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「日本はアジアの光」 サッカーW杯で中国人が日本代表を純粋に応援するワケ

中島恵ジャーナリスト
ドイツに逆転勝利した日本代表(写真:森田直樹/アフロスポーツ)

FIFAワールドカップ(W杯)カタール大会で、日本が初戦でドイツに逆転勝利したことが中国でも大きな話題になっている。

試合が行われた11月23日夜、中国のSNS、微博(ウェイボー)ではトレンドランキングの上位を「日本逆転」「ドイツVS日本」「日本はアジアの光」などのワードが占め、高い関心があることを示した。

SNSで日本の勝利が話題に

とくに、多くの人が注目したのは、ドイツ戦を会場で、日本人サポーターの近くで観戦していた1人の中国人の短い動画だ。

メガネを掛けたその男性は画面に向かい「これが俺たちの隣国だ。身体能力は俺たちと同じなのに……彼らにできて、なぜ俺たちにはできないのか!?」と叫び、「自分たちはもっと謙虚になり、学ばなければならない」と涙ながらに語った。

悔し涙を流しているようにも見えるし、日本の勝利に心底感動して、同じアジア人として中国人も、もっとがんばらねばならないと、自国を鼓舞しているようにも受け取れる。

中国のSNSで話題になった男性(中国の微信の動画より筆者引用)
中国のSNSで話題になった男性(中国の微信の動画より筆者引用)

この動画は微信(ウィーチャット)などでも瞬く間に拡散されたが、動画につけられたコメント欄には「(中国人選手は、高級食材である)ナマコを食べ過ぎている(堕落しているからダメなんだ)」といった自虐的なコメントのほか、「日本選手は本当によくがんばった。身体能力は同じでも、努力の差はとても大きい」など冷静なコメントもあった。

粘り強いのは日本人の特性

個人のSNSだけでなく、中国メディアでも日本の勝利は大きく報じられた。新華社通信は「想像できなかったことだが、アジアのサッカーの水準と魅力を世界に示すことができた。我々は日本の勝利から学ぶべきだ」と速報。他メディアも日本の勝利を称え、「日本サッカーはアジアの光だ」「ありがとう、サムライブルー」、「粘り強いのは日本人の特性。本当にすばらしい」といった報道が相次いだ。

ほかにも、日本の有名アニメ『キャプテン翼』を持ち出し、「40年前、日本人はアニメの中で出場していたが、あれから40年経ち、本当のワールドカップの舞台で強豪に劣らない戦いをしている。すばらしいことだ」といった論評もあった。

同じアジア人の日本に尊敬の念

今大会、中国代表チームはアジア最終予選で敗退し、出場することはできなかった。しかし、中国人のサッカー好きは以前からであり、一部に熱狂的なファンもいる。コロナの感染者が急増している今、ゼロコロナ政策で外出もままならない不自由な生活を強いられていることもあり、もっぱらテレビでサッカー観戦をしているという人も多い。

そんな彼らにとって、肩入れしたくなるのは、やはり、同じアジア人であり、隣国の日本代表だ。

韓国代表にも関心はあるものの、リアクションを見ていると、韓国代表よりも日本代表に対する「目線」は温かいように感じる。日本は体形的に欧米人には劣るものの、チームプレーや技術を磨いてコツコツと勝ち上がってきており、そこに尊敬の念を抱くようだ。

SNSのコメント欄などを見ていると、「日本人は小さい頃から部活でサッカーに親しんできた。中国とは純粋さが違う」などと書かれているものもあった。

こうしたこととは別に、今大会、中国からFIFAパートナー(スポンサー)が出ていることも、中国では大きく報道されている。日本のドイツ戦の際、サッカー場にあった「WANDA」(万達=ワンダ)の文字が目に飛び込んできた人は少なくないだろう。

中国の大手企業、WANDAの広告(テレビ画面より筆者撮影)
中国の大手企業、WANDAの広告(テレビ画面より筆者撮影)

WANDAは中国大連市に本拠を置く大手複合企業集団だ。また、選手やサポーターを輸送する公式バスや、試合に使用される機材なども中国から提供されており、2頭のパンダまでわざわざカタールに貸し出されているという。

そうした面で世界に多少のアピールができたことは中国人にとって誇らしいことではあるが、内心では「いつか、自分たちの国も日本のように強豪と互角に戦えるようになれば……」とうらやましく感じているのかもしれない。

ジャーナリスト

なかじま・けい ジャーナリスト。著書は最新刊から順に「日本のなかの中国」「中国人が日本を買う理由」「いま中国人は中国をこう見る」(日経プレミア)、「中国人のお金の使い道」(PHP新書)、「中国人は見ている。」「日本の『中国人』社会」「なぜ中国人は財布を持たないのか」「中国人の誤解 日本人の誤解」「中国人エリートは日本人をこう見る」(以上、日経プレミア)、「なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?」「中国人エリートは日本をめざす」(以上、中央公論新社)、「『爆買い』後、彼らはどこに向かうのか」「中国人富裕層はなぜ『日本の老舗』が好きなのか」(以上、プレジデント社)など多数。主に中国を取材。

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