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イタリアダービーを前に問題山積のインテル、解任説も浮上のデ・ブールに必要なのは?

中村大晃カルチョ・ライター
デ・ブール監督はインテルを立て直せるか(写真:ロイター/アフロ)

賭けは失敗に終わるのか。これから挽回できるのか。確かなのは、インテルとフランク・デ・ブール監督の船出が、予想以上に厳しいものになったということだ。

17日付『コッリエレ・デッロ・スポルト』で、OBのアレッサンドロ・アルトベッリは「ユヴェントス戦を除いて最初の6試合で5勝できると思った」と明かした。同様の予想をしていたファンは少なくないだろう。ローマと対戦する第7節まで、インテルの第6節までの対戦相手は、キエーヴォ、パレルモ、ペスカーラ、ユヴェントス、エンポリ、ボローニャ。王者以外は、いわゆる格下ばかりだからだ。

もちろん、セリエAにおいて楽に勝てる相手はいない。ましてや、インテルは開幕まで2週間を切った段階でロベルト・マンチーニ前監督からデ・ブール監督に指揮官を代えている。難しい序盤戦になることは想像できた。

だが、3試合で1勝1分け1敗という成績に終わり、勝利したペスカーラ戦も3枚替えという荒療治の末の逆転勝利だったとあれば、批判にさらされるのはやむを得ない。ヨーロッパリーグ初戦でハポエル・ベア=シェバという無名チームにホームで0-2と完敗したのだから、なおさらだ。

開幕前に“ギャンブル”に出たクラブも批判の的となっているが、就任から1カ月が過ぎても結果と内容の両面が芳しくないとあり、デ・ブール監督への重圧も高まっている。インテルは指揮官を擁護し、解任説を一蹴したが、一部メディアではファビオ・カペッロやチェーザレ・プランデッリ、レオナルドといった後任候補の名前も出始めた。

だが、サポーターの間でも「今は監督を解任すべきでない」という声が少なくない。インテル専門サイト『fcinternews.it』も、レジェンドのサンドロ・マッツォーラ氏が選手たちの責任と断じ、デ・ブール監督を信頼すべきと主張したと伝える。後任候補の一人であるプランデッリも、「必要なバランスを見つけるための時間をデ・ブールに与えるべき」と述べた。

アルトベッリが「エンポリ戦とボローニャ戦で勝ち点を挙げることが大事」と話すように、ユーヴェ戦で目もあてられない大敗を喫しない限り、即時解任の可能性は低いだろう。

ただ、イタリアダービーというビッグマッチを前に、問題山積なのは事実だ。

『ガゼッタ・デッロ・スポルト』は、デ・ブール監督が早急に改善しなければいけない問題点を4つ挙げた。まずは結果。次に試合へのアプローチ(今季のインテルは常に先行を許しており、前半に得点を挙げていない)。続いてプレー内容(オフ・ザ・ボールの動きのなさやエベル・バネガの適正ポジションを見つけられていない)。そしてフィジカルコンディションの4つだ。

一方で、マリオ・スコンチェルティ記者は『コッリエレ・デッラ・セーラ』のコラムで、大一番では自然と選手たちのモチベーションが高まるものであり、ユヴェントス戦は監督以上に選手たち次第の一戦になるとの見解を示した。同記者は、デ・ブール監督に必要なのは「イタリアらしさを理解し、自分のやり方ではなくイタリアのやり方でマネジメントをすること」だと指摘する。

カギを握るのは、デ・ブール監督が「カルチョ」に適応できるかどうかということだ。だが、同監督は現役時代も指導者転身後もイタリアサッカーを経験していない。そこで、ジャンニ・ヴァレンティ記者は『ガゼッタ』のコラムで、ハビエル・サネッティ副会長の現場入りを提案した。

「クラブが流れを変えたいなら、デ・ブールのそばにカリスマを置く必要がある。日々、練習中も最善の形で監督に助言でき、その人の前では選手たちが言葉を発することもできないような人だ。それらの条件を満たし、練習場に通うのは、サネッティである。(中略)彼の経験は、デ・ブールに時間を与えながらインテルを流砂から引き揚げ、シーズンを救うのに役立つかもしれない」

サネッティ副会長が実際に“現場介入”するかどうかは分からない。だが、インテルの魂を誰よりも知る人物だけに、その言葉に耳を傾ける価値はあるだろう。いずれにしても、まずは苦戦が予想されるイタリアダービーを乗り切らなければいけないが…。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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