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1球で決めた「代打送りバント」。侍ジャパン栗原陵矢の”バント能力”は「今宮と匹敵」と鷹コーチが証言

田尻耕太郎スポーツライター
劇的勝利の影のヒーローになった栗原(右から2番目)(写真:ロイター/アフロ)

 米国との準々決勝で劇的サヨナラ勝ちを決めた侍ジャパン。

 ソフトバンク勢が大活躍だった。試合を決めるサヨナラ打を放ったのが甲斐拓也で、土壇場九回の同点の打点となる内野ゴロを含む2安打2打点をマークした柳田悠岐もしっかり勝利に貢献した。五輪初登板を飾った千賀滉大も2回5奪三振無失点と、周囲の心配を吹き飛ばす快投を見せた。

 そして、もう一人初出場だった栗原陵矢だ。無死一、二塁から始まるタイブレーク制に突入した延長戦の十回裏、栗原は先頭の村上宗隆(ヤクルト)の代打で出場。初球をきっちり一塁線に転がす送りバントを成功させて、サヨナラ機のお膳立てを見事に成功させてみせた。

ソフトバンクでバント成功は今季2度だけ

 一夜明けて、PayPayドーム。ソフトバンク首脳陣も侍鷹戦士の活躍に大喜びし、その中でも栗原のバント成功を絶賛していた。

 工藤公康監督も「よく決めたよね~。ドキドキしたよ」と笑顔。ソフトバンク勢の活躍の話をひと通り聞いてみたのだが、真っ先に名前が挙がったのが栗原だった。

 そして平石洋介打撃コーチも「十回表を無失点に抑えて、さあ裏の攻撃。村上に送らせるのかな、クリ(栗原)を出したら控え野手がいなくなるし……と考えて見ていたらクリが出てきた。本当に素晴らしい仕事だったよね」と興奮気味に振り返り、そして「いくらクリはバントが上手いといってもオリンピック初出場だったしね」と言葉を継いだ。

 思わず、右手のペンが止まり顔を上げてしまった。

 栗原は今シーズンここまで2犠打しか記録していない。ソフトバンクではチーム屈指の勝負強さがウリで、大事な得点源として期待されている選手だ。栗原とバントの結びつきがそれほど強いイメージがなかったのだ。

栗原のバント、何が優れているのか?

 しかし、平石コーチはこう証言する。

「このチームだったら、(今宮)健太とクリは同じくらい。経験は健太の方がずっとあるけど、技術は同じくらいという信頼度を僕らは持っています」

 今宮といえばプロ野球歴代4位の通算323犠打を決めてきた、球界を代表するバント名人だ。そこと匹敵するというのだから驚いた。

「タイミングや間合いはバントでも大事なんです。あとはバットの面の向け方とかね。クリはそれがもの凄く美味いと思います。良い打者ってバントもうまいというし」と平石コーチはそのように評価をした。

 侍ジャパンは次戦、準決勝で韓国と対戦する。劇的サヨナラ勝利の流れに乗って戦いたいところだ。

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。「Number web」でのコラム連載のほかデイリースポーツ新聞社特約記者も務める。2024年、46歳でホークス取材歴23年に。 また、毎年1月には数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。

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