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投手陣15人中10人が先発投手!今回も第2先発制を踏襲する侍ジャパンと強豪国代表との違い

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
果たして侍ジャパンは3度目のWBC優勝トロフィーを手にできるか(筆者撮影)

【侍ジャパンが出場登録30選手を発表】

 今年3月に開催される第5回WBCに挑む侍ジャパンの栗山英樹監督が1月26日、先行発表していた12人に加え、出場登録30人を正式発表した。

 すでに各所で報じられているので選手名は省くが、選手構成は投手15人、捕手3人、内野手7人、外野手5人となっている。

 ちなみに侍ジャパンと同日に出場登録30人を発表したキューバ代表の場合、選手構成は投手14人、捕手2人、内野手8人、外野手6人となっている。

 栗山監督も最後の一枠を投手、野手のどちらかにするか悩んだことを明かしているが、今後正式発表が待たれる各国代表チームも、投手枠は14~15人で推移しそうだ。

【投手陣15人中10人が先発投手から選出】

 さらに今回栗山監督が選んだ投手陣15人を見てみると、2/3に当たる10人が先発投手から選出されている(伊藤大海投手は3試合の中継ぎ登板があるが先発として分類)。

 ちなみにWBCはスプリングトレーニング期間中の開催ということもあり、2006年の第1回大会以降、常にラウンドごとに球数制限が設けられている。大会によって多少の違いはあるものの、2013年の第3回大会、2017年の第4回大会ではまったく同じ球数制限が採用されているので、今大会も同様になりそうだ。

 参考までに紹介しておくと、第3、4回大会の主な球数制限ルールは以下の通りだ。

 まず大会を通じて球数によって登板間隔が規定されており、1試合で50球以上投げた場合は最低でも中4日、1試合で30球以上投げるか、もしくは2試合に連投した場合は少なくとも中1日を空けなければならない。

 さらに各ラウンドの球数制限は、第1次ラウンドが65球、第2次ラウンドが80球、決勝ラウンドが90球となっている。

 そのため侍ジャパンは、先発投手が長いイニングを投げられないことを想定し、各試合で2人の先発投手を起用する「第2先発制」を採用してきた。今回の投手構成を見ても、明らかに過去の起用法を踏襲しているようだ。

【ドミニカ代表と米国代表は先発投手4人で優勝】

 ところが他代表チームの選手構成を見てみると、侍ジャパンと違った考え方をしているようだ。

 特に第3回大会で優勝したドミニカ代表、第4回大会で優勝した米国代表の投手陣の構成と比較すると、明らかな違いを確認できる。

 まず2013年のドミニカ代表チームは、選手登録数28人中半数の14人を投手から選んでいるのだが、そのうち先発投手は4人しかおらず、残り10人はクローザーを中心に中継ぎ投手が選ばれている。

 また2017年の米国代表チームの場合は、選手登録28人中投手陣は最低限の13人に留め、そのうち先発投手は4人しか選んでいない。

 ただし第4回大会は「指名投手枠」として10人まで登録可能で、米国代表は6人(先発投手3人、中継ぎ投手3人)を登録している。

 つまりドミニカ代表と米国代表は、各ラウンドの先発を4人に固定し、先発投手が球数制限に達して以降は、中継ぎ陣で継投していく戦略で優勝を飾ることに成功しているというわけだ。

【通常の準備が難しくなる第2先発の投手たち】

 すでに各所で報じられているように、今回の侍ジャパンの投手陣は過去のチームと比較して相当豪華な布陣であることは間違いない。だが先発投手と中継ぎ投手では、その専門性は相当に違ってくる。

 例えば先発投手は試合開始時間に合わせて準備すればいいし、最初から走者を置いて投げ始めることは絶対にない。一方で中継ぎ投手は、試合展開の状況に置いて準備を進め、時にはイニング途中や走者を置いた場面で登板しなければならない。

 また先発投手の多くは、ブルペンに入る前にグラウンドで遠投を挟む傾向が強い。しかし第2先発で起用される投手は、こうした通常のルーティンができなくなってしまうわけだ。

 WBCのような短期決戦で勝ち抜くには、あらゆる場面に対応し、適材適所の選手起用が求められるだろう。しかも中継ぎ投手を細かく継投させることで、打者を翻弄する効果もある。初顔合わせが多くなる短期決戦なら尚更だろう。

 果たして栗山監督は、10人の先発投手をどのように起用していくのだろうか。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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