メインイベント後のアンダーカード
現地時間9月17日、MGMグランドのグリーンの建物を目にしながら、2週間前を思い出した。
今月4日に催されたアンディ・ルイス・ジュニアvs.ルイス・オルティスの興行は、メインイベント後にアンダーカード3試合のゴングが鳴った。メイン終了後であるため客の多くは帰路につき、メディアも記者会見場に移動したなかでのファイトである。
私自身、観戦したい思いもあったが、アンディ・ルイス・ジュニアが試合後に何を話すかが気になったので、記者会見場に急いだ。
ここで思い出すのは、1995年8月19日である。出所したマイク・タイソンが、ピーター・マクニ―リーという名のアイルランド系アメリカンを相手に4年2カ月ぶりのカムバックを果たした日だ。会場はラスベガス、MGMグランドガーデン・アリーナ。
タイソンがマクニ―リーを89秒で沈めた後、MGMグランドガーデンを埋め尽くした1万6000人強の観客は、早々とアリーナを去っていった。
この日のアンダーカードには、WBCスーパーウエルター級、WBAヘビー級、WBCライト級、WBCミドル級と4つの世界タイトルマッチが組まれたが、メインイベントの後に行われたのは、WBCミドル級戦のみだった。
WBCミドル級タイトルマッチこそ、最も見応えがあった。強打が売りのチャンピオン、ジュリアン・ジャクソンに対し、サウスポーの挑戦者クインシー・テーラーが積極的に仕掛ける。
テーラーは、初回から王者のお株を奪う手数とスピードでリングを支配。6回2分33秒でタイトルを奪取した。
ジャクソンは過去に3敗しており、いずれも世界タイトルマッチにおけるKO負けだった。ボクシング界では、「パンチのある選手ほど思いのほか打たれ脆い」なる声が囁かれるが、ジャクソンはそれに当て嵌まりそうだった。
テーラーはキャリア最高のパフォーマンスを演じて王座に就いたものの、初防衛に失敗。両選手にとって、最後の大舞台となった。
時折、ボクシング興行ではメインイベントの後に熱いファイトが見られる。