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新型コロナで影響を受ける中小企業「巣ごもり消費」をターゲットに新商品を投入し、売上確保へ。

秋元祥治やろまい代表取締役/武蔵野大学EMC教授/オカビズ

新型コロナで地域の中小企業の経営には大きな影響が出ています。倒産に関するニュースを目にすることも増えましたが、その背景にははるかに多くの自主廃業があることを忘れてはいけません。厳しい経営環境であることは間違いありませんが、そんな中でも家の中で充実した時間を過ごしたい、という新しいニーズの誕生に敏感に反応し、迅速な対応で売上につなげている事例があります。

皮とアンコを分けただけ、ハンコを○○専用に…コロナを乗り越えるビジネスチャンスの掴み方では、和菓子屋さんとハンコ屋さんの事例を取り上げました。今回は、おうち時間の過ごし方により焦点を当てた中小企業の取り組みに注目します。

新型コロナウイルスの感染拡大がきっかけで、子どもも大人も自宅で過ごす時間がグッと増え、ツイッターなどのSNSやユーチューブなどでは「#家で一緒にやってみよう」「#おうち時間」のハッシュタグが登場するなどし、そして日常となっています。

そんな中で、親子で楽しめる料理や工作、プロがレクチャーする運動不足解消のサービスが続々と生み出されています。どのサービスも、自宅に居ながら今まで以上に充実した時間を過ごすことに貢献するもの。

withコロナ時代に、地域の中小企業に求められるのは、スピード。先週と、今週では取り巻く社会の状況がガラッと変わってしまう日々だからこそ、スピード感をもって変化を捉え、新たなニーズに対応した新サービスの展開が求められます。

地域の中小企業が提案する「巣篭りを楽しむ」をテーマにした、さまざまな新サービスに注目してみました。

▼親子で自由研究!「フラワーパレット STAY HOME4 色セット」(愛知県西尾市・トリイ株式会社

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最初に紹介するのは、化学染料の卸売メーカー「トリイ株式会社」さんの商品。家で過ごす時間が長い小学生の親子に向けて、自由研究を楽しんでもらいたいと企画したのが「フラワーパレット STAY HOME4 色セット」(1650円・送料別)です。

白い花を好きな色に染めることができる小学生用の実験キット。染料を混ぜた水に花を生け、花が水を吸い上げる力を利用して自然に染まっていきます。

染色剤 は4 色(青・黄・ピンク・赤)入っており、何色か混ぜ合わせることもでき、オリジナルの色に染められます。その他、ミニ花束用三角透明スリーブ 2枚、ミニ花束用リボン2個、そして、観察ノートも付いているので、色が付く経過を楽しみながら研究することができます。

自由研究といえば長期休暇の夏休みという概念がありますが、長期で休校になっている時期を捉えての市場投入。家庭での生活を応援したいと割引価格での展開で、親子でじっくりと時間をかけて自由研究をしてみたいというニーズに応えた展開です。また、研究中もこの花を玄関やリビングに飾ることで、心豊かなライフスタイルを送ることができるでしょう。学校が再開したいまでも、おうち時間を親子で楽しむアイテムとして活用したいものです。

▼自宅のキッチンが教室に!「こどもオンラインキッチン」 (愛知県豊橋市・こどもの料理)

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最近では、ビデオ会議システム「Zoom」などを使用した、さまざまなサービスが登場しています。その中で、休園・休校が続いている子育て世代の家事負担を少しでも軽減したいと、子ども専用料理教室「こどもの料理」さんが「こどもオンラインキッチン」(時間:約1時間 30 分/金額:幼児・小学生2,300 円、中学生2,000 円※兄弟で一緒に参加の場合2人目は1,000 円)を5月から開始しました。

「こどもの料理」の代表 中尾さんは、これまでに5,000 人以上の子どもに料理を指導している経験と実績を持ち、子どもたちに料理のつくり方をレクチャーするだけではなく、食材の香りや触感など、五感で体感することを目的とした、子ども専用の料理教室を運営しています。中尾さん自身、小学生と保育園児の3児のママで、子育て世代の家事負担の増大を実感していることから、このサービスを考案しました。

管理栄養士でもある中尾さんが考案するレシピは、栄養バランスが取れた料理が揃い、そのまま昼食・夕食として食卓に並べられるようにと3〜4 人前を想定した分量で調理します。パパ・ママは 1 食分の献立を考えたり、料理をする負担を軽減してくれるのでとても嬉しいですね。

