ニンテンドースイッチ2年連続の年間出荷2000万台突破へ 絶好のスタート
任天堂の2020年4~6月期(2020年度第1四半期)連結決算が発表され、売上高が前年同期と比べて約2倍、本業のもうけを示す営業利益も約5倍と絶好のスタートを切りました。ポイントを三つに絞って説明します。
◇スイッチ2年連続の大台へ視界良好
売上高は前年同期比108.1%増の約3581億円、営業利益は同427.7%増(約5倍)でした。ソニーのゲーム事業の決算記事でも触れましたが、ゲームビジネスは第1四半期は数字が落ち込むのが普通ですから、春の好調はホクホクでしょう。あまりの好調ぶりを反映してか、ヤフートピックスにもなりました。
人気ゲーム「あつまれ どうぶつの森(あつ森)」(ニンテンドースイッチ)のヒット、新型コロナウイルスの感染拡大による消費者の在宅需要(巣ごもり需要)が背景にあるのはその通りです。
ポイントの一つ目は、ニンテンドースイッチの2年連続の年間出荷2000万台へ向けて絶好のスタートを切ったことです。2020年度(2020年4月~2021年3月)の出荷数計画は1900万台ですが、売れるに越したことはありません。ピークが過ぎればあとは落ちるだけなのですから。「あつ森」大ヒットの勢いに乗って2000万台、あわよくば前年度(2019年度)の2103万台も超えたいところです。
2020年4~6月期の出荷数は568万台でした。前年同期(2019年4~6月期)の213万台と比べると約2.7倍増です。「ポケットモンスター ソード・シールド」が出た昨年度第3四半期(2019年10~12月)のレベル(1082万台)にはさすがに及びませんが、四半期(3カ月)の数字としては極めて優秀です。
◇ソフト販売 一昨年の年末商戦並み
「あつ森」のヒットに隠れていますが、2020年4~6月期のソフトの出荷数5043万本も売れています。これが二つ目のポイントになります。
この数字は、昨年度第3四半期(2019年10~12月)の6464万本には及ばないものの、「大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL」が発売された2018年度第3四半期(2018年10~12月)の5251万本に匹敵します。要するに過去の第1四半期とは、比較にならないレベルの売り上げです。元々任天堂は第3四半期に売り上げを立てる傾向があるのですが、その流れがいきなり4~6月期に来た……ということです。数字を見ると「あつ森」のヒットと巣ごもり需要の威力を感じてもらえるでしょう。
ハード(ゲーム機)とソフト共に、巣ごもり需要の恩恵はまだ見込めそうなだけに、第2四半期(2020年7~9月)の数字も注目です。上半期(2020年4~9月)に稼いで“貯金”を作っておけば、第3四半期(2020年10~12月)も優位に戦えます。
同時期は、ソニーの「プレイステーション5」とマイクロソフトの「Xbox Series X」の二つの新型ゲーム機が発売される見通しです。しかし、いずれもスイッチとはタイプの違う高性能のゲーム機ですから、影響がゼロとは言いませんが、ガチガチの競合になりづらいのもポイントですね。
◇業績予想の据え置き なぜ
最後のポイントは、業績予想の据え置きの狙いです。今期は文句をつけるのが不可能な好成績ですが、これだけ好調でありながら、上方修正をしない意図が気になります。
もちろん新型コロナウイルスの感染拡大は予断を許しませんし、どんな影響がでるかも予測しづらいのは確かです。そう考えると、手堅く見積もるのも理解できます。昨年度もスイッチの出荷計画を1800万台から1950万台に上方修正した後は、動かしませんでした。ですが、売上高と営業利益がこれだけ跳ね上がったのに……という疑問はどうしても残ります。
任天堂の決算短信で「連結業績予想に関する説明」があります。そこで上がったタイトルは三つでして「ペーパーマリオ オリガミキング」(7月)、「ピクミン3 デラックス」(10月)、追加コンテンツの「ポケットモンスター ソード・シールド エキスパンションパス」第2弾「冠の雪原」(今秋配信)となります。しかし昨年度の「ポケモン」や「あつ森」と比べれば、パンチ力に欠ける面があります。そこで気になるのは、1860万本を出荷した「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」の続編の発売時期ですね。現段階では「発売日未定」ですので、どのタイミングで出すのかで業績に大きく影響してきます。
とはいえ、今期の決算を見る限りでは「ゼルダ」抜きでも、今の流れが続けば2年連続の年間出荷2000万台達成は行けそう……という印象です。2000万台に達するには、四半期あたり500万台になりますが(現実は年末商戦期偏重で売れる)、一番苦戦する商戦期にスイッチを500万台以上売ってしまったのですから。
さて決算とは直接関係ありませんが、任天堂が「新作2Dアクションゲームのレベルデザイナー」などを募集して話題になっています。ただの人材募集ですが、話題作りの側面でも、ブランディングとしても巧みですよね。
売れているときにこそ後々の「種まき」をしておくのは、ビジネスの鉄則です。令和の時代に「2Dアクションゲーム」という意外性も含めて、次の仕掛けも楽しみですね。