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日本代表勝つには何必要? 世界選抜ロビー・ディーンズヘッドコーチ自ら即答。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
オーストラリア代表監督時代のディーンズ。(写真:Action Images/アフロ)

 2019年のワールドカップ日本大会を2年後に控えるラグビー日本代表は、10月28日、福岡・レベルファイブスタジアムで世界選抜と対戦。27―47で敗れた。

 就任2年目を迎えるジェイミー・ジョセフヘッドコーチのもと、今秋はワールドカップ優勝経験のあるオーストラリア代表など多くの強豪と対戦予定。JAPAN XVの名義でおこなった世界選抜戦はその前哨戦だった。

 もっともこの日のJAPAN XVは、攻め込んではボールを失う。かたや世界選抜は、攻守逆転からの速攻などで大量得点を奪った。

 試合後、世界選抜のロビー・ディーンズヘッドコーチがアンドリュー・エリスとともに会見。「この試合で日本代表が勝つには何が必要か」などの質問に応じた。

 元オーストラリア代表監督のディーンズは、現在、日本のパナソニックでも指揮。元ニュージーランド代表のエリスは神戸製鋼でもスクラムハーフとして活躍中だ。この国で仕事をしているとあって、前向きな言葉選びにリアルをにじませた。

 以下、共同会見時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

ディーンズ

「今週は特別な週でした。世界各国からたくさんの選手たちが集まり、チームを作っていった。チーム作りとしては、どちらかというとオフ・ザ・フィールドでチームを作っていった雰囲気でした。皆さんが我々の火曜日(合流間もなかった頃)の練習を見たら、きょうのようなパフォーマンスはとても想像してもらえなかったと思います! そこで選手たちは、自分たちの居心地の良い空間から抜け出し、練習し、成長した結果、このようなパフォーマンスができたと思います。詳しくはアンディー(エリス)からも、話があるでしょう。

 そして、世界選抜でプレーした日本人3選手(五郎丸歩、藤田慶和、山沢拓也)について。イタリアのシモーネ・ファヴァロ、アルゼンチンのファクンド・ヒヘナを含め、言葉が通じず難しさもあったと思いますが、非常にいいパフォーマンスをしてくれたと思っています。そしてきょう、一番、誉めてあげたいのはアンディーです(マイクをエリスの手前に置く)」

エリス

「ありがとうございます。だいたいのことはディーンズヘッドコーチがまとめていただいた通り。我々はこの1週間、楽しいこともありましたが、それもフィールド上で(力を)出さないと意味がないものになる。きょうは世界選抜がどんなチームで、どう楽しい時間を過ごしたかを最高の形で出すことができました。雨のなかとはいえ、楽しいラグビーを見せられたと思います。

 ここにいるディーンズヘッドコーチにもお礼を伝えたい。週の始めから素晴らしい統率力を見せ、我々の文化を示してくれた。ここでプレーできたことは非常にラッキーでした。このチームは、ラグビーの一番のエッセンスを表現し、培えます。この後、解散しても各国を回るなかで長い間の友情をキープできると思います。それがたとえオーストラリアにいても、連絡を取り合ってゆくのだと思います。

 最後にもうひとつ、日本のラグビーはさらなる成長を遂げる時期です。神戸製鋼で数年プレーをしていてそう感じます。日本ラグビーのスタンダードは毎年、上がっていて、エキサイティングな時期にあります。2年後、この国でラグビーワールドカップがあると思うと胸が高鳴ります。

 日本代表でやろうとしているスタイルが、成長しています。それはスピードがあって、スキルが高く、オフロードも展開するものです。スーパーラグビーで日本人選手が腕を磨いているという背景もあります。ワールドカップに向けた2年間の準備を、ジェイミー・ジョセフヘッドコーチ、トニー・ブラウンアタックコーチとともにやっていくのだと思います」

