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ジニ係数の悪化は高齢化が原因:対処は高齢世代内での所得再分配の強化で

島澤諭関東学院大学経済学部教授
図はイメージです(写真:イメージマート)

昨日、厚生労働省「所得再分配調査」が公表され、ジニ係数(当初所得)が2014年の当時の過去最大の水準に並んだと盛んに報道されています。

所得格差、依然大きく 21年、高齢世帯増で 厚労省(時事通信 2023年8月22日 17時05分)

世帯間の所得格差 過去最大の平成26年に次ぐ水準に 厚生労働省 (NHK 2023年8月22日 23時35分)

所得格差が過去最高水準 ジニ係数、14年に次ぐ 21年調査(朝日新聞 2023年8月23日 5時00分)

舛添要一氏、日本の所得格差拡大の問題点に言及「日本はチャリティの精神がない」(日刊スポーツ 2023年8月23日 10時45分)

確かに、ジニ係数(当初所得)は総じてみれば上昇傾向にありますし、ジニ係数(再分配)も上昇に転じました。

図1 ジニ係数の推移(厚生労働省「所得再分配調査」により筆者作成)
図1 ジニ係数の推移(厚生労働省「所得再分配調査」により筆者作成)

しかし、税や社会保障による所得格差の改善度には大きな悪化は見られませんから、税や社会保障による所得再分配は役割を果たしているともいえます。

図2 税や社会保障による所得格差の改善度(厚生労働省「所得再分配調査」により筆者作成)
図2 税や社会保障による所得格差の改善度(厚生労働省「所得再分配調査」により筆者作成)

そもそも、高齢化が進めば、所得格差は悪化することが知られています。なぜなら、年を取れば取るほど、それまでの経済活動の積み重ねの影響が増幅されてしまうからです。

厚生労働省「所得再分配調査」をよく読めば、こうした問題意識は当然あって、もし高齢化が前回調査と同じだとした場合の、ジニ係数が試算されています。

表 高齢化要因を除いた場合のジニ係数(厚生労働省「所得再分配調査」7頁)
表 高齢化要因を除いた場合のジニ係数(厚生労働省「所得再分配調査」7頁)

この試算によれば、前回調査よりも、ジニ係数は、当初所得でも再分配所得でも改善していることが分かります。

つまり、所得格差拡大の原因は高齢化の進行にあることが分かります。

社会保障を通じた世代間の所得再分配が限界に達している今、所得格差拡大に対する処方箋としては、高齢世代内での所得再分配強化ということになるでしょう。

そういう意味では、所得格差のこれ以上の拡大を止めるべく、高齢世代内でしっかりチャリティの精神を発揮して頂ければと思います。

関東学院大学経済学部教授

富山県魚津市生まれ。東京大学経済学部卒業後、経済企画庁(現内閣府)、秋田大学准教授等を経て現在に至る。日本の経済・財政、世代間格差、シルバー・デモクラシー、人口動態に関する分析が専門。新聞・テレビ・雑誌・ネットなど各種メディアへの取材協力多数。Pokémon WCS2010 Akita Champion。著書に『教養としての財政問題』(ウェッジ)、『若者は、日本を脱出するしかないのか?』(ビジネス教育出版社)、『年金「最終警告」』(講談社現代新書)、『シルバー民主主義の政治経済学』(日本経済新聞出版社)、『孫は祖父より1億円損をする』(朝日新聞出版社)。記事の内容等は全て個人の見解です。

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