旨いクラフトビール×SDGs、飲んで・読んで楽しむサステナ・ブリュー ビールセットが誕生
国内クラフトビールの人気が年々高まっています。当初はバーなどで提供されていることが多かったようですが、コロナ禍でおうち時間を楽しむ「家飲み」ニーズによってさまざまな飲料が注目されたことも関係していると言われています。今では旅先で楽しんだり、セレクトショップで手に取ったり、各地の醸造所が魅せるそれぞれの特徴が楽しいですよね。
キリンビールの調査では、「家飲み」需要の高まりも相まって、2021年1~9月の日本のクラフトビールの販売量は、前年同期に比べて約200%と大きく伸長したとのこと。実際コンビニの店頭でも、よなよなエールやスプリングバレーブルワリーの商品などを目にすることも一般的になってきました。
本年度、中野区役所・中野区商店街連合組合さんから依頼を受け、中野区内のいくつかの中小企業の方々とご意見交換をさせていただきました。そこで出会ったのが、クラフトビール専門店「かね市すず幸」さん(東京都中野区沼袋1丁目19-11)。ビール愛の語りが止まらない店主・鈴木さんとのご意見交換から新商品「サステナ・ブリュー ビールセット」が誕生しました。
「そこ、すごいポイントですよ」自分では気づけない強みを明確化
かね市すず幸さん、開業は2022年。それまで長年スーパーマーケットで勤務され、スーパーでもクラフトビールの売り場づくりを先導してきたという経歴の持ち主。そして、退職を機にクラフトビール専門店を立ち上げた根っからのクラフトビール好きです。
店舗には常時国内100銘柄ほどが所狭しとそろっています。各地のイベントにも参加して試飲を重ね、「本当においしいものを提供したい」と、たくさんのクラフトビールの中から厳選したラインナップなんだそう。実際にブルワリーまで足運んで製造の現場を見たり、つくり手と直接お話をしながら気に入ったものを仕入れてくるようにしてるんだそうです。
だからお客さんがやってくると、希望や味の好みなどを聞いてピッタリのものを選定し、そしてそのクラフトビールのうんちくを解説してお勧めしてくれるんです。
近隣の酒屋さんの中でも、これほどクラフトビールにこだわった品ぞろえの店はない。実際遠く離れたところからすず幸さんじゃなきゃ、と買いに来てくれるお客さんもいるほど。本人曰く、都内でも10本の指に入るほどのマニアックさ(?!)なのに、しかし開業から日が浅く、とにかく知名度が低く売上をいかに上げていくかが課題、とのことでした。
マニアックともいえる豊富なラインナップに、とことんクラフトビールが好きで話し出すと止まらない愛嬌ある店主のおすすめ力は他店にない強みになります。ご本人は好きを突き詰めて始めたお店で当たり前のように商品を増やし、お客様にあわせたクラフトビールを提案していたのですが、そこをちゃんと見える化し発信し、店の魅力を伝えていく必要があるとお話ししました。
今ある素材から、目玉商品を生み出す工夫
まずは店内の商品を再度見回してみると、クラフトビールには小規模醸造所だからできるそれぞれの特徴があることがわかります。産地の特産を使ったり、希少な原料を使ったり。中でも増えてきているのが、地域や地球の持続可能性を考えた商品です。
各地に根付いているからこそ、地域の環境や未来に想いを馳せ、それぞれのブルワリーのオーナー想い商品が込められてるものがいっぱいあるんですね。クラフトビールには、そうした想いも込められていることに気が付きました。
そこで鈴木さんと相談し、SDGsな商品をまとめたセット販売をきっかけに、お店の品ぞろえを知ってもらうきっかけにしようと作戦を立てました。クラフトビールの愛好家には、社会性や作り手へのこだわりへの共感を大事にしている方も多いだろうと考えてのことでした。鈴木さんのビール情報から、あれもいける、これもいけると続々と出てきます。
こうしてテーマを区切って提案することで、クラフトビール×●●という新しいターゲットに届くようになる可能性が誕生します。
飲んで学べるSDGs「サステナ・ブリュー ビールセット」提供を開始
サステナ・ブリュービールセットは、SDGsに配慮したクラフトビールを鈴木さんがセレクトしたもので、季節によりセット内容は変わります。現在は第一弾商品として3本セット2種類が販売開始しています。
一つは、サンクトガーレンブリュワリーという神奈川県の醸造所の商品から、規格外等のりんご、なしを使ったフルーティーなクラフトビールなどのセットです。
もう一つは、宇都宮ろまんちっくブルワリー(栃木県)からの3本セット。こちらはワイン造りに使われる果汁を絞ったあとの果皮や種を使ったり、廃棄されるパン耳を原料の一部にしている商品が含まれています。
今後、再生可能エネルギーので醸造されたビールや、未利用作物を原料として使用したものなども取り扱いをしていきたいとのことでした。
そしてこのセットには、セット内容のクラフトビ―ルがどんなSDGs商品なのか、背景を知ってもらうためのフリーマガジンを付属。こちらも鈴木さんがカスタマイズしてまとめているものです。
今や「SDGs」や環境配慮型商品など、地球環境への配慮もZ世代や若者を中心に、消費行動の一つの指針にもなってきています。どうせ買うなら地球によいものを買いたいというニーズをとらえて、飲んでおいしいだけでなく、持続可能性に貢献でき、読みながら背景を知ることができる商品です。
インパクトスタートアップ初のIPO(株式公開)として株式公開をし、ポケットマルシェを運営する株式会社雨風太陽が話題を集めました。雨風太陽のいわば祖業が「東北食べる通信」という東北の産直の農産/海産物と、情報紙をセットにした定期通販でした。すず幸さんはまさに、ビール版の「東北食べる通信」とも言える取り組みで注目を集めています。
お金をかけることはなくても、今まず自社にあるものに注目し、新たなターゲットや利用シーンと掛け合わせていくことで顧客を創造していくことができる、という事例でした。