珠洲市在住の経営者が二次避難マッチング開始、民間が取り組む被災支援のスピード感
令和6年能登半島地震が発災から、はや1週間を経過しました。連日テレビや新聞などメディアを通じて明らかになる被害状況を目にする度に心落ち着かない、新年を迎えた気持ちになれない…という方も多いのではないでしょうか。
国や石川県など行政機関や、警察・消防・自衛隊など総動員で救助・復旧にあたるお取り組みにはただただ頭の下がります。
こうした中、民間でも自発的な取り組みがいくつも生まれています。
▼東日本大震災での経験を活かした災害支援のネットワーク
七尾市を拠点にするまちづくり会社・御祓川(森山奈美 代表取締役)を中心に、珠洲市や輪島市、能登町など能登半島の各地でまちづくりに取り組んでいた民間キーパーソンが発災翌日からネットワークを構築。毎晩オンライン会議をしながら情報共有や作戦会議を行い、行政とも連携し迅速な取り組みを始めています。
孤立集落の情報収集や、各避難所ごとのニーズの把握。さらには私設避難所の情報収集や一覧化など、職員も被災者で出勤できる人数も限られ思うに任せない自治体が手の届かない領域をカバーしています。
さらに、全国各地の災害復旧支援団体なども加わっています。2011年の東日本大震災で支援の取組を行ってきたNPOなどが加わることで、過去のノウハウや経験が取り組みに生かさてています。
復興に向けたネットワークに加わったせんだい・みやぎNPOセンター代表理事の渡辺一馬さんは、当時多くの方々にささえられて取り組んだ経験を活かし貢献したいと参加を決めました。
「東北での経験から例えば、物資は確実に余るので無駄になることを恐れず、避難所にプッシュ型で送ることが必要だと伝えました。積極的に動きたい現地のみなさんの後押しができたと感じています。今後は公共との連携も重要になります。公共は公平生を重んじることから、仕組みがしっかり出来ないと展開できません。民間は自分たちが出来る部分からはじめることが出来るので、先行して支援のモデルが出来ることも多数ありました。炊き出しの際、ご飯を自衛隊が、おかずを民間企業が提供する、ということもありました。まずは民間のスピード感と、東日本大震災での経験を生かした取り組みをどんどんすすすめていきたいです。」
▼ビジネスマンのスキルやネットワークを生かした爆速の二次避難マッチング
珠洲市に本社機能の一部を置くアステナホールディングス(東証上場)社長の岩城慶太郎さんが中心なって「二次避難者受入/被災者宿泊 申し込みサイト」を開設し、奥能登地方からの二次避難を進めるためのマッチングの取り組みのスピード感も爆速です。「奥能登の5万人をいったん外へ」プロジェクトと銘打ち、全国からインターネットを介して集まるボランティアらと取り組んでいます。
余震も続き交通状況から早期の復旧は容易でない中、真冬のさなか、一次避難した体育館や公民館などに被災者が長くとどまることは現実的でないでしょう。既報のとおりコロナやインフルエンザの感染者が出始めたり、避難所での死亡事例も生まれています。
自宅の復旧や仮設住宅の準備が整うまでの間、「2次避難所」の整備や速やかな誘導が重要となっています。
岩城さんは、震災直後からSNSなどを通じて自ら情報収集を進め(自身の携帯電話の番号をバンバンと公開し、情報収集を猛烈なスピードで行ったのです)、孤立集落の状況や救援ニーズを行政機関や民間企業とやりとり。その中で私財の投入もふくめ、まずはと「私設避難先」として協力が得られた金沢市内などのホテルに自ら被災者をつなぎ、無料や格安で受け入れを申し出てくれた宿泊施設への二次避難をすすめてきました。
https://notoearthquake.hp.peraichi.com
こうした取り組みの延長線として「二次避難者受入/被災者宿泊 申し込みサイト」の開設につながっています。ホテルなどの宿泊施設以外の選択肢として、一軒家やアパートなどの空き家への二次避難をつなぐ取り組みです。
開設にあたっては、SNSを通じて集まった大手IT企業に勤務経験のあるプロフェッショナルや大学教員などがボランティアで参加。着想からわずか2日間で仕組みを構築し、受付可能な状態を組み上げて8日夕方にはサイトを開設する、という猛烈なスピード感でサービスリリースされました。
2次避難が落ち着けばその後は、より継続的な仮住まいも必要になる…との考えからさらに現在、不動産ポータルサイトを運営する大手企業と連絡をとり、被災者と公営住宅のマッチングサイトの構築にも取り組んでいる、といいます。
活用を呼びかける岩城氏は「ぜひ多くの被災者に活用してもらいたい。また二次避難場所として家を提供できる方の登録をお願いしたい。1)北陸3県内での一軒家・アパートなどの空き屋で、2)電気・ガス・水道が通っていて、すぐに住める状態にある、3)キッチン・トイレ・風呂などの設備と、最低限の家具・寝具がある、4)少なくとも1月末まで無償で貸し出せるといった条件だとありがたい」と語っています。
こうした中で浮かぶ「行政の取り組みに一本化したほうがよいのでうはないか?」という疑問について、防災に詳しい岐阜大学社会システム経営学環の高木朗義教授にぶつけてみました。
民間と行政の取り組みについて「近年の大規模災害発生時における被災者支援の状況を踏まえて、行政が専門的な能力を持つ関係者と連携する必要性が明らかとなり、災害ケースマネジメントと言う新しい仕組みが注目されています。行政も頑張っていますが、自治体職員も被災しており、行政だけでは対応が追い付かない事案が多くあります。避難生活が長期化しそうな状況の中、被災者一人ひとりに寄り添った支援が必要であり、行政と連携しながら民間によるこうした取り組みが先行していくことは重要なことです。」と教えていただきました。
もちろん行政でも取り組みも続々始まっています。石川県は昨日、金沢市に1.5次避難の拠点を設置。今月中旬から、輪島や珠洲などでも仮設住宅の建設を始めると表明しています。またさらに、みなし仮設の申込み受付を始めるなどの取り組みも始まりました。更に岸田総理から、二次避難を加速させるように指示もでています。
行政だけではとてもカバーできないこうした状況だからこそ、民間が繋がり自発的に行う支援の取り組みにも期待したいと思います。筆者も21才でまちづくりNPOを創業し運営し、また東日本大震災など災害にはネットワークで支援の取り組みに関わってきました。ご紹介してきた事例のとおり、民間の取り組みは圧倒的なスピード感と、走りながら考え改善していくスタイルに特徴があります。
また、こうした取り組みの背景には、阪神淡路大震災を機に広がりを見せた市民活動や、東日本大震災での経験値が大きく繋がっていることんも着目したいと思います。
まだ、能登半島地震のその後を語るフェイスではありませんが、しかし民間での取り組みの蓄積やノウハウは、災害列島日本で今後起こるであろう災害の際にもさらに役立つ知見が大いに含まれているように思います。