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パリ五輪切符を得てモチベーション高い男子バスケ。「チャンスをつかむ機会」と燃えるアジア大会開幕。

小永吉陽子Basketball Writer

文・写真/小永吉陽子

 コロナ禍によって1年延期になっていたアジア競技大会(通称アジア大会/ASIAN GAMES)のバスケットボール競技が9月26日からスタートする。この大会は4年に一度開催されるアジアの総合競技大会(アジア版オリンピック)で今回は中国・杭州で開催される。男子は2014年まではトップであるA代表が出場していたが、前回2018年大会からは、ワールドカップ組と底上げを目指すチームに分けて代表チームを編成し、勝利を目指している。

 男子の指揮を執るのは、トム・ホーバスヘッドコーチのもと、アソシエイトヘッドコーチとして代表チームを支えているコーリー・ゲインズ。プレーヤーとしてNBAで80試合のキャリアを持ち、1997-98シーズンには、祖母の母国である日本に渡り、ジャパンエナジー・グリフィンズでプレー。ABAのロングビーチ時代には、プレーイングコーチとして田臥勇太とチームメイトだった経歴を持つ。

 コーチキャリアではフェニックス・サンズやニューヨーク・ニックスでアシスタントコーチに就任し、八村塁がいた時代にワシントン・ウィザーズでアシスタントコーチを務めた。ヘッドコーチとしてはWNBAのフェニックス・マーキュリーを2度のチャンピオンに導き、2008年にはマーキュリーで大神雄子を指導。またリオ五輪当時は、内海知秀ヘッドコーチのもと、女子代表のアドバイザリーコーチとして戦術面での強化を担当。日本人選手の特性を知り尽くしている指導者として、初の代表ヘッドコーチとして指揮を執る。

 アジア大会の代表メンバーは、5月末に発表された候補選手を中心に選出されているが、そんな中で、アンダーカテゴリーで実績を残し、時期的に合流が可能だった川島悠翔(NBAグローバルアカデミー)が抜擢された。最終メンバーにはワールドカップに出場した川真田紘也が入ったが、ワールドカップ中に負傷したためインサイドの平岩玄を追加招集。また同じく大会直前の負傷によって高島紳司を佐藤卓磨へと変更している。キャプテンは齋藤拓実と佐藤卓磨の最年長コンビが務める。

 戦術としては、ホーバスHCが掲げるアグレッシブなディフェンスと速い展開の中で攻撃回数を増やし、多くのチャンスを作り出すスタイルをアジア大会でも求めていく。

 今大会の目的としてゲインズHCは、「勝利を目指しながら、若い選手がアジア大会を通して経験を積むことが大事。またワールドカップを通して積み上げてきた下地に対して、パリ五輪という次のステージに向けてどんな積み上げをしていけるのか、レベルを高めるために何ができるのか、新しいことも少し試みていきます。選手たちには、この大会で結果を残せばその先のパリ五輪に向けた選考につながると伝えています」と語るだけに、選手たちのモチベーションは非常に高い。大会に意気込む選手たちのコメントを紹介しよう。

キャプテンを務める齋藤拓実(名古屋ダイヤモンドドルフィンズ)
キャプテンを務める齋藤拓実(名古屋ダイヤモンドドルフィンズ)

齋藤拓実 SAITO , Takumi

(名古屋ダイヤモンドドルフィンズ/172センチ/PG/28歳)

キャプテンに任命されたので、最年長として、同い年の(佐藤)卓磨と(今村)佳太の3人でまとめていこうと思っています。また、これまでも代表合宿には出ていたのでトムさん(ホーバスHC)のバスケはわかっているので、ポイントガードとして引っ張りながら、試合の流れを把握してビッグマンたちに伝えていきたい。

ワールドカップはしっかりと見ていました。出たかった気持ちはあるけど、悔しい気持ちではなく「どうしたら日本が世界で勝てるか」という視点で見ていました。トムさんが小さいガードをどう起用していくかという考えはあると思いますが、ワールドカップでは小さいガードでも世界を相手に通用している部分はありました。僕も小さいガードとしてトムさんにどう認められるか、そこはアジアの大会ではありますが、ここはチャンスだと捉えてしっかりとアピールして戦いたい。代表ではまだ結果を出していないので頑張りたいです。

