいなら、倒すだけでは無理だ。殺さなければ必ず戻ってくる。自分は毎回進歩している。

 私の挑戦を受けてくれたフンドラに感謝したい。彼はこの試合を受ける必要はなかった。リスキーだった筈だ」

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 メンドーサは、自身のキャリア最高の勝利に雄叫びを上げた。2度の敗戦を乗り越えたからこそ、掴めた勝利だと振り返った。

 「今夜も2ラウンドほどポイントを失ったが、気にしなかった。私が諦める姿を見たことはないだろう? 何年か前に負けた際、"諦め"も過った。でも、スパーリングを続け確実に強くなっている。だから、今の私があるんだ。1年前、私はメインイベント後のスイングバウトを戦ったよ。私が誰であるか、何をしているのか、誰も気にしていなかった。でも、今は違う。この結果が証だ」

Esther Lin/SHOWTIME
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 プロ生活初の黒星を喫したフンドラも話した。

 「いいパンチだった。あの瞬間は分からなかったが、僕は大丈夫。必ずリングに戻ってくるよ。これはステップアップであり、ステップダウンでもある。

 この試合にサインしたことを後悔してはいないし、これがボクシングだ。ファイターは戦わなければならないし、いい試合をしなければならない。ブライアン・メンドーサにはおめでとう、と言いたい。彼は自分の仕事をしたんだ」

 メンドーサは一皮剥けたであろう。更なる飛躍を見せられるか。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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