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警察官から飲酒検知の呼気検査を求められ、拒否したら逮捕された!そのワケは?

前田恒彦元特捜部主任検事
(提供:イメージマート)

 12月は飲酒運転が増えるシーズン。警察も集中的な取り締まりを行っているが、18日未明、北海道旭川市で警察官から飲酒検知の呼気検査を求められ、拒否した男が逮捕されたという。

どのような事案?

 報道によると、次のような事案だ。

「パトロール中の警察官が男の乗用車の走行を不審に思い、停車させて、職務質問」「男から酒の臭いがしたため、呼気検査に応じるよう求めたのに対し、男は『なんで応じなければならないんだ』などと言って、およそ30分間、頑なに検査を拒み続けたため、その場で逮捕」「逮捕後に応じた検査では、酒気帯び運転の基準値を超えるアルコールが検知」(HBC北海道放送

 男は呼気検査の義務があるとは知らなかったと供述しているという。しかし、道路交通法は、酒気を帯びて乗用車などを運転するおそれがあると認められる場合、運転手が身体に保有しているアルコールの程度について調査するため、警察官に対し、呼気検査をする権限を与えている。

呼気検査拒否罪がある

 もし運転手がこの検査を拒んだり、妨げたら、最高で懲役3ヶ月、罰金だと50万円以下の刑罰に処される。警察は、検問などの機会に運転手が呼気検査を拒否した場合、30分から1時間ほど説得した上で、それでも応じなければ、この呼気検査拒否罪で現行犯逮捕している。

 警察署に連行されると、今回の男のように改めて警察官から説得され、結局は呼気検査に応じる場合がほとんどだ。それでも頑強に拒否すれば、令状に基づいて病院で血液を採取され、鑑定される。基準値を超えるアルコールが検出されれば、飲酒運転の罪でも立件されることになる。

 もっとも、憲法には「何人も、自己に不利益な供述を強要されない」という規定があり、呼気検査を義務付けることは違憲ではないかと裁判で争われたこともある。しかし、呼気検査は供述を得ようとするものではないから、憲法違反には当たらないというのが最高裁の判例だ。

 たとえ基準値未満のアルコールしか検出されなくても、呼気検査拒否罪で逮捕されるだけ損だし、その罪で起訴されることもありうる。警察官に飲酒検知の呼気検査を求められたら、素直に応じた方がよい。(了)

元特捜部主任検事

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。

元特捜部主任検事の被疑者ノート

税込1,100円/月初月無料投稿頻度:月3回程度(不定期)

15年間の現職中、特捜部に所属すること9年。重要供述を引き出す「割り屋」として数々の著名事件で関係者の取調べを担当し、捜査を取りまとめる主任検事を務めた。のみならず、逆に自ら取調べを受け、訴追され、服役し、証人として証言するといった特異な経験もした。証拠改ざん事件による電撃逮捕から5年。当時連日記載していた日誌に基づき、捜査や刑事裁判、拘置所や刑務所の裏の裏を独自の視点でリアルに示す。

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