ただ、自分のことで言うと、今は腰を痛めていてコンディション面が心配です(公開練習日の9月18日は別メニューで調整していた)。プレシーズンゲームが始まる前から痛めていて、プレシーズンゲームで悪化させてしまいました。大会一週間を前にしてだいぶ良くなってきて、アジア大会に間に合わせるように調整しているところです。コンディションがいい状態だったら、速いバスケをする自信はあります。まずは、コンディション作りを最優先させて調整します。

今村佳太(琉球ゴールデンキングス)
今村佳太(琉球ゴールデンキングス)

今村佳太 IMAMURA , Keita

(琉球ゴールデンキングス/191センチ/SG/27歳)

自分ではゲームをクリエイトする力があると思っていて、そこがアピールポイントです。6月の合宿(ワールドカップ候補とアジア大会候補の合同トレーニング)では、トムさん(ホーバスHC)やコーリーコーチから「ここまで、ボールハンドラーができると思っていなかった」と言われました。このチームではウイングのプレーヤーとして自分の動きが大事になってくると思っています。

ワールドカップは沖縄アリーナに見に行きました。自分でチケットを買って、見に行ったんですよ(笑)。フィンランド戦とベネズエラ戦を見て、他のチームの試合も見ました。

日本がヨーロッパのチームに勝てることはなかなかイメージが沸かなかったけど、今のバスケットスタイルを極めていけばヨーロッパ勢とも対等に戦える力があることは証明されたので、そこは影響を受けました。かつ、僕としては沖縄アリーナの力を感じられた大会でした。

沖縄アリーナで試合がしたかったという意味では、ワールドカップに出られなかった悔しい気持ちはあります。キングスの選手が沖縄アリーナでワールドカップ代表としてプレーすることは大きな意味を持つと思っていたし、僕自身はキングスに入ったタイミングから沖縄で開催するワールドカップを一つの目標にしていたので、それが実現しなかったことにすごく悔しい気持ちはあります。

でも、これでバスケ人生が終わるわけじゃない。自分の次の目標はパリ五輪に出ることで、そのチャンスはあると思っています。このアジア大会は先につながりますし、自分としてはアピールできる最大の場だと思っているので、そこは責任を持って自分にできることをやっていきたい。アジア大会は自分にとっていろんなことを試せる機会なので、そこは貪欲にやって、いいモチベーションで臨みます。

寺島良(広島ドラゴンフライズ)
寺島良(広島ドラゴンフライズ)

寺島 良 TERASHIMA , Ryo

(広島ドラゴンフライズ/179センチ/PG/25歳)

今、このチームでやっていることはトムさん(ホーバスHC)がやっているバスケットと一緒です。僕はワールドカップ前にも何回か合宿に入っていたので、そこは慣れていますし、対応できると思います。他のガード陣もすごく力のある選手がいますが、僕は出た時間に後先考えずに全力を出したい。

ワールドカップでオリンピック出場権をつかんだことは、正直なことを言えば複雑な感情でした。あの舞台に立ちたかった気持ちがすごくあったので。でも勝ったときは「やったーパリだ!」と思ってうれしかったんです。だから複雑な感じというか、うまく言語化はできないけど、「自分も頑張らなきゃ」という気持ちが上回っていて、モチベーションがさらに出てきました。

同じガード陣の富樫(勇樹)、河村(勇輝)、西田(優大)選手があそこの舞台で活躍しているのを見て、この3人にBリーグでマッチアップして勝ちたいと思いましたし、パリに出るにはこの3人に勝たなきゃいけないというモチベーションになりました。

僕の場合は日の丸を背負うこと自体が光栄なことです。それに、今のままではオリンピックには選ばれません。そのためにも、もっと3ポイントを打たないといけないです。これはBリーグを通してもそうたし、トムさんからも課題として言われています。ゲームコントロールとドライブだけでなく、もっと3ポイントを狙わないと世界で戦えないと言われているので、そこは積極的に狙いたい。もっと成長しないとワールドカップメンバーは超えられないので、このアジア大会で大きく成長したい。