――JAPAN XV(日本代表)の鋭く前に出る防御に対し、世界選抜はどう対抗したか。

エリス

「きょう我々が奪った7トライの多くは、ブロークンプレー(お互いが陣形をなしていない状態、アンストラクチャーとも言われる)から生まれたものです。我々はアタックの機会を作り出すと同時に、ターンオーバー(守備時の攻守逆転)を狙っていました。我々のチームには、アンストラクチャーから穴を見つけ、狙う(方がいい)という傾向が見えてきました。それをもっとよくするために、スピードを上げ、ターンオーバーを狙おうとしました。ただ全体的に、JAPAN XVのディフェンスに弱いところは見えなかったと思います」

ディーンズ 

「その質問は、日本代表のスタッフにもしなくてはならないかもしれません。彼らはジョン・プラムツリー新ディフェンスコーチとともに、新しいことをやろうとしている。新しいことをするのは難しく、特にこうした天候のもとではより難しかったと思われます。ただ、彼らがやったことに対して、敗北はなかった。今後よくなる価値を見出したのではないでしょうか。来週のオーストラリア代表戦は、きっといい試合になるのではないかと考えます。

 もうひとつ見逃せないのは、彼らがハードワークをしている点です。いまを中長期的な面で見てフィジカルを鍛えなくてはいけない時期として、試合(結果)は2次的なものと見ているかもしれない。そうした点も、(結果を見る前に)踏まえなくてはいけないと思います。きょうはJAPAN XVで何人か怪我人が出たようです。それは彼らにとっては理想的じゃないのかもしれない。(笑いながら)特に、パナソニックの選手が怪我をしたのはちょっと…というところです(翌日に途中離脱を発表した山田章仁はパナソニックのウイング)」

――この対戦でJAPAN XVが勝つには、何が必要でしたか。

ディーンズ 

「彼らにも、我々に対するプレッシャーを作り出した部分がありました。ただ、それがトライを取り切るところに繋がらなかった。我々はプレッシャーからスコアができた。

 試合の詳細を見ると、両チームに大きな差はなかったのかなと思います。そこで我々があったのは、フィニッシュを決めるところ。それをビンス・アソ、藤田慶和の両ウイングがやってくれたと思います。(パナソニック所属の)藤田は肩の怪我から復活し、これだけのパフォーマンスができた(トライを決めるなど好ランを披露)。これによって日本代表の層も厚くしたかな、と思います(29日に追加召集が決まった)。

 もし、何か両者間の差を挙げるとすれば、我々は序盤で7点を取ってゲームを進めたのに対し、JAPAN XVは3点を積み重ねて追っていた点。点差が開いて自陣でボールを回さなければならないなか、我々がターンオーバーをして得点ができた。試合内容についてはそんなに差がなかったと思います。

 もうひとつのジャパンの収穫は、最後まで諦めずにトライを取りに行こうとしていたこと。あと10分残っていたら、我々にとっては厳しい試合になっていたと思います」

 実はジョセフが日本代表の指揮を執る前、ディーンズにも水面下で打診があったとされる。当の本人は、後に当時のやり取りをこう振り返っていた。

「代表チームの監督は、多くの仕事(育成やコーチング)において他の人に依存をしなくてはいけなくなります。選手と一緒にいる時間は短くなるのが、フラストレーションのたまる点です」

 聞きようによっては、若手の育成部門も一任する形であれば返答が違っていたとも取れる。もっともディーンズ監督は、ただパナソニックでの職務を全うしたいだけだと強調。むしろ、「パナソニックでコーチングをすることが、日本代表やサンウルブズ(国際リーグのスーパーラグビーに日本から参戦)の強化に繋がっていると思っています」と断じる。2016年夏、こう話していた。

「希望があれば、いつでも相談に応じたいと思っています。経験こそ、最大の教師となります。何がうまくいって、何がうまくいかないのか。(自身の経験や経験者の言葉から)学ばなければいけません。そうすることで、痛みや無駄な時間を省くことはできます」

 いつも日本代表のよきオブザーバーといった趣の通称「ロビーさん」。この日の「両チームに大きな差はなかったのかなと思います。そこで我々があったのは、フィニッシュを決めるところ」「差を挙げるとすれば、我々は序盤で7点を取ってゲームを進めたのに対し、JAPAN XVは3点を積み重ねて追っていた点」という実感は、そのまま日本代表の反省点となるか。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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