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4年前のドラフト全体1位がロースター外に。一方、この年のドラフトからは新人王がすでに3人

宇根夏樹ベースボール・ライター
グレイバー・トーレス(左)とマーク・アッペル Feb 25, 2017(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 11月20日、ルール5ドラフトによる流出を防ぐため、フィラデルフィア・フィリーズは数名のマイナーリーガーを40人ロースターに加えた。そして、彼らと入れ替わりに、マーク・アッペルらをロースターから外した。

 アッペルは2013年のドラフト全体1位だ。まだメジャーデビューはしておらず、2015年12月にケン・ジャイルズらの交換要員として、ヒューストン・アストロズからフィリーズへ移った。今シーズンは7月上旬に肩を痛めるまで、AAAで17先発して防御率5.27、奪三振率6.59、与四球率5.82を記録した。

 アッペルに続き、全体2位で指名されたクリス・ブライアント(シカゴ・カブス)は、2015年に新人王、その翌年にMVPを受賞した。今年の新人王2人も、プロ入りは2013年のドラフトだ。アーロン・ジャッジ(ニューヨーク・ヤンキース)は1巡目・全体32位、コディ・ベリンジャー(ロサンゼルス・ドジャース)は4巡目・全体124位だった。3人とも、新人王の投票では全員から1位票を得た。

 ここまでのところ、アッペルとブライアントの明暗――順序どおりに記すなら「暗明」――は、1966年のドラフト全体1位と2位、スティーブ・チルコットレジー・ジャクソンを思わせる。チルコットはメジャーデビューすることなく、ユニフォームを脱いだ。レジーは563本塁打を放ち、殿堂に迎え入れられた。新人王は受賞しなかったが、1973年にはMVPに選ばれた。「メジャーデビューできなかったドラフト全体1位」はチルコットだけでなく、1991年のブライアン・テイラーもそうだが、テイラーの直後に全体2位で指名されたマイク・ケリーは、メジャーリーグで327試合に出場したに過ぎない。

 もっとも、チルコットとテイラーの2人と同じように、アッペルもマイナーリーガーのまま終わると判断するのは早すぎる。現在の年齢は26歳。先発投手としてはともかく、救援投手に転向して球種を速球とスライダーに絞れば、芽が出そうな気がする。

 なお、最も多くの新人王を輩出したドラフトは、1982年と1988年だ。受賞者は5人ずつ。1982年のドラフト入団からは、アルビン・デービス(6巡目・全体138位)、ドワイト・グッデン(1巡目・全体5位)、ビンス・コールマン(10巡目・全体257位)、ホゼ・カンセコ(15巡目・全体392位)、トッド・ウォーレル(1巡目・全体21位)、1988年からは、グレッグ・オルソン(1巡目・全体4位)、パット・リスタッシュ(5巡目・全体133位)、エリック・ケアロス(6巡目・全体140位)、マイク・ピアッツァ(62巡目・全体1390位)、ボブ・ハメリン(2巡目・全体48位)が、それぞれ新人王を手にした。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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