平岩 玄 HIRAIWA , Gen

(アルバルク東京/200センチ/PF/25歳)

日本代表として、国際大会の公式戦メンバーに入ったのは初めて。2019年のジョーンズカップ以来、久しぶりにJAPANのユニフォームを着ることができてうれしいです。

このオフシーズンのアルバルクの練習では、チーム内でもプレータイムが増えてきていて、いい仕事ができていると自信が出てきたところでした。なので、代表でも自分の役割を全うしてステップアップしたいです。

日本代表にはいいシューターがたくさんいるので、僕がいいスクリーンをかけてチャンスを作りたい。今の日本はオプションをたくさん積み重ねるスタイルなので、自分がそのオプションを作り出したうえで、自分も生きたいです。いいスクリーンをセットして、いいスペーシングにいたり、速攻に走るという仕事は自分にできることだし、この代表では自分にしかできないと思っています。

ワールドカップでチームメイトの吉井(裕鷹)が頑張っていてうれしかった。一緒に3年プレーしてきたので、彼のいろんな葛藤を知っています。だから吉井の活躍がうれしかったし、自分も日本のためになれるのでは、と思っています。このチームにおいて自分の役割はハッキリとわかっているので、こういう時(怪我人が出てエントリー変更したこと)に僕を使ってもらっていいと思っています。やるべきことをやれば、自分にもいいこと……そうですね、先につながるチャンスが訪れるかもしれない。アジア大会へのモチベーションはすごく高いです。

川島悠翔 KAWASHIMA , Yuto

(NBAグルーバルアカデミー/200センチ/PF/18歳)

シニアの日本代表に選ばれるのは初です。やっとというか、アンダーカテゴリーの代表から経験させてもらって、せっかくいただいたチャンスなので、自分のものにしていきたい思いがあります。

このチームではストレッチ4でプレーします。日本代表にはシュートが入る選手がたくさんいるので、僕がドライブで切っていって、シューター陣をオープンにさせることが必要なので、その役割をします。あとはリバウンドを取って、オープンになったら積極的に3ポイントを打つこと。機動力があるストレッチ4のイメージです。コーリーコーチやトムさん(ホーバスHC)からは「ポテンシャルがあるから、自信を持ってやればいいプレーができる」と言われました。あとは、自分のチーム(NBAグルーバルアカデミー)で判断力をつけるためにオフボールの動きをすごく練習しているので、少しずついい判断や視野が広がってきています。そこを出していきたい。

ワールドカップはすごい感動しました。オーストラリアにいたのでライブでは見られなくて、ずっとスタッツだけを追っていました。フィンランド戦で「やばい、負けそう…」と思っていたら点が伸び始めて、誰が点取ってるんだ!? と思ったら河村(勇輝)さんでした。スタッツだけ見ていても興奮しましたね。オーストラリア戦はテレビでやっていたのでチームのみんなと見ていたのですが、僕だけ日本人なので完全アウェーで応援していました(笑)

ワールドカップで河村さんだったり、富永(啓生)さんだったり、若い世代が活躍しているのを見て、自分もその舞台に立つという自覚が出てきましたし、自分も同じような舞台に立って歴史を作りたいと思いました。チャンスをつかみ取らなきゃいけない時期は、そう遠くはないのだとそこで自覚しました。パリに向けて年齢は関係ないという気持ちでやりたい。そのためには、やっぱり得意なドライブを出したいし、今練習している判断力をこの大会で見せられたらチャンスが出てくると思います。

Basketball Writer

「月刊バスケットボール」「HOOP」のバスケ専門誌編集部を経てフリーのスポーツライターに。ここではバスケの現場で起きていることやバスケに携わる人々を丁寧に綴る場とし、興味を持っているアジアバスケのレポートも発表したい。国内では旧姓で活動、FIBA国際大会ではパスポート名「YOKO TAKEDA」で活動。

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