「指定のキャンペーンタグが入っているからステマではない」論のごまかし。問題なければ炎上しない
ディズニーが映画『アナと雪の女王2』でステルスマーケティングをしているのではないかと騒ぎになり、炎上しました。
炎上の結果、過去の映画の宣伝においてもステルスマーケティングを実施していたことがわかり、ディズニーは2度もお詫びを発表する事態になりました。
この一連の流れのなかで注目すべきは、宣伝を依頼された漫画家が「PR表記については必要ない」、「(その代わりに)指定のタグ2つをつける」といった説明を広告代理店から受けていたことです。
そのような説明を広告代理店(クライアント)からされれば、漫画家個人が納得してしまうことは仕方のないことだと思います。そのため筆者は漫画家個人を責めるつもりはありません。
ただ、その広告代理店の主張は消費者へのごまかしに過ぎないことを書きたいと思います。
そもそも問題なければ炎上しない
「指定のキャンペーンタグが入っているからステマではない」論は、10月末に起きた京都市と吉本興業の漫才コンビ「ミキ」による「京都市盛り上げ隊」のステマ炎上でも行われました。
ディズニー側は指定のキャンペーンタグと複数の投稿が同じ時間に投稿されることからキャンペーンとわかると主張し、京都市側は指定のキャンペーンタグとこれまでの活動から広告だとわかると主張しました。
先に結論から伝えておくと、「指定のキャンペーンタグが入っているからステマではない」のであればそもそも炎上しません。
消費者の多くが問題だと受け取ったからこそ、炎上しているのです。そのことを広告を出す側は理解するべきでしょう。
PRタグをつけない理由は広告嫌いの消費者に見せるため
そもそもPRタグをつけずに「指定のキャンペーンタグ」をつけるのは、広告を出す側の「広告が広告だとわかって欲しくない」という考えからです。
以下はGMOメディア株式会社による10代女子への調査ですが、51.5%が「SNSのタイムラインに出てくる広告」を無視すると回答しています。
この5割に広告を見てもらうために、PRタグではなく「指定のキャンペーンタグ」をつけて「広告だとわかると思ってました」と主張するわけです。
しかし、これは広告を見たくない人に騙して広告を見せる行為です。
「指定のキャンペーンタグが入っているからステマではない」論は、広告を広告ではないように見せるための悪質な手法と言えます。
ひと目で広告とわかることが重要
続いて「同じ時間帯に複数の投稿をするから広告だとわかる」、「これまでの活動を見れば広告だとわかる」論への話をします。
まず、同じ時間帯に複数の投稿をしたところでそれを消費者が同じ時間帯に見るとは限りません。というかまず見ないでしょう。
『Twitter』を見る時間は消費者によって異なりますし、複数の漫画家すべてをフォローしている人は限られてきます。そう考えると同じ時間帯に複数の投稿をしたからといって、広告だと分かるとは言えません。
また、「これまでの活動を見れば広告だとわかる」論も同様です。
これまでの活動を消費者が把握しているかどうかはわかりません。「だいたい把握しているなら広告を出す必要がないんじゃないの?」という疑問は横に置いといて、「これまでの活動」を把握できているのは広告を出す側だけです。その活動のひとつに触れただけの消費者には、広告かどうか判断できるわけがありません。
これも消費者に対して広告であることを隠していると言えます。
法規制をするしかないのでは?
ステマが話題になったときに、よく出てくるのがアメリカではFTC(連邦取引委員会)がステルスマーケティングを禁止しているという話です。
日本ではこうした法規制を回避するために業界団体であるWOMマーケティング協議会が「WOMJガイドライン」を定めています。
しかしディズニーのステマ炎上の件では、WOMマーケティング協議会の会員である株式会社電通が関わっていたとウォールストリートジャーナルの記事で書かれています。
会員ですらガイドラインを守らない。ディズニーの件では電通と漫画家のあいだにいるであろう広告代理店は一切説明しない。こんな状況では、日本でも法規制するしかないのではと思えてきます。
「指定のキャンペーンタグが入っているからステマではない」論では炎上することを、今回の京都市やディズニーの件をきっかけに少しでも企業側に伝わることを願うばかりです。