子どもたちは料理を通して食の大切さを学び、パパ・ママは子どもたちが作った料理でニコニコ笑顔に!心も身体も喜ぶ、充実したおうち時間を過ごすことができます。(6月1日より対面レッスンも再開済み)

▼100kmマラソン元日本代表が教えてくれる「在宅ワーカーのための運動不足解消プログラム」 (愛知県岡崎市・接骨院ハート・ヒール)

オンライン配信する様子(ハートヒール接骨院提供)
オンライン配信する様子(ハートヒール接骨院提供)

在宅勤務になった人の中には、運動不足を実感している人も多いのでは? 通勤をしている場合、行き帰りの歩行時間やオフィス内の移動と無意識に体を動かす機会があり、意識をしていなくても動くことが習慣化しているので、自然とカロリーが消費されます。しかし、在宅勤務の期間が長くなり、意識的に体を動かさないと運動不足に陥り、生活習慣病の発症リスクを増大させるだけではなく、心理的なストレスにも大きな影響を与えるとも言われています。

そこで、運動不足解消をサポートするため、ウルトラマラソン元日本代表で柔道整復師の資格を持つ「接骨院ハート・ヒール」代表の魚地 秀治さんがオンラインで「在宅ワーカーのための運動不足解消プログラム」を開始しました。

ウルトラマラソンとは、42.195km以上の距離を走るマラソンのこと。魚地さんは、100kmのウルトラマラソンに出場・完走経験を 20 回以上持つランナーで、日本代表としてウルトラマラソンワールドカップに出場した経験を持っています。大学院にて運動生理学や体の仕組み、動かし方などを学び、柔道整復師の資格も取得。走りと体のスペシャリストとして、在宅勤務による運動不足で困っている人たちに何か提供できないかと、このサービスを実施しました。

「在宅ワーカーのための運動不足解消プログラム」(料金:月額10,000円/週2回(月8回)、時間:各30〜40分)は、器具を使わずに、1畳ほどのスペースでできるエクササイズ。レベルや目的に合わせて「ゆったり血流促進コース」、「がっつり追込みコース」があり、決まった時間に行うことで運動の習慣化を目指します。

100kmウルトラマラソン元日本代表が直接指導してくれるという、なんとも贅沢なプログラム!日頃の運動不足を解消しながら、基礎代謝の向上、ストレス解消にも役立ちます。さらに運動不足に悩むお子さんと一緒に参加できる「親子でエクササイズ」プログラムも好評だとか。withコロナ時代の新たなエクササイズの形なのかもしれません。

▼withコロナの今だからこそ求められる、変化に対応するスピード

withコロナ時代に、地域の中小企業に求められるのは、スピード。

2月以降、毎週のように取り巻く社会環境は変わっています。感染状況も行政の施策も、人々のニーズも。先週と、今週では取り巻く社会の状況がガラッと変わってしまう日々だからこそ、スピード感をもって変化を捉え、新たなニーズに対応した新サービスの展開が求められています。

新型コロナ感染拡大の恐れとともに、梅雨や豪雨災害の季節が今後はやって来ます。もちろん、昨年までとは異なる課題やニーズがそこにあるはずです。短くなる夏休みや、猛暑の中でのマスクやソーシャルディスタンスの中で生まれる課題やビジネスチャンスはどうでしょう。あるいは、海外旅行に行けない中で、段階的な観光・越県移動の解除に伴う新たなお出かけニーズなど、これからも変わりゆく社会。そして変わるニーズに対して、迅速に変化し対応していく「スピード」が今こそ求められています。

やろまい代表取締役/武蔵野大学EMC教授/オカビズ

01年より、人材をテーマにした地域活性に取り組むG-netを創業し03年法人化。現在理事。13年オカビズセンター長に就任。開設9年で約3300社・2万2千件超の来訪相談が押し寄せ、相談は1ヶ月待ちに。お金をかけずに売上がアップすると評判で「行列のできる中小企業相談所」と呼ばれている。2022年より武蔵野大学アントレプレナーシップ学部教授に就任。内閣府・女性のチャレンジ支援賞、ものづくり日本大賞優秀賞、ニッポン新事業創出大賞・支援部門特別賞ほか。内閣府「地域活性化伝道師」等、公職も。著作「20代に伝えたい50のこと」、KBS京都「KyobizX」・ZIP-FM「ハイモニ」コーナーレギュラーも